【余談】ヴィクトリア2
「なるほど…剣が刺さっていたのは岩では無く鱗だったわけだ」
-吸血鬼の末路か…本当になんでもありじゃねぇかよ-
顔だけでヴィクトリアと同じ身長がある。全身となれば計り知れないだろう。
「恐らくだがこの剣の所有者だった者だろう…おっと!」
こちらに向かい溶岩弾を吐き捨ててくる。
「陸地は幸いな事に割とある…だが溶岩を撒き散らされるといずれは立つ場所もなくなるだろうな…」
-逃げちまえよ、遺物は回収できたんだろ?-
「それは彼?が許してくれたらな。背を向けて先程の溶岩を撃って来ない保証がない。流石に溶岩を浴びるのは避けたい所だ」
再度、溶岩弾を射出してくる。
「とりあえずは陸地を守ることが先決だな、避けれなくなればコンガリと焼かれてしまう、創造!石壁!」
両手を付き地面から石壁を出す。単純なものは血力消費が少ないとはいえコレだけの質量を何度も出すのは骨が折れる。
ベチャ!ベチャ!と何度か放たれるが耐えている。音が止む。
「諦めてくれた…訳がないか」
ズン…ズン…と音がするので覗き込むとこちらに向かい歩いてくる。魚の体から2本の足が生えている。鱗の代わりに赤熱した鉄のような美しい鱗が並び所々岩が付いている。
「はっ!でかいな!どうやらなかなかの大物を釣り上げてしまったようだな!」
-陸地なら俺で切れるぜ、腕がなるなぁ!-
剣を構えるとこちらに向かい突進してくる。ご丁寧に頭を横に曲げながらタックルを仕掛けてくる!
横に飛び退き様に一太刀浴びせるが傷はつかない。
「切れるんじゃなかったのか?」
-なんだ?なんかよぉ、刃が当たってないかのような…表面を滑るような……-
温度差が大きいと気化する力が強くぶつからないライデンフロスト現象もあるが…かなり強い力を込めている。それに接地面も少ないのでありえない…
「なにかしら特殊な力を備えていると考えたほうが妥当だな」
何度もタックルを仕掛けてくる。洞窟内はこいつが動くには狭く助走で終わるため幸い避けることは難しくない。
だが、気温が高く少し動くだけで汗が吹き出る。
「攻撃手段も限られる…長期戦だと負けるな」
水筒から水分を補給しようとして開けたタイミングを隙と見たのか再び突進を仕掛けてくる。
「コイツ!知性があるのか!?」
場所が悪かった。何度も避けている間に避けれない場所まで追い込まれてしまった。右にはマグマ溜まり。左には壁がある。
力を使いワイヤーガンを創造、天井に打ち込み巻き取ることによって緊急回避をする、!
「……複雑なものを急いで作ると……疲れるな…はぁ…」
観察のため今度はこちらから切りかかる。跳躍し剣を突き立てようと背を見る。
「……一部錆びている??」
打開策はないためとりあえず剣を突き立てるとパリン!とガラスを割ったかのような音と共に突き刺さる
グォォォォォ!
化物が低い重低音で叫ぶ!
「弱点か!」
溶岩魚は暴れ狂い溶岩溜まりに向かって走る。止めようにも止めることが出来ずに静観する。
「…………溶岩から出てこない?逃げた…か…?」
-いいじゃねぇか、こっちも今のうちに逃げちまえよ!-
「あ、あぁ…反応が無くなったな…行くか…」
剣を拾い上げ出口に向かって引き返す。何度か振り返るが出てくる気配はない。
-あの魚野郎ビビって帰っちまったな!まったく焦らせやがってよぉ!-
「剣のあった部屋から出ても反応はなかった。思ったよりも簡単に済んで助かったよ」
歩きながら剣についてスペクトラル・レンズで解析をする。
「ふむふむ…強制溶解。周囲の物質を溶けていて自然な状態にする、か」
-何でも溶かせるってことか?最強じゃねぇか!-
「どうやら溶けるといった概念がないものは出来ないようだ。既に液体のものや液体を飛ばして気体になる昇華する物質などは効果をなさない」
-よくわかんねぇがいいもんじゃねぇのか?-
「溶けていて自然な状態……なるほど、岩や土は常温で溶けているのはおかしい。だから溶岩になると……なるほど、確かに良いものだな」
歩きながら解析を進めていくと左頬が熱を感じる。
振り向くと洞窟の壁が赤熱化している!!
「…まさか!」
ドパァ!!
気付くと同時に壁が溶岩になり先程の化物が飛び出してくる!
「まさか!遺物の能力を取り込んだのか!?」
化物は反対の壁に激突する!徐々に壁か溶けていき溶岩となる。
なるほど、溶かす速度はそこまでじゃない。それに弱点は分かっている。
「行くぞ、サーペンタイン」
-あいよ!弱点は分かってんだ!-
跳躍し化物の背中を狙う。
「なっ!」
-弱点がねぇ!?-
錆びた様な鱗は無くなっている。先程攻撃したところは鱗が剥がれているのでそこに再度突き刺す。
化物は声を上げながらこちらに向き直し溶岩弾を放ってくる。
-おいおい、化物が出口側に立っちまったぜ?-
「倒すしかないというわけだな。単純でいいではないか?」
-弱点も無くなっちまったしどうするよ?-
「いや、もう大丈夫だ。はぁ……勿体無いがそう言ってられないか…」
胸元を開けペンダントを掴み引き千切る。手には透明な氷の花のような形をしている綺麗なペンダントトップが青白く輝いている。
「氷華よ、氷の霊気を解き放て!氷結せし者を凍てつかせよ!」
ヴィクトリアの中心に暴風が吹き荒れる!周囲は一瞬で霜が降り凍りついている。
-ハッハ!こりゃキレイだな!-
パラパラ…とヴィクトリアの手からペンダントトップが砕けて消えていく。
「気に入っていたんだが……おっと、一撃で死んでくれなかったか」
溶岩魚は不利を悟ったのか壁を溶かし逃げようとする。
「ははは!お前の溶かす速度じゃ逃げれんよ!」
溶岩魚の鱗は全て錆びた鉄の色になっていた。
ヴィクトリアは自らの手首をサーペンタインで切り、溢れた血とサーペンタインから出ている紫色の液体が混ざり、枝分かれした茨の形を形成していく。
赤い薔薇と紫の薔薇が周囲に咲き誇る。
カチャ、と音と共に腰を低く落とし構え愛剣に声をかける
「いくぞ?」
-おうよ!-
「-血ブラッドの薔薇ローズの舞ダンス!-」
──────────────
-そういやよぉ、なんで気付いたんだ?-
「ん?あぁ、弱点か。……よく考えれば水筒の水が溢れた部分だったんだよ、背中の弱点」
「つまるところ、能力の発動条件が温度だったんだ」
-まぁ炎属性の弱点は水って相場が決まってるからなぁ!-
「そういうものか?まぁもっと早く気付くべきだったな。最も恐ろしいのは脱水による判断能力低下だということだな」
-つかよ?あんな強力な遺物あんならもっと早く使っとけば良かったじゃねぇか-
「あのマグマ溜まりで急冷をして大丈夫か不安でな。崩落したら目も当てられんだろ?」
-そういうところは頭回んのな…?-
「面目ない…」
-んで、ここの遺物はどうだったんだ?-
「あぁ、どうやら使いみちを選ぶ性能だな。能力は先程言ったが使う血力量が多すぎる。限定的な運用になるだろう」
自然とため息が出る
「正直氷華の方が気に入っていた……デザインも良かったしな…」
-ま、剣は俺が居るしな!-
出口から光が差し込んでいた。
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