ヴィクトリア
人間共が吸血鬼を奴隷として扱っている、そのことが許せない。
-待ちなさい!まだわからないでしょう!-
分からない?目の前で見ている景色は幻覚だと言うのか。
-冷静になりなさい。まず使っている者も吸血鬼の可能性もあるでしょう?例えば奴隷側は犯罪者のパターンですね-
-借金、敗残兵、親に売られた。いろいろな理由で奴隷は出来るのです。それ自体を肯定するつもりはありませんが状況を把握してから動くべきです-
戦うにせよ敵の情報は必要、か。確かにそうだ。敵が人間か吸血鬼かでもかわる。それにやむを得ない事情であればしょうがない…のか?奴隷制は馴染みがなさすぎる。
「……ありがとう。落ち着いたよ、確かに冷静じゃなかった。」
-分かればいいのです……もし話を聞いて最悪のケースだった場合暴走するようでしたらそもそも寄らないといった手もあります-
「…………いや、見るよ。吸血鬼の取り巻く環境を知りたいんだ」
「ほぉ…殊勝だな」
バッと後ろを振り向く!
「誰だ!」
長い黒髪と深紅の瞳の美しい女性だった。
「まぁ落ち着きたまえ。その気ならば声などかけんよ」
彼女の服装は黒いレザー製のロングコートに同じくレザーのハット。所作は戦闘するものではなく余裕のある優雅な所作だ。
むやみに信じるのも危険だがそれ以上に戦闘になることは避けたいと思うほど強いことが分かる。肌がピリピリする。
「うん、分かってもらえたようだね。私はヴィクトリア。まぁ好きに呼んでくれたまえ」
「こんにちは、俺はマナト。…ヴィクトリアさんは何をしにここへ?」
「私は旅をしていてね。色々な場所を見て回っているんだよ……つい君の武器が気になってしまってね、どこの遺跡で手に入れたんだい?ここらのは粗方回ったつもりだったんだけどね」
「これは……ある人から貰ったものです」
「知性のある武器かぁ…遺跡産だろうけどその人はどこから持ってきたか知っているかい?いや、そもそも見た目の性質は神聖礼装に近いような見た目だが…吸血鬼にもそういった武器がある…
いや、そうだな!君に送った人物に聞いたほうが早そうだな!」
そう早口でまくし立ててくるヴィクトリア。
「その鎌を触ってもいいかい?一瞬でいい、持たせてはくれないだろうか」
こちらに迫ってくる。持ち逃げされてしまうリスクもある。それになにより…
「申し訳ないけどこの鎌、トゥド・センザは俺以外触れないようになっているらしいんですよ」
「……うん?どういうこと事かな?」
「いや、他の人が触るとどうやら気を失ったり持ち手に棘が生えたりするんですよ」
-棘は私が触られるのが嫌で意図的なものです。ですが力を吸ってしまうのは私も無意識なので止められません-
「認めたものしか握らせないことは割とある。だが本人が許可を出していても持てないと…それ自体はよくある。私の剣もそうだしな……だがなぜ君は持てるんだい…?」
-はっ!信用のないやつにそうやすやすと武器を預けるわきゃねぇだろうが!嘘吐かれてんだよヴィクトリアちゃんよぉ!-
どこからともなく声がする。ヴィクトリアが細剣を抜くと明瞭に聞こえるようになった。
-よぉ!坊主!コイツはちょっと変わったやつだがインテリジェンスウェポン持ち同士よろしく頼むぜ!-
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
-コイツは一回気になるとしつこくってなぁ……良かったら触らせてやってくれねぇか?-
-私は構いませんが…保証しません。-
「それでしたら…一度指だけでも触れてみませんか?それで大丈夫そうなら徐々にって事で…」
「すまんな、お言葉に甘えよう」
トゥド・センザを差し出すとヴィクトリアさんは躊躇なく指で触れる。
「ッ!」
ビクッとして指を引いた
「なるほどなるほど、これは強烈であるな!弱い吸血鬼では意識を持っていかれるわけだな」
-おい、大丈夫か?…………坊主、嘘じゃなかったんだな、疑ってすまねぇな-
「いや、大丈夫ですが………ヴィクトリアさん、大丈夫ですか?」
「このくらいであれば大丈夫だ。ただ流石に持って戦おうとは思わんな………しかしなぜ君は大丈夫なのだろうな…
【叡智】の真祖であれば"遺物"クラスの作成はできる……か?だが専用武器化などは聞いたこともない…
そもそも"遺物"に専用などありえるか…?」
ブツブツと言いながら考え込んでいる。この人何しにここに来たんだろう…
-おい!ヴィクトリア!帰ってこーい!-
「はっ!!……ゴホン、スマンな。………おっとそろそろ時間だな。少年はそこに行く途中だったか?」
特に隠す理由もないので素直に頷く。
「では最後にひとつだけ質問をさせてくれ。答える答えないは君の自由にしてくれて構わない」
「君にとって"人間"とはどんな存在だい?」
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