次の場所へ


 風が気持ちいい。戦闘で汗をかいているため風がひんやりとする。




-ところでこれからどうするおつもりですか?-




 先程まではどうしていいかわからなかった。が、戦闘をしたことにより頭がスッキリと冴えていた。これからやる事が明確になっていた。




「簡単だ。復讐だよ、復讐。」




……言葉に出すとなんだか薄っぺらく聞こえるな。






-あれほどのことがあったのです。あなたの大事な存在が二人も同時に…-




-止めはしませんよ、ですが何も情報がないでしょう-




 そのとおりだ、神聖騎士団に詳しい人に出会う必要がある。その為にはまず知り合いを増やしていくことが大事だ。




「問題は場所がわからないんだよな。点在しているとエアクラさんは言ってたけど詳細は聞いてなかったからなぁ」




-1度寺院に戻ってはどうですか?あそこならば情報もあるでしょう-




 それは一度考えた…が、スンのことを考えると戻るのは気まずい




-気持ちはわかります、ですが1度タイミングを逃すと謝るのは難しくなるものです。それにあなたが悪いとは思いません-




 淡々と無感情な声がそう慰めて?くれる。




「…分かったよ。どちらにせよ行く宛はないんだ。寺院に向かいながら途中で集落があったら寄る形にしようか」








 速度を早めながらトゥド・センザと雑談をする。黙っているとつい考えてしまうのだ。ここ数日の事を












───────────






 3日ほど飛んでいるとトゥド・センザが警戒の声を上げる。




-…強い力を感じます!聖なる力です!………下手したら真祖級かも知れません……-




「いま真祖級と出会いたくないな、迂回していく。方向は?」




-直進の方向なのですが……警戒してください!バレてます!こちらに突っ込んできます!-




 岩陰から上空にいるこちらへ特攻してくる女の姿が見える。背中に背負っていた身の丈以上の十字剣を振りかぶり切りかかってくる。




 長い黒髪に青い瞳をしています。彼女の肌は薄く、透明感がある。


 白いローブに青い十字、黒いレザーアーマーを身にまとっている。眼光は鋭くこちらを睨みつけている。




「吸血鬼め、聖なる力でお前を打ち破る!闇の力は消え去るがいい!」




「差別主義者めが!吸血鬼だからというだけで殺すお前のほうが邪悪だろうが!」






 問答無用!と切りかかってくる!目で追うのがやっとな程に早い!




「なぜ死なない!こんなにも力を手にしたというのに!」




 動きは早いし攻撃は重い。だが如何せん動きは素人だ。




ギィン!と鎌と剣が打ち合う。打ち合えるのか!トゥド・センザと!




「頑丈だな!まさかこの鎌で切れないとはなぁ!」




「私の宝剣アルテミスは一族に伝わる由緒正しい物だ!お前なんかにどうにかできるわけ無いだろう!」




 巨大だが細い、青い水晶と銀で出来ている。家宝か、通りで作りがいいわけだ。




 振りが甘いためやられるとは思えないが勝てるとも思えない。基礎の能力値が違うのだ。どう逃げるか…




「はぁ……はぁ……強くは無い、鍛えているな吸血鬼」






    "血編み・茨"




「な!卑怯だぞ!吸血鬼!」




「はっ!殺されないだけありがたく思えよ!人間!」




 翼を血で作り全速力で飛び立つ、途中で翼先端に火を付けてさらなる加速を試みるがうまく行かない、というよりも火が出る感覚が失われていた。






「流石に追いつけないだろ…何だあいつ。力は凄いけど技術が追いついてない。まるで力を手にした子供だぞ?」




-ええ、なにか不釣り合いなものを……危ない!後ろです!-




 振り返ると光の矢のような物が肩に刺さる!ジュゥゥと焼けるような音がする!




「ぐっ!クソ!」




 更に加速する。見えなくなるところまで行ったがそれでも的確に矢を放ってきた、油断はできない。




 矢を引き抜いたが触れただけで手が火傷のように爛れる。肩も再生が遅い。




-浄化の力というもののようですね。聖銀と同じ様な効果です-




「クソ!まるで俺らが穢いみたいな扱いしやがって」




-…人間と吸血鬼の反応があります。どうやら小さな農村のようですが……-




「おぉ、共存してる場所は意外とあるのか?」




-どうでしょうね、南の方にある様ですが遠いようですよ。寄り道になってしまいますがどうしますか?-




「まぁ情報収集もそうだけどそれ以上に俺は吸血鬼の世界を知らないからな、色々見てみたいから行くか」




 それに真っ直ぐ移動しているとさっきの女に追いつかれそうだしな、、、






「そういえばどうやって探してるんだ?」




-ソナーのような物です、現在は居場所がバレないように最小限に留めています、バレてもいいのなら探知範囲を広げられますがいかがなさいますか?-




「いや、いい。相当離れたがまだ怖いしな」






-そろそろ見えてくるはずです-




 そのまま飛行していこうと思ったが思い直す。もし吸血鬼が共存ではなく隠れていた場合人間が驚いて騒ぎになってしまう。




 人間のふりをしていこう、軽装すぎるが道で獣におそわれたことにでもしよう。ちょうど服もボロボロだしな。




 木々の隙間に降り街道を歩く、最近は飛んでばかりだったからか遅く感じるが景色を楽しむ事ができ暇にはならなかった。




 先へ進むと石切場のようなものが見えたが……




 入り口の奴ら銃で武装している…?何か政府の関係施設か…?




「うっわ、現在でも奴隷とかいるんだな…」




 奥をよく見るとムチを持った監視員らしき人間と手枷足枷をしている人間がいる。いや、奴隷達の手足が爛れている…?


 






 よく見ると銀色だ。それに口元には…牙が……






「クソ野郎どもが!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る