異変




【ブラッドレイブンからヴィラジョへ、道中】








「そういえばミヤコさんとソフィーさんはどれくらい戦えるんですか?」




ただでさえ少ない戦力だ。把握しておく必要がある。






「私のスキルはあまり戦闘には向きませんが…せっかくですしお見せしましょう」




 ミヤコさんは飛行中にも関わらず両手を合わせ目を瞑るが安定しまっすぐ飛んでいる。器用なものだ。






  "存在証明"「「テレパシック・インサイト」」






 "どうです?聞こえますでしょうか?"




 頭に直接ミヤコさんの声が響く。




「おお!!聞こえますよ!声が!なんか不思議な感覚ですね!」




"でしょう?慣れればマナト様もできますよ?


複数人繋げますし力もあまり使わない為、指揮官向きの能力なんですが【叡智】の血族の力で普通に戦えますよ"




頭の中で、ミヤコさんに…伝える




"あー。あー。こんな感じですかね?聞こえますか?"




 ミヤコさんは驚いた顔をしている。




"一発ですか。なかなか見どころがありますね。大体2日くらい練習してようやくコツがつかめるレベルです"






"これってソフィーさんとも繋げたりできるんですか?"




"残念ながらできませんね。私との間だけですので。ただ伝言を………ソフィーからです。女性の顔をそうまじまじと見つめるのは如何かと思いますよ?との事です"




 なるほど。伝言なら伝えられるって事か。にしても喋るのと同じ感覚だったが周りから見ると無言で見つめ合ってように見えるのか




「いやソフィーさんわかってますよね!?別にそんなんじゃ無いですって!」








「マナト様がリリーだけではなくミヤコ様も狙われているのかと思ってしまいました」


ソフィーはキリッとした顔でからかってくる。






 ミヤコさんはミヤコさんで袖で口を隠しながら「もう…まだお昼ですよ…?」等と名演技をしている。












 しばらくしヴィラジョが視認できる距離まで近づいたがまだ戦闘の音は聞こえない。太陽は沈みかけ山の影が村に落ちている。






「まだ大丈夫ですね。トゥド・センザ、周囲にいるか?」




-どうやらまだ到着してないようですね-






「敵の位置が分かるのですか?」




「近距離だけですけどね。それ以上はバレてしまうので」




「だとしても有用ですね」




「ミヤコ様マナト様。とりあえず住民には説明をし1か所に集まってもらうようにしましょう。守るにしても分散されていると守りきれません」




 自分が直近まで居たので自分が行くことになった。せっかく出し果物屋のおっちゃんにも会いに行こう。ちゃんと別れを告げられてなかった気がするし。






 懐かしい道を歩いていると果物屋の店主がちょうど店を畳んでいた。こちらを見ると驚いた顔をして駆け寄ってきた。




「お、おい!そんな道の真ん中歩くんじゃねぇよ!ちょっとこっち来い!」






 何がなんだかわからないがおっちゃんはひどく慌てている。


 腕を捕まれ果物屋の奥に引っ張られるので大人しくついていく。ソフィーとミヤコさんも何も言わずに後をついてきてくれる。






「はぁ……兄ちゃん久しぶりだなぁ。元気だったか?




おいおい、また別のべっぴんさん連れてんじゃねぇか!やるなぁこのこの!」






 肘で突っついてくるが的確に脇腹に入ってくるので痛い。




「ちょい!おっちゃんやめろって!………んで、なんかあったの?」






「やっぱ知らなかったんだな。最近の吸血鬼狩りをよ」




「兄ちゃんがいなくなったあとの事なんだけどよ、何人か真っ白い服来たやつらが布教とか言って集会始めてよ…


俺は仕入れで忙しくて断ってたんだがあんまりにもしつこくて、一回行ったんだがみんな目の色おかしくなってて…」




 おっちゃんは震えながら続ける




「吸血鬼は不浄な存在だ!悪だ!吸血鬼ってだけで蔑むべきだ!なんて言っててよ…つい最近まで一緒に暮らしてたのによ。おかしいって言ってやったんだよ!狂ってるってな!」




 ポケットから出した瓶に入った白い錠剤を渡される




「吸血鬼に洗脳されているから抗洗脳薬飲めって。まぁ適当に合わせて今はなんとかなってるけどよ………あ、俺は飲んでねぇからな?」




「マナト様、その錠剤一つ貰ってもいいですか?」




 ミヤコさんに渡すとひとくち舐めた。




「兄ちゃん達なんか知ってるか?」




"マナト様、こちらを向かないで聞いてください。これは麻薬です。恐らく麻薬中毒にさせてから欲しければ血晶を持ってくるように言っているのでしょう。奴らの常套手段です"




"………なんの薬か分からないけどそれって治るのかな?"






"申し上げにくいですか……過去に治った例はありませんでした"






「分かった。おっちゃん、まだ正気な人ってどの程度いるの?」




「あー、俺と吸血鬼ぐらいじゃねぇかな。




……あ、そういや隣のねぇちゃんは引きこもりだしおかしくなってねぇじゃないかな」






-敵の反応があります!南に……20人以上です。増えてますね-




 おっちゃんはどこから声がしてんだと驚いていたが無視をしミヤコさんたちになるべくまともな人間と吸血鬼をここに集めて保護してくれと頼み外に出る。唐突に出たのでソフィーさんが慌てて動き始める






「マナト様はどうされるおつもりですか!?」






「どこまで出来るか分からないけど出来るだけ殲滅してくるよ。討ちもらした分はよろしくね」








 返答を待たず仮面を装着し飛び立つ。こう見えて怒りが沸々と沸いて止まらないのだ!




 人間を守るのでなかったのか!?人間すら駒として利用して捨てるなら正義はどこにある!

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