次の目的




【ヴィラジョから離れた森の中】




「マナト様、ありがとうございました。ここまでで大丈夫です」




 何もない開けた場所でミヤコさんは何かしらの機械を取り出した。ビーコンと呼ばれる位置を知らせる道具のようだ。






「迎えが来るまで私もここにいましょうか?」




 二人とも血力はある程度回復したようだがまだ不安が残る。というより俺と違い吸血してから回復までに割と時間がかかるようだった。森から人間の足にあわせてだが1時間ほど歩いた。それでも傷がようやく治り始める程度だ。




「いえ、旧友との約束があるのでしょう?私はある程度まて戦えるくらいには回復しましたので…」




 ちらりと俺とミヤコさんはソフィーを見る。ソフィーはまだ歩ける程度にしか回復してないようだがどうやら近くに敵は無いようだし大丈夫か……




「…わかりました。それでは終わり次第基地に戻ります。ではまた!」






 みんなの見送りを背に飛び立つ。








──────────────










 村に戻ると散々なことになっていた。至るところに火がつけられ薬にやられた村人は狂乱している、まさに地獄絵図だ。






 サイトを探していると道中騎士団員に襲われる。増援があったのだろう明らかに人数が増えている。






 ダンッ!と銃声がそこかしらで聞こえる。今更銃弾程度はたやすく避けられる。自らの成長を感じながら敵を切り伏せていく。




-ストレス発散ですか?目的を見失ってないだけ大人になりましたね-




「…………慣れちまったんだよ、なんていうか、人間の闇みたいなところをさ…」






 能力である境界を使うまでもなく簡単に倒せるようになった。司祭と呼ばれる特殊な力を得た人間でないと戦いにすらならないだろう。






「お!兄貴!戻ってたんですね!」






 遠くからサイトが手を降ってこちらに駆け寄ってくる。感動の再開パート2………っておい!




 「お前!後ろ後ろ!」




 やたら賑やかだと思ったら多数の敵を連れてきている。サイトは忘れてたといった顔をし能力を発動する。




「数ばっかり多いんスよねコイツら!」


  "存在証明"「「宇宙の絆」」






 サイトが上空に指を指すと敵が、いや。周辺の物体ごと全て指を指したところに向かって集まっていく。






「兄貴ー!あと頼んでいいッスか!」






「はぁ…分かった!防御しとけよ!」




 いい機会だ、能力と組み合わせて何かできないかと思ってたところだ!せっかくだし試させてもらおう。




 ベースは 血波煌けっぱこう 


 凝縮した血液玉を2つ作りぶつける事によって生まれる開放力を全方位に放つ技だ。


 技の特性上自らの手を犠牲にするがこれを境界によってより凝縮し、指向性をもたせる。


 




「"血波煌・転生閃"(けっぱこう・てんせいせん)!」




 圧縮限界の血液をさらに境界で圧縮し一部だけ開放した瞬間暴力的な爆発が生じる。


 サイトの力によって球状になっていた数名の騎士団員と建物の破片は全て消滅しチリすら残らない威力が前方20mほどを蹂躙していく。






「うっわ…兄貴エグい強くなりましたね…流石にあれじゃ誰も生き残れないっしょ」




 まるで俺が全部殺したみたいに言ってくれるがそもそも上空にあげた時に瓦礫に体を打ち付けられほぼ全滅してた気もする。




「まぁ何はともあれ久しぶりだな、サイト!」




「兄貴こそ!久しぶりッスね!」




 お互いに近況を話し合う。途中で敵が襲い掛かってきたがなんてことはない。サイトも強くなったな、あの頃にこの力があったら俺は気づく間もなく死んでいただろう。




 サイトはどうやらブレンシュが落としたブレスレットの回収に来たようだがすでに回収が終わったようだ。








「エアクラの姉さんが……俺にも何か手伝えることがあったら協力させてほしいッス!兄貴の力になれることがあれば何でも言ってください!」




「ありがとう!今はとりあえず襲撃の仲間を探しているんだけど結構な人手が必要になりそうでさ…ブレンシュさんが運良く支部襲撃するとかあったら俺も同行したいんだけどなんか話聞いてたりする?」




「前回の襲撃で戦力も使ったみたいっすからね、しばらくはないと思いますけど…エアクラさんの件はブレンシュ様にも伝えておくッスけど兄貴も来ます?」








 行く!と言いかけたが自分の手を見て思い出す。リリーから指輪を預かりっぱなしなのだ。






「あー…悪いけどいったん戻らなきゃ行けないんだよね。借りてるものがあって返さなきゃいけないんだ」




「ブラッドレイブンッスか…俺が言うことじゃないッスけどあんまりいい噂聞かないんで気をつけてくださいね?」




 詳しく聞くと理念として吸血鬼の弾圧を辞めさせたい、開放したいといった大義名分はあるものの過激派すぎてついていけない人も多いようだ。確かに積極的に戦闘は行っているような節はあるが今の俺には心強い。






「じゃ、来るときはまた連絡くださいッス!暴虐の血族の場所はここに書いてあるんで!無くさないでくださいッスよー?」




「ありがとう!またな!」






 飛び立ちブラッドレイブンの拠点に戻る時に地図を見るがどうやら日本に今は拠点があるらしい。








 日本。吸血鬼になりエアクラさんと出会った場所、故郷でもある。


 




「日本かぁ…」

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