仮面の効果



「はぁ……遺物を鑑定できるヴィクトリアさんに見繕って貰う予定だったんですよ!」




 ミヤコさんはプンプンと擬音が頭の上に見るような動作で怒っている。怖いより可愛いが勝ってしまう以外な一面が見えた。




「マナト殿、一度借りてもいいか?」




 ヴィクトリアさんが手を出してくるので仮面を外し手渡すと片方しかないメガネを取り出し覗き込んでいる。






「…………なるほど。使い道までは分からないが効果は分かった。畏怖、霊視の効果だそうだ。」




 頭を傾げていると説明してくる。




「畏怖は相手に恐怖心を植え付ける効果だな。自由に戦えないと戦闘力は落ちる。有用な効果だろう。もちろん格上には通用しないだろうがな」




 仮面を返してくれた。




「霊視…は分からない。そのまま考えれば霊が見えるのだろうが……こういった場合は見えるがコミュニケーションは取れない場合が多いな。ただ私は過去に霊視を使っている人物を知らない。有用な効果では無いのだろうな」




 もちろん私が知らないだけの可能性もある。気落ちするなとフォローしてくれるが、畏怖だけでも十分……




「というより2つ効果ある事もあるんですね?」




「稀にな、だが今回のように大体は片方は使えない効果だ。もしくはほぼ同じだったり1つめの付随や前提としての効果が多い」






「なるほど…確かに先程装着したときにリリーさんの後ろに見えた人、顔までハッキリと視認できませんでした」




 バッと顔を上げたリリーさんがこちらに詰め寄ってくる!




「私の後ろですか!誰がいたんですか!!」




「はっきり見えたわけじゃないんですけどゴツい人で……あ、リリーさんと同じ髪色でしたよ」




「ぱぱ……」




「…霊視の効果だろうな。さぁ、畏怖の効果を私にも見せてくれ」




 再度仮面を装着し血力を流す。




 リリーさんとミヤコさんはビクッとするがヴィクトリアさんは流石に動じていなかった。




「なかなかの効果だな…私でも初見なら戦闘を避けるだろうな……」


-おいおい、坊主相手に冷や汗かいてんじゃねぇかよ-




「自身で気づいているか分からないがこちらから見ると全身から禍々しい黒いオーラの様な物が見える……いや、視認している訳ではないな。あくまでそう感じるだけだがあまりにも実体感があるためそう見えるだけ…か」




-仮面だけ見たらダセェと思ったがこう見るとなかなか……魔王みてぇだな…-




 スッ……と後ろから白い腕が首に回る。ビックリして後ろを振り向くと……




「………スン………?スン!スンなのか!?」




 顔は見えない。だが分かる。俺の中に溶けたであろう血晶が反応するかのように全身で感じる。


 抱き締めようとするが霧散してしまった。




 仮面が無ければ酷い顔を晒していただろう。…仮面をしていてよかった。






「……さて、マナト殿。体に異変などはないか?血力の使い過ぎでふらつくなどは?」




 気を使ってくれたのか、スンの話題には触れないでくれた。




「……大丈夫です。血力も対して使わないようですし…」








「マナト様、お部屋を用意しましたので今日はそちらをご利用ください。」




「ご案内します」




 リリーさんが案内してくれた。




 部屋に入ると広いわけではないが一人で宿泊するには十分な広さがあった。ビジネスホテルより少し広いくらいだ。




 「後ほど食事をお持ちしますが血以外も召し上がりますか?」






 人間のような食事のことかと聞くと頷くリリーさん。まだ血だけの食事は味気なく感じるのでお願いする。




 各部屋に風呂が備え付けられているようでタオルまで用意がある。まんまホテルだ。




 風呂に入る前にトゥド・センザの手入れをする。錆びたりしないので必要はなさそうだがやらないと煩いし汚れまでは防げない。




-慣れてきましたね。まだまだスンには及ばないですが-




「…………」




-………先程スンに出会えたのですか?-




 頷きながら仮面をかぶる。周囲を見渡すとスンが近くにいる。顔は見えないがきっと微笑んでいるような気がする。




「……ああ、近くに居るよ」




-メイドの父を言い当てたのです。疑いはしませんが本当にそこにいるのですね…-




「恨まれてないかなぁ………近くで見守っててくれる気がするんだけど顔は見えなくって……エゴじゃなきゃいいんだけどさ」




-会話も出来ないのですか?-




「………スン……聞こえる?…………聞こえるなら返事してほしいな……」




 こちらを振り向いた……気がしたが返答はない。




-…………故人の情報を話すのはあまり良くない事ですが……恨んではないと思いますよ-




 無言で刃を磨く。




-彼女は私を磨きながら微笑んでいました。まるで我が子を撫でるように。………私は反応に困りましたがね-




-たまにあなたの事を思い出したのかコロコロと表情を変えていたのが面白くて笑ってしまったこともありました-




「………そっか………」




-概ねキレイになりましたね、私はもういいです。あなたが汚ければ私を磨いても無駄になってしまいます。さっさと身を清めてきなさい-




 ……今日は気を使われてばっかだな…

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