依頼
「マナト様。依頼をしてもよろしいでしょうか?」
思ったよりも早かったが時間が空いたところでやることなんてない。とりあえず詳細を聞くことにした。
「ここからそう遠くない村が神聖騎士団に襲撃されるとの情報です。飛べば3日くらいの距離ですね」
3日…3日が近い距離扱いってことか。普段から全国各地飛び回っていることが伺える。
「共生中の村が見つかってしまい粛清のため神聖騎士団が向かっているようです。動向がなかなかつかめずギリギリになってしまったため間に合うか分かりません。
敵戦力も不明ですが情報ですとそんなに多くないとか。恐らく30名程度とのことです。」
「…こちらの戦力はどの程度ですか?」
ミヤコさんは申し訳なさそうな顔をしてこちらを見つめる。
「……私とソフィー、来ていただけるならマナト様の三人です。現在、出払っていまして、急遽動けるのは我々だけでして……」
戦力差は10倍程度、か。行きたくないな。ないない。パスだわこの案件。
ソフィーさん戦えたんだ?など瞬時に色々考えたが資料をみて気が変わる。
「ヴィラジョ?……………今回の案件はヴィラジョなんですか!?」
「え、えぇ……ご存知でしたか?」
「…………俺が断った場合はまさかとは思いますけど見捨てるんですか?」
「いえ、二人でも行きます。相手のレベル次第ですけど私達こう見えて強いんですよ?」
ソフィーさんは後ろガッツポーズをしている。細身のため全然頼もしくないが吸血鬼は筋力で強さは決まらない。
二人には世話になったしエアクラさんとの思い出の場所を汚されたくない。エアクラさんが復活したらまた一緒に行こうと思っているのだ。
それにヴィラジョが見つかった原因に自分が関わっていてもおかしくないため罪悪感に今後苛まれたくない。
「……同行します。あの村にはお世話になりましたから」
驚いた顔をして二人がこちらを見る。
「…よろしいのですか?我々としては助かりますが…」
多分だけどヴィラジョが襲撃されたと知ったら一人でも行っていた。それに二人がついてくるならまぁお得ってもんだろう。
「…今後のお付き合いの為、先行投資ですよ」
「ふふふ、マナト様はビジネスの才能もお持ちだったのですね
……では早速ですが準備ができ次第出発します。……30分後こちらにまたお越しいただいてもよろしいでしょうか?」
了承し準備のため部屋を出る。とはいえ大してやることはないが
「マナト様!」
ドス、と急に誰かが抱きついてくる。メイド服を身にまとったブロンド髪の女性、リリーだ。
「マナト様!無理は承知です!!お願いします!」
主語は抜けているが予想していた通りだ。昨晩話を聞いたときに思ったのだ。ヴィラジョの特徴に似ている。
特にフルーツの話をしたときには疑っていたがやはり、か。
「リリー。リリー!落ち着いて!」
頭を数度撫でると多少落ち着いたのか埋めていた顔を上げる。
「……すいません。落ち着きました。…………ミヤコ様から話を聞かれましたか?」
「……任務の件かな?詳細を君に話していいか分からないけど、まぁ話は聞いたよ」
さ、いこうと俺の部屋まで歩き出す。ここでの任務の扱いは知らないが廊下で話すことでないだろう。それに抱きつかれている時また周囲の目線が厳しくなった。
リリーは相変わらず鼻をすすって目元を拭っているが部屋までつくと扉を開けてくれたり飲み物を用意してくれた。メイドとしての本能だろうか?
「……本題です。ヴィラジョの件、聞きました…よね?」
「あぁ。聞いたよ。確か30対3だっけ?なかなか鬼畜だよなぁ」
「………分かってます……でも貴方様なら…3人でも……
…………え?3人??」
「そ!ミヤコさんとソフィー。それに俺。ソフィーさんって戦えるんだね、ビックリしたよ」
「……まさか行っていただけるんですか?」
「……俺にとっても思い出の場所だしね。リリーの故郷ならなおさら」
リリーは驚いている。まぁ確信はなかったけどこんな泣きつかれたら確定だろうな
不思議そうな顔をしていたが納得したのか「それなら」と小さな包みを手渡してきた。
開けると小さな赤い宝石がはめられた指輪が入っている。
「お守りです。私のお母さんから貰ったんですけどご利益あるんですよ!」
金のリングには小傷が見受けられる。年季が入っているため形見だろうか。そんな大切な物は預かれないと伝える
「……絶対に返しに来てくださいね、絶対ですよ?」
「分かった。返しに来るよ、だから待ってて」
トゥド・センザと仮面を手に取り出ると扉の前にミヤコさんとソフィーが待っていた。
「…時間はまだありますけどどうします?」
ソフィーはニヤニヤしながらリリーを見ている。リリーは顔を赤くしながら大丈夫です!と叫んだ。
ミヤコさんは微笑みながら
「マナト様がよろしければ向かいましょう」
とフォローしてくれたのでそれに従った。
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