レジスタンス




「君、【叡智】の血族だったんだな!まさか同族と会って分からないとは私も未熟だな」






「……?いや、俺は【継戦】です」




 【叡智】の血族?あった事もないがなにか【叡智】の血族要素でもあったのか?




「………いや、今君は血族能力を使っていたじゃないか、何を隠そう私も【叡智】の血族だ。別に隠す必要はないよ。


それに【継戦】の血族なんて若そうなのによく知っているなぁ。君から言われるまで忘れていたよ」




 やはりマイナーなのだろうな…だが【継戦】はエアクラさん以外居ないはずだ。






「エアクラさんを知っているんですか!?」




「やけに食い付くな。まぁ"暴食エアクラ"の事を知らない老吸血鬼はいないだろうな…………おっと、歓談はここまでのようだ!じゃあな!少年!


その吸血鬼達は雇い主に預けてくれたまえ!」






 ヴィクトリアさんが指差す方に1人の吸血鬼がいた。恐らくはボスだろう。






「追いついたぞ!さぁ戦えマナト!………ん?お前はヴィクトリアか?この前の借り返す!」




「はっ!また返り討ちにしてやるよ!」






 ヴィクトリアさんとジェラールには因縁があるようで標的が移ってくれた。とりあえず倒れている吸血鬼達をボスと思わしき人に引き渡すために向かった。






「フッ、我等の同胞よ、世話になったな……」




 長い黒髪と鋭い赤い瞳、ダークな雰囲気を醸し出す。


 服装は洗練された黒いコートと赤い装飾が施された装飾的な衣装に右手の包帯。




 彼の存在感は圧倒的であった……悪い意味で。






 完全に中二病なのだ。見ていると黒歴史がある人はなんかこう、ムズムズするのだ。




「こんばんは、暴れていたので手荒になってしまいましたが時期に復帰するはずです」






「ああ、恩に着る。同胞よ、今宵は何故この闇の舞踏会に参加したのだ?」






 言っている意味があまり分からず悩んでいると後ろから白い着物を着た女性吸血鬼が現れる。




「申し訳ありません。なぜ今回の襲撃に加わったのかと尋ねていらっしゃいます。」




 白い着物に白髪ボブ。切れ長な薄青色の瞳が申し訳なそうに翻訳?してくれる。






「え?あぁ。たまたま寄ってたんですよ。紆余曲折あって潜入していた所襲撃にたまたま参加しちゃっただけです」






「フッ……数奇な運命の巡り合わせか…」


「助かった、感謝していると仰っています」




 え?ほんとに?意訳入ってないか??




「いえ、お力になれたのなら良かったです。」






「我が労働には、虚無の対価を!欲しいものは、宇宙の果て!報酬は、闇の深淵から!」


「本当に助かった、何か俺にできることならお礼をしたい。欲しい物などありますか?…と申しております」






 欲しい物……今一番ほしいものは情報だ、




「情報…などは大丈夫でしょうか?」




 ゆっくりと頷くだけで返答はない。肯定ととってもいいのだろう。




「神聖騎士団について色々と知りたいんです」






 中二病風の男が頷き、下を見ながら息を大きく吸い口を開く。






    "存在証明"「「 漆黒のネクロシス」」






「我が闇の一党よ、今宵は我が指揮のもと、敵に力を示し、勝利を手にした!塒ねぐらへと帰るときだ!」




 単純に大きい声ではない。芯まで響くような力強く何か不思議な力が湧く。




 下を見ると歓声が上がり吸血鬼達が上空へと上がってくる。




 ヴィクトリアさんも戦闘を切り上げ上がってくる。ジェラールとの決着は付いていないようだが戦後処理の為かジェラールは上がってこない。






「我が名はブラッドレイヴン。我が一党まで招こう。」


「ここでは落ち着きませんし一度アジトで話しましょう。もてなしますと仰っています。」






 よろしくお願いしますと返すと後ろからヴィクトリアさんに肩をぽんと叩かれる。






「君もブラッドレイヴンに行くのかい?道中もよろしくたのむよ。先輩吸血鬼に色々聞きたいこともあるだろう?」




 他の吸血鬼達について行きながら質問をする。






「本当に何も知らないので恥ずかしいんですが……


そもそも遺物ってなんですか?」




-本当に吸血鬼になったばかりなのか?親は何してんだぁ?-




「………親は、エアクラさんは死にました……」




-………そうか、そりゃ悪いことを聞いちまったな…-




「なに!?あの暴食姫がか!?ありえん!!一体何をすれば、誰が勝てるというのだ!!」




「すいません…戦いは見れなかったのですが…恐らく俺を庇ってダメージを受けていたので…」




「……信じられん…いや、君が子であるのならば本当だろうが…………死んだところを見たのか…?」




 思い出すと涙が滲むが堪え頷く。




「そうか……いや…攻撃は最強であったが防御は軽視する傾向にあった……だが……」




「いや、遠回しに聞いても仕方がない。単刀直入に聞こう。君は本当に【継戦】なのか?そうであれば吸血鬼から吸血ができるはずだが私からも吸えるのか?」




 【継戦】最大の特徴であるようだ。他の血族は吸えないのか?




 ヴィクトリアさんが自らの手首を切りこちらに差し出してくる。少し恥ずかしかったがほんの少量だけ吸う。




 顔を覗き込むようにしばらく見つめられる。




「飛び方に不自然さは…ないな。少量なら強い吸血鬼は体調を崩す程度だが…この反応は本当になんてことなさそうだな…」




-吸血鬼の常識が崩れちまうな…なんていうかよ、そりゃ何でも有りすぎねぇか?-




 あまり実感はないが…他にない力は確かにかっこいいと思ったがそこまで有用な力には思えなかった。




「先程は【叡智】の血族能力を使っていたな?あれはどういう事なのかな?」




 なんの事か尋ねると手からロープ出したことだそうだ。【叡智】の血族能力は物質創造らしい。




「なるほど…なんというか感覚で出来ちゃったんですよね、ほら」




 そう言い短めのロープを再度作成する。そういえば前は火を出したり爆発させたり出来たがいつの間にか出来なくなっている。




 感覚を思い出しながら再度試みるとやはり出来ない。頭を悩ませているとヴィクトリアさんに何をしているのか聞かれたのであらましを話すと驚いていた。




「"存在証明"ではないのだな?…暴食姫がそのような事をしていたことは無いはずだが……………だめだな、【継戦】の情報が余りにも足りない」




「だが……考察はできる。恐らく君は吸血した血族の特徴がしばらく使えるといった所だろう。ちょうど私の血を飲んでいたから【叡智】の力が使えると考えるのが妥当なところであろう?


また後で試してみよう」




 拠点なら色々な血族がいるしちょうどいい。とヴィクトリアさんはつぶやき他の人に話しかけに行ってしまった。

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