ミヤコの視点2




 建物から出ると外がだいぶ騒がしくなっていた。ソフィーは大丈夫でしょうか?


 一旦拠点に背負っているこの子をおいてから私もソフィーの手伝いに向かっていると明らかに様子のおかしい町人が襲い掛かってきます!






「……っ!浄化薬を投げても受け取らない…?」




 私のスキルを使っても心が読めない?心があれば何かしら反応はあるはずなのに……




「がぁぁぁぁ!!!」




「…恨みはありませんが…申し訳ありません!」






 短剣を投げつけて足の腱を断つ。心が読めないのではないようです。心がもう壊れて…






 ダン!




「クッ!……戦闘は向いていないので出来れば避けたいんですけどね!」




 建物の影から銃を構えた騎士団員と思われる方々が数名姿を現す。投げナイフを生成して投げつける事で応戦するが銃




 ダン!ダダダ!!




 籠手を生成して防ぐが急いで作った急増品のため数発で砕け防ぎ切れず被弾する。








「……!!………これは出し惜しみしてる暇ないですね」






 "存在証明"「「サイコ・ディストーション」」




 ドサドサと周囲にいた騎士団員達が白目をむき倒れていく。




 相手の心に干渉して倒す。私の使える唯一の戦闘用の技だ。


 だが戦闘向きではないスキルを戦闘で使えるまでの出力にするためには多大な力を要する




「はぁ………はぁ………もう、いない……ですよね……?」






 心を読むスキル、テレパシック・インサイトを常時警戒に使えるほど血力は余っていない。




「余所見したな!」




 後ろで倒れていたはずの騎士団員が立ち上がりヒートソードで背中を斬りつけられる!




「っああ!」




 ジュ、と肉が焼ける音と共に背中を袈裟斬りにされる。反撃しようにも痛みのせいで物質創造が上手くできず霧散する。






 万事休すかと覚悟を決め始めた時。ゴン!と鈍器のような音がし突然敵が吹き飛んでいく。




「ソフィー!」




「ミヤコ様!遅れて申し訳ありませんでした!無事な吸血鬼達は隠れており見つけるまでに時間がかかってしまい…」




 長い金髪は戦闘に邪魔なのか一つに結ばれている。メイド服もボロボロになり戦闘を経たのだと見て取れる。






「でもご安心ください!全て拠点に集まりました!ミヤコ様は撤退の準備をお願いします!」




 拠点に向かい走り始めるがソフィーはついてこない。


 グッ、と腰を落とし拳を当てているソフィー。




「あなたはどうされるのですか!」




「少しだけお掃除してから向かいます。大丈夫ですよ、すぐに済ませます」






 私と違い戦闘に向いている能力をもっているため大丈夫だろうが殺生を好まない為不安が残るが…




 頷き拠点に戻ると吸血鬼が3人、人間が2人と後は私の回収した眠っている子だけだ。……まだ寝ている為吸血鬼が背負っていた。


 吸血鬼達も命からがらと行った様子で傷が再生してない人が多い。






「おまたせしました!これより離脱します!目立たないようにある程度の距離は歩いてになりますが後ほど回収に他の吸血鬼が来ますのでご安心ください!」




 さ!行きますよ!と音頭を取り道に出るとソフィーの背が見えた。






「ソフィー!早かったですね!……ソフィー…?」






 駆け寄るがよく見ると肩で息をしている。足元には…小さな少年が1人……泣いていた。




 ソフィーの足元は血だまりが出来ているが少年には傷一つない。守っていたのだろう






「ソフィー!!!いやぁぁ!!!!」




  "存在証明"「「サイコ・ディストーション!!」」




 数人倒れたが大多数がよろめく程度のダメージだった。血力がもう枯渇しているのだ。


 集まっている他の吸血鬼もボロボロだ。マナト様も神聖騎士団の本体と戦闘を始めているだろう。






「あはは!ここまでのようだねぇ!」




 女性の団員が前に出てくる。服装的に司祭以上の為通常の人間より強化されているだろう。手に持っている鞭もよく見れば神聖礼装のように見える。




 人間だけならば体術だけで何とかなるかと思ったが、司祭クラスがいるのであれば万全の状態じゃないと勝ち目はない。




「……見逃しては貰えないですか?」




「はっ!私達神聖騎士団が見逃すと思ったのかい!」




「私は投降しますので他の方は…」




「私も心は痛むけどねぇ、残念ながら殲滅命令なんだ、諦めて死んでくれ!」




 嘘だ。ニヤけながら心が痛むなどと言うものじゃない。






 あぁ、終わってしまう。神聖騎士団に連れ去られたあとは鎖に繋がれて血液だけをひたすら抜かれていくだけの人生を送ると聞いた。




 ならば自決したほうがまだマシなのかもしれません。




 最後の瞬間を待つしかありません。もう血力で傷を治すことすらできないのです。諦めて瞳を閉じる。






「あの〜、お取り込み中申し訳ないんスけど…ココらへんにブレスレット落っこちてなかったっすか?」






「誰だ!」




 司祭クラスの団員の後ろにスーツのチャラチャラした男が立っている。誰も気づかなかったのか司祭すら驚いている。




 それはそうだろう。司祭を注視していた私ですら気づかなかった。瞼を閉じている間の一瞬しかなかったはずだ。






「あ、いや。大した者じゃないんですけど…なんか真っ赤な金属のブレスレット探してるんスよね。見なかったっすか?」






 バシッ。と鞭の先端がチャラ男の手に収まっている。


司祭が振る瞬間も見えなかったしチャラ男がそれをことなげに掴んでいるのも驚きだった。






「ちょ!勘弁してくださいって!戦う気ないんですから俺!」






 本当にただ落とし物を探しに来た人のような。攻撃されたのを気に求めてないような態度が気に触ったのだろう。みるみる内に司祭の額に青筋が浮き上がる。




「あんたねぇ……名乗りもせずに舐めんじゃないよ!」




「あ、忘れてたッス。俺はサイトって言うんでよろしくね!お姉さん」






 パチンとウインクまで決めているのだった。

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