ブラッドレイブン




「よく来たな、流浪の民よ。これが我らが闇の一党の塒である!」


「ここがブラッドレイブンの拠点です。本日は本当にありがとうございました。歓迎いたします。」




 森の中にあるのかと想像していたが都会にあった。表向きは映画館として運営されている建物の地下に拠点はあったのだ。




 吸血鬼は長生きな為、大金持ちや権力者などもある一定数居るようで、賛同者がお金を出し合って建てられた建物らしく地下であるが内部は1流ホテルかと見まごう作りになっている。






「では談話室までこの子がご案内しますのでそちらでお待ちください」




 メイドさんがお辞儀をした後先導してくれるので着いていく。




 奥の部屋に案内され中に入ると内装に違わない豪華な作りになっていた。




 革張りの高そうなソファに大理石のテーブル、床はふかふかの絨毯。天井にはシャンデリアが光り輝き、壁には絵画が飾ってある。




 汚れた衣服で座っても良いものかと逡巡していると座るように勧められ気にせず座っても良いと伝えてくれたのだと察する。




「あー、その、気を使ってもらってすいませんね。」




 メイドさんは少し驚いた顔をしながら深くお辞儀をし、扉を出ていく。




-分かりにくくしているとはいえ厳重な警備ですね。私も取り上げられるかとヒヤヒヤしていました-




 厳重な警備…だったのか…気付かなかった。だが思い返せば確かに何をしてるのか分からない人達が多かった。雑談を装っているのだろう。視線を多数感じたのは物珍しさではなく警戒心からだったのだろう。




 吸血鬼の警備には銃などの物々しい装備は必要ない為偽装も楽だろう。




 武装解除を求められなかったのは信頼の証と考えていいのだろうか。しばらく待っていると紅茶と焼き菓子が運ばれてくると共にボスと共にいた着物の女性が入室してきた。




「ブラッドレイブン様は現在忙しく私が対応させていただければと思います。申し訳ありません。」




「いえ、戦いの後です。忙しいでしょうに煩わせてもうしわけない」




「報酬の件ですが…確か情報でしたか」




「ええ、神聖騎士団について、ある男についての情報が欲しいのです」




 彼女は手を上げるとメイドに資料を持って来させるように支持している。




「申し遅れました、私ミヤコと申します」




「これはご丁寧にありがとうございます。マナトと申します。見たところ同郷ですかね?」




 しばらく資料が来るまで紅茶や焼き菓子を頂きながら歓談を楽しむ。




「さて、もう資料も来るでしょうし神聖騎士団についてどのような事が知りたいのですか?」




「まずどういった組織なのか。目的は?支部の大体の数と配置もそうですし…」




「なるほど…それでは長くなりますが」






 神聖教が母体組織で神聖騎士団は神聖教の実戦部隊。




 目的は人間の安寧。人間から搾取することでしか生きられない吸血鬼の殲滅を実行する部隊。


 遥か昔、吸血鬼が人間を家畜化し搾取をしていた村から生まれた宗教で今後このような事が起きないようにと啓発活動をしている。






「家畜化……まぁ長い歴史のなかだ。あるよなぁ…」




「いえ、実際どうかは分かりません。というのもご存知でしょうが健康状態等も味に変化をもたらす要因ですし、実際自由がなくストレスが高いと飲めたものじゃないです」




「あー…そういやエアクラさんが言ってたな。社畜の血はマズイって…」




 ミヤコさんはクスクスと笑いながら頷いている。


「ですね。まぁ小規模でしたらあるでしょうが…大規模となるとそういった理由からあまり考えにくいんです。




それに極力捕縛しているようですし。実際は労働力が欲しいのかも知れません。死んでも血晶は宝石として高く売れるみたいなので資金源にもなっているかも知れませんね」




「人権がないから奴隷にしやすく実験体にもできる、さらに死んでも金になる、か。狙われる訳だな」




「現在は血晶が宝飾として価値を持ったのであまり使われませんが上位血族の血晶となると強度も地球最高級で工業的価値もあったようです




……カエロサング一族についてはご存知でしょうか?」






 首を振るとミヤコさんはメイド達を部屋から出るよう指示をした。




「…なにか重要な話でしょうか?」




「重要…そうですね。危険な話です。知識を持っていると知られるだけで今後一生、騎士団に追われ続けます」

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