新たな力の片鱗



「さて、どれから試すか…だが茨を速攻で抜け出す程の力だ。安易に近寄るべきじゃないな」




 比較的血を込めた茨だった。並の吸血鬼じゃ抜け出せないほどの力は込めているはずだ。


 棘が食い込んだ場所は血が出ている。治りも悪そうだ。再生能力は弱いのか…?




 背中から剣を生やし4本ほど待機させる。エアクラさんのように空中に浮かせることはできないが血で出来た有線にて擬似的に再現できる。


 線を切られると血力の無駄になってしまう弱点があるが手数が増えるため有効だ。




 トゥド・センザがない為血で鎌も作成する。




「最近はトゥド・センザ使ってたからなぁ…修行してた頃を思い出す…………」




寺院と同時にスンを思い出すがそれどころでは無い




「……っしゃ!!行くか!」






 気合いを入れ直し突撃をする。修行の成果か体から血剣を切り離しても短時間であれば維持できるため飛ばす。




 やはり見えていないのか当たった後に腕振り弾く。刺さりはするが傷は浅い。




「硬くはない…が中まで届かないな!」




 多数の手が迫る。掴むのではなく叩きつけるのが主なようだ。




「キャベツみたいなやつだな、表面を切っても無駄か…」




 俺の技は全てレベルが同じ相手を想定している。必要以上に固い相手を貫通させるような技はない。トゥド・センザで解決すると思っていたがない場合の想定がない。




 血力を身体に行き渡らせ無理やり槍をねじ込むか…?




 血力が行き渡るが何か違和感を感じる。まるで血が沸騰しているかのように内圧が高くなっていく。


 




「無駄遣いする余裕は無いんだがな……何があっ……」






 ボッと手から火が起こり音に敵が反応する。




回避し体制を立て直す。何が起きたのだ…?




「これは…暴虐の…?」




 再度血力を巡らせるが次は右手に集中させる。ボン!と破裂音が響く。




 不明な点は多いが有効点は理解した。とりあえず仕組みは不明だが今は爆発が使えることさえ分かれば問題ない。




 化物には申し訳ないが練習台になってもらおう。槍を作成し根本に過剰な程に血力を集中、凝縮させていく。


 本来であれば自壊していくが反応がいつもと違う。これなら……!




 そうだな、名付けるなら…




「吸血飛槍!!(きゅうけつひそう)」




 パキン、と根本にためた血が崩壊すると同時に爆発が生じる。指向性爆発のおかけで投げるのとは比較にならない速度で飛んでいく。




 ズブリと沈み込んでいく。まだ血力が放出しきれていないためズブズブとめり込んでいく。このまま行けば中心まで届くはず……




「まぁそうなるよな…」




 当然敵もそのままにしておくはずがない。腕で折り払いのける。




 化物も煩わしくなったのか先程までとは違い手当たりしだいに腕を振り回し暴れる。




 このままではジリ貧だ。何本かはまだ打てるがそれで勝てるとは思えない。であれば賭けに出るしかない。




「これで駄目なら……一時撤退するしかないな。そもそも中心が弱点じゃなかったら俺じゃどうしようもない」




 作りは先程と同じだ。だが次は




「槍先にも血を集める!中から焼いてやるよ!」




 要はミサイルと同じ要領だ。であれば槍自体に衝撃力は必要ない。重量は必要だが貫通力が必要だ。




 細く、長く生成する。密度も必要なため時間をかけて生成していく。




「くそ、文字通り手数が多いな!捌ききれない…!」




 一撃を腹部にもらってしまう。吹き飛び内臓が破裂するが集中だけは切らさない。幸い見えないのか追撃はない。




 腕の層が薄そうなところを狙うために飛び上がる。音で感知したのか攻撃が来るが翼を展開していたのでは間に合わないため足の裏を爆発させて更に飛び上がる。




「吸血飛槍きゅうけつひそう ・・爆裂ばくれつ」




 脳天目掛け放つ。




「くらえ!!」


 音もなく飛んで行く。トス、と軽い音ともに穿く。




 ボンッ…………と音がする。弾けとぶ威力は無かったか。




 だがダメージは通っていたようで内部から煙が出ている。俺のダメージも大きく動くのも億劫だ。この隙に回復するがどうだ……?




 大きな巨体がゆっくりと倒れる。大きな音がするかと思いきや、灰になり風とともに消えていく。






「あいつなんだったんだ……まさか、存在証明が化物になる代わり強くなる…とかか…?」






 とりあえずは勝利はした。だが謎が増えて釈然としない気持ちになる。




「おい、トゥド・センザ。化物の座布団になる気持ちはどうだった?」




-斬新でしたね。ただ二度と味わいたくはない、そんな気持ちです。十分に堪能したのでもう少し早く救出してくれても良かったのですが-




「馬鹿言うな、お前が居ないせいで苦労したんだぞ?」




-………そのようで。まぁ、見捨てなかったことは褒めましょう-




 生意気な鎌だな!お礼の一つも言ってくれ




「誰だ!」




 少し遠いが何か気配を感じた…気がした。




-……誰かいたのですか?何も感じませんが……-




 木々を切り倒して視界を確保する…が、何もいない。




「少し敏感になりすぎてたか…?」




-先程まで死闘していたのです。過敏になるのも致し方ないでしょう-




 だいぶ騒いでしまったので時期に人が集まるだろう。そうか、と返事をして飛び立つ。




























「………マナト君、彼は一体……。王に報告するにはもう少し観察しなくちゃ、だね」

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