受け継がれる指輪
【ブラッドレイブン拠点】
「失礼ですがIDは?」
ブラッドレイブンメンバー用の入り口に向かうと屈強な男たちがIDチェックを求めてくる。
正式なメンバーではないため当然ないのでミヤコさんに取り次ぐ様にお願いするとどこかと連絡をして入れてもらえる。
地下へと向かうエレベーターに乗りどこまでも下っていく。
ミヤコさんは現在療養中のため迎えこれないことを謝罪していたが無事に帰れたことを安堵した。
チーン、と到着したことを知らせるブザーがなり扉を潜ると突然何者かが飛びついてくる。
「マナト様!大丈夫でしたか!」
受け止めると泣き顔のリリーだった、頭を数度撫でる。
「ごめん、リリーの故郷守れなかった…」
人間と吸血鬼は数人救えたが故郷は決して守れなかった。人員が不足している、気付くのが遅かったなどの要因はあり俺が防げた訳ではないが守ると言ってしまったのだ。約束もしていた。
「良いんです…!今となってはもうここが私の故郷ですし…マナト様には無理なお願いしてしまったとあの後ずっと……ずっと後悔してました…」
「でも…」
「あら、お熱いですね。リリー、前にも言いましたがそういうのは部屋でおやりなさい」
ソフィーさんだ。言われてみると確かに周りの目が集まっているし何より入り口を塞いでいる。
「ソフィー!怪我は大丈夫だった!?」
「マナト様、その説はお世話になりました。私は血力さえあれば能力で直せるのですがミヤコ様は少々時間がかかってしまいます。僭越ながら私が以後の話を担当しますのでどうぞよろしくお願いします」
とりあえずは身を清めてこいと言われ自分の服を見ると血や埃だらけになっていた。リリーは上司が来て落ち着いたのか部屋へ案内してくれた。
「マナト様、後ほど服をお預かりします。後ほど上がられた際に食事をご用意いたします」
リリーは先程取り乱したのが恥ずかしかったのか赤面をしつつ気にしてない様に装って退出した。
風呂を上がると服は回収され代わりに部屋着がおいてあったため着替え部屋に戻るとリリーとソフィーが食事を用意してくれていた。
「マナト様、お食事の準備ができました。」
ソフィーさんがトゥド・センザに近づいていく。
「武器のメンテナンスもこちらでいたしますが」
いつもの流れて説明をすると驚いた顔をしながらそういった事もあるのですね…と呟いていた。
席につくと予想通り二人が立って見守られている形になったため気まずくなり更に二人分の食事を持ってきてもらいともに食事をする。
「……ていうかさ、ソフィーさんは一緒に任務行ったんだからもうちょっと打ち解けても良くない?」
「割と心を許しているつもりではありますが、もしかして口説かれてらっしゃいますか?リリーとの熱愛を見せられたあとに本人の前で口説く方はちょっと…」
ソフィーは髪を抱き寄せ照れるような顔でこちらを見ている。
リリーは懲りずにワタワタとソフィーに訳を話しているがからかっているだけだ、もう分かる。
「確かに打ち解けたようだ……敬語は使わなくていいって言っても難しいんだよね?」
ソフィーはリリーの方を見るとリリーは、ね?言ったでしょ?と言わんばかりの顔をしている。
俺には分からない女性同士のなにか通ずるものがあるのだろうと気にしないでおく。
「マナト様。今後なのですがご都合の時間に報酬の話をさせていただければと思います」
ソフィーはナプキンで口を拭い優雅な動作で問いかけてくる。
「ん、分かった。ちょっと重ための話になるんだけど今後神聖騎士団を襲撃するときに救援したいとかでもいいかな?」
もちろん無理なタイミングだったら断ってもいいって条件だよ、と付け加える。
「かしこまりました。そちらは私の一存で決めかねますので少々お時間頂いてもよろしいでしょうか?ご滞在はいつまでなさいますか?」
まだ俺がこのあと出て行くことは伝えてないはずだか…雰囲気で分かってしまったのか察してくれたことに感謝する。
「流石メイド長ってところかな、明日の昼頃を目安にしてるよ」
「かしこまりました。それではまた後日。」
食事は終わった様で丁寧な動作で片付けていく。それを見てリリーも慌てて食事を終えようとするが
「リリー、貴方はここでマナト様をもてなすように。客人に暇をさせないのも立派なメイドとしての勤めですよ
……明日は確か休暇でしたね。ゆっくりと疲れを取り万全の状態で職務に励むように」
ソフィーはウインクをして退出していく。またここで飲んでストレス発散してくれといったことだろうか。気の利くできる上司だ。
「……そういえばリリー。指輪ありがとうね。確かにお守りだったよ」
指輪を外しリリーに渡す。
「……マナト様。もしよろしければこちらはマナト様がお持ちになっててもらえませんか?」
「大事なものなんでしょ…?悪いよ」
リリーはギュッと指輪を持った俺の手を両手で握りこむ。
「マナト様はこれからたくさん戦闘をされてピンチになると思います。
それに、ただの女の勘なんですがマナト様はきっとこの世界を変える、そんな気がするんです」
真っ直ぐな目でこちらを見ている。そんな大それた事はしないと言いかけたがそんな事を言える雰囲気ではない。
「もし、私のこの指輪が役に立てるならそれがこの指輪にとって1番いいと思うんです」
「もし役に立ったら私の事を思い出してくださいね?」
ふふっと笑いながらそっと手を離す。
「分かった。リリーだと思って大切に使うよ」
再び指にハメると赤い宝石がキラッと光ったような気がした。
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