黒い仮面




「こちらです。遺物にお手を触れてしまいますと知らない効果が発現し事故につながる可能性がありますのでご注意くださいませ」






「オーパーツだって言ってましたもんね…これ見渡す限り見ても何も分からないんですがどういう効果があるか教えてもらってもいいですか?」




 メイドさんは少し怯えたような顔をしながら口を開く。






「申し訳ありません。遺物は効果が分からないものも多く……いえ、ここに保管されているものはその殆どが解明されていません。判明したものは紙が括り付けられていますのでそちらが参照していただければ……」




 なんと。分からないんじゃ貰ってから産廃になる可能性もある。というか貰っても何に使う分からないんじゃ…?




「ガチャみたいなもんか…つか倉庫仕舞う前に確認してからしまえば良いんじゃ…?」




 メイドさん見るからに顔が青ざめビクビクしている。






「仰る通りです!申し訳ありません!」




「??ん?いや別に良いですよ、頭上げてください!…………知らないのが恥ずかしいのですがどの様に効果を確かめるんですか?」




 ヴィクトリアさんは遺物らしきものを複数身につけていた。ここあるものも身につけていたように思う。どうやら唯一無二のものばかりではなく量産品のような物もあるのだろう。




 だが量産品だろうと初めてはあるはず。その場合の調べ方は……






「………やはり実際に使ってみるしかなく……」




 ですよねー。だけど必ずしも有益な物とは限らないだろうし使用条件がある物などもあるだろう。






「ですよね。うん。了解しました!ハズレ引かなきゃいいなぁ……」






 使えないものだったとしても最悪アクセサリーとして使えるものにしよっと。と割り切った。


 振り返るとメイドさんが怯えながらそして覚悟決めたような不思議な目でこちらを見つめている。






「………ではお好きなものをお選びください!……」




 何か不穏な空気を感じる。選ぶだけでそんなに気合を入れるものなのか?




 ここには多数あるがそもそもオーパーツなのだ。貴重だからだろうか?


 本当に雑多にある。石、宝石、鎧や刀剣など武器類は理解できるが錆びた鉄球に袋詰めされた砂の様な一見しただけじゃゴミのようなものまである。




 武器はトゥド・センザがいるためいらない。防具は……胸当て程度の物なら欲しいが全身鎧はかえって戦闘の邪魔になる。




 役に立つ効果ならアクセサリー類は欲しいが逆に枷になる効果もあるだろう。例えば奴隷につけるような物など自分では外せないものだ。


 古代文明が遺物を生産できる能力があったのなら解除キーもあるだろうが現代に残っている保証はない。






 ふと上を見ると真っ黒な仮面が視界に入る。笑うかの様に曲線で入ったスリット。悲しむように口元にも曲線のスリットが入っている。よく見ると目元のスリットには涙模様が入ってる。




 おでこだけが出る。本格的に顔を隠す仮面。これから情報収集に当たって顔を隠すのはありだろう。効果がなくてもこれなら有りだ。






「この仮面を貰ってもいいですか?」






「か、かしこまりました……」




 メイドさんは怯えている。まぁ見るからに怪しい仮面だもんな。離れて見るとなんか禍々しいオーラ放ってる気がするし。




 メイドさんは仮面に近づき取ろうとする。……ん?






「まって!待ってください!触れたら危ないんじゃないですか?」




「危ないかは分かりません……なので私で試します……少々お時間頂いてもよろしいでしょうか…?」






 そりゃ怯えるわけだ。要は人体実験に使われると思っていたわけか。………いやそんなふうに見えるかね?俺






「待ってくださいって!そんなつもり無いですよ。やめてくださいって!」




「ですか……」


「いや!いいですって!責任取れないですし!再生力には自信あるんで大丈夫ですよ!」




 まだ仮面の前から動かないメイドさんをどかし仮面を取る。少しビビって逡巡してしまったがバレてない…とおもう。






………………………




「………なんともない……ですよね…?」






「……はい、そのようですね……装備するか血力を流したら発動するタイプみたいですね……よろしければ修練場でお試しください」






 メイドさんは扉を開けて移動するように手招きしてくる。


 修練場に行くと遅くなってきたからか誰もいなかった。






「……っと、これなら気にせず試せるな」




「お気をつけてください、何が起きるか不明です」




「危ないと思ったらすぐ逃げてくださいね?」




 仮面を顔にあてがう。ゴムや留具などは無いがスッと顔に吸い付く感覚がある。焦って外そうとすると簡単に取れる。




「大丈夫ですか!?」




 大丈夫と一言だけ返し再度装着する。スッと吸い付く感覚がしたが今度は慌てない。スリットは細いが視界には影響が一切ない。まるで透明かのように周囲がよく見える。




「………どうですか?そちらから見て何か変化はありますか?」




「いえ、私からは何も……体に異変などはございますか…?」






 メイドさんは遠くから覗き込むように心配してくれている。




「あ、そういえばお名前伺ってませんでしたね」






 あ、しまった。と表情が変わると同時にお辞儀される。




「申し遅れました。私はリリーと申します」




「じゃあリリーさん。出口になるべく近くで、何かあったらすぐ逃げてくださいね」




 異動を見届け血力を流す。






「ッ!!」


 リリーさんから息を呑むような声が聞こえる。自分の手足を見るが何か変化しているようには見えない。




 リリーさんの方を見ると青ざめて目を合わせないように俯いている。……よく見ると後ろにリリーさんと同じブロンド髪の…男性が見える。筋骨隆々の短髪男性だ。血力の供給を止めリリーさんに声をかける。






 「リリーさん!大丈夫で…バタン!




 扉が開く音がする


「マナト様!待っててくださいって言ったじゃないですか!」




「マナト殿はこう見えて結構向こう見ずなのだな」


-坊主!仮面とかまだ格好いいと思ってる程子供だったかぁ!?-






ミヤコさん、ヴィクトリアさんの順入ってくる。

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