ミヤコの視点




【少し前、ヴィラジョ】




「マナト様、結構怒ってらっしゃいましたね」




「ミヤコ様、彼は思い出の場所を怪我されたくないと言われ今回の任務に参加されました。まさか既に薬物汚染されているとは……心中察します」




 今後の動きなどは私のスキルでマナト様に共有するとしてとりあえず救える人を集めましょうか。




「ソフィー。とりあえずはここを拠点として救える人を集めましょう」




「かしこまりました。私は周囲を探査しようかと思います。何かあればご連絡お願いします」




 ソフィーはメイド服から数本のナイフを取り出し外へ駆け出して行く。




「申し訳ありません。ここを無断で拠点にしてしまうような事になって…」




 ここの店主であろう男性は少し困り顔をしていた。それは当然だろう、自らの店を唐突に選挙されたも同然なのだから。




「あぁ、いや、結構ですよ。ここから逃げるような感じで良いんだよな…?俺も連れて行ってくれんのか?」






「当然です。吸血鬼の存在を秘密にすると守ってくれればですが」




 外が段々騒がしくなってきた。ソフィーが戦闘しているのでしょうか。




「それでは私も行ってきます。そのままこちらでお待ちください。……あぁ。知らない人や煽動者が来ても決して答えないように、このあと皆殺しにするにあたって邪魔な従わない人間から殺していくのがアイツラの常套手段ですから」




 店主は呆然としていた。説明してあげたいが時間がないため外へ出る。とりあえずは隣に住んでいるという女性から救出するべきだろう。




 隣は空き家と記載があったためどちらかはすぐにわかった。ドアノックを数度したが返答はない。




「しょうがないですね…」




 "存在証明"「「テレパシック・インサイト」」




マナト様には黙っていましたが全力を出せば心の声も聞こえるようになります。






「中に一人いますね…反応が小さいので詳細まではわかりませんが…」




 こうなれば仕方ありませんね。強行突破するしかありません






「お邪魔します!」




 ドアを蹴破ると想像より大きな音がなってしまった為周囲を見渡すが特に問題はなさそうだ。




 室内は灯りもなくそこらじゅうホコリが溜まっている。生活感がまったくない、まるで空き家のようである。




「けほっ……どんな生活をしていればここまで酷いことに…」




 歩くたびに埃が舞い上がるので袖を口に当て階段を登る。




「すみません!どなたかいらっしゃしますかー!」




 私の能力だと大体の方角や距離は分かりますが詳細な位置までは分かりません。居場所を探す能力ではなくあくまで連絡能力ですからね。




 いくつかの部屋を蹴破りようやくお目当ての部屋に当たる。寝ているのか毛布が上下している。




 頭から毛布を被っているため少し警戒をし袖から短剣を取り出しながら近づく。心の声が聞こえないため恐らく大丈夫でしょうけど万が一もありえますから……




「非常時ですので……すいません!失礼します!」




 目の前まで近付いても起きないため毛布を剥がすと布団の中に丸まった少女を見つける。ボサボサになった青色の髪の毛が顔にかかっている為よく見えないが不満げにしている。




「……んん〜?……どちらさまですか〜?」




 眠いのだろうか目を擦りながら間延びした口調で喋り始める。




「まだ〜あさじゃないですか〜?……おやすみなさい〜」




「ちょっと!寝ないでくださいよ!…現在周囲が危険な状態な為保護を……ちょっと!聞いてください!」




 座りながらまた寝始めたのだ。自己責任だと放っておいても良いんですが…。






「寝覚めが悪くなりそうですね……仕様がありません。文句なら後ほどお聞きしますよ!」




 血族の力を使い帯を生成。おぶる形で固定する。




「これでも起きませんか……まぁ暴れられるよりは好都合ですか……ッ!」






「さっきここからも音がしたぞ!探せ!」




 警戒を解いてしまっていたせいで気付なかったのですが入り口に5人程度集まっていました。心を読む限り一人は神聖騎士団から派遣されてきた人間。ほかは村人のようですけど……






 ドタドタドタと不躾にも駆けのぼってくる音が聞こえます。神聖騎士団の人と町人1人ですか…






「宣教師様!こちらです!こちらに吸血鬼がいます!!」




「おお!よくぞやったな!…次からワシに報告するのは捕まえてからでよいぞ!」




 想像よりも早かった。宣教師と呼ばれた少し禿げたふくよかな男性は汗を拭っている。




"やった!吸血鬼だ!これでまた宣教師様から浄化の薬が!!"




"なぜワシがこんな所まで走らされ……ん?この吸血鬼なかなか綺麗な容姿をしておるな…"




 ゲス共の思考がこちらに流れてくる。欲望の視線を向けられていることに吐き気を覚えるがぐっと堪える。




「こんにちは。少しばかりお話しませんか?」




「吸血鬼と話す事など何もない


「浄化薬。主成分はなんですか?」




 割り込む。問い掛ければ人は一瞬頭に正解を思い浮かべる。私の能力はその一瞬を逃さない。先程預かったときにあらかた組成は把握していたがこれでわかった。










「村人よ!すぐに捕らえろ!すぐに回復するからな、傷を付けても構わん!!」






 袖から"浄化薬"と呼ばれる薬を2錠生成して襲い掛かろうとしている村人に投げて渡す。




「お近付きの印です。よろしければ……って聞こえていませんね…」




 中毒者特有の嗅覚で本物だと気づいたのだろう。小瓶から取り出しすぐに飲み込みトリップしている。これだけ中毒が進んでいるのか…




 後ろから村人が3人駆け寄ってくるが同じく浄化薬を投げ込み無力化する。






「なぜお前がそれを持っているのだ!」




 頭の中は疑念で一杯だろう。だが欲望に忠実な男を御するのは簡単だ。




「私も浄化薬の魅力にヤラれてしまいまして……ねぇ…おじさまなら持ってるんでしょ…?」




 シナを作り少しだけ前をはだけさせる。




 近づくと少しだけ警戒の色が強くなったが心を読むまでもない。視線が胸元に釘付けだ。




「あ、あぁ。当然だ。そうかそうか。いくらでも グッ!




 首に手を回すと同時に注射器を刺す。中身は"浄化薬"を濃縮したものだ。

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