王の一撃
「マナト君、せっかくだからよく見とくといいよ。これが彼女、火剣のブレンシュ。【暴虐】の血族が暴虐と呼ばれる所以だよ。」
先程までいた山を見ると突如噴火したのではないかと思う衝撃が走る。
とてつもない熱と光。目を開くのが難しいがエアクラさんが見ておくべきと言っていた。何より真祖級の一撃だ。見るしかない。
山1つまるまる飲み込む程の火球。太陽が堕ちてきたのかと錯覚する……どころではなく実際頭上にある太陽の光が見えなくなる。
鼓膜が完全にイカれる。吸血鬼だからすぐに治るが…
「…………………は?エアクラさん…………」
「凄いでしょ?でもブレンシュ、えらいね、ちゃんと手加減してる」
「ここからでも見えるくらいの……大きなクレーターが……手加減?」
街一つ分の面積がが丸々消えたのだ。マグマになって溶けたとかではない。まるまる全て消失している。
"凝結"「焼失」は過去に見たことがある。ローディが使用していた技だ。
凝結とは血族特性の極地であると聞いた。であれば真祖であるブレンシュさんが使えるのは当たり前だ。
だがこれはレベルが違いすぎる。ローディの時はせいぜいビルを倒壊させるかといったレベルであった。
ブレンシュさんのが密度が薄いわけでも決してない。溶かすだけではなく土地全てが蒸発するレベルの熱。現代科学じゃ決して再現できないであろう。それを手加減してるだって?
「個人で出せる力なのか…これが…」
驚愕していると未だに抱えられたままの格好でブレンシュさんの所まで移動していた。
「エアクラ!どこへ行っていた!」
「もー!まだマナト君は余波でも耐えられないんだからね!
………ん?まだ生きてる人いるんだ」
「は、は、ははははは!!!私の神聖礼装「ボルテガ」は盾!絶対防御だぁ!!いくら真祖の攻撃、攻撃とはいえぇ!我々には!開放さえすればぁ!もう傷付けられんぞぉ!!」
ハイになっている?あの一撃から生還したのだ、ハイにもなるか。アドレナリン、ドバドバだろう。
周辺はひどい有様だ。爆心地から見るとよくわかる。完全にガラス化してしまった土地。途中穴が空いている場所があり水が出ているが地面?に当たった途端蒸発している。地下水だろうか?
ちょうどアイスクリーム掬うスクープで神が掘ったのか?と疑いたくなるようなキレイな半球になっている。
生存しているおそらくリーダーであろう騎士団員は白色の大きな盾を構えている。
透明なガラスのような六角形の板が複数枚あわさり自身を覆っている。おそらく防御特化しているのだろうがそれでもあの一撃を防げるとは…
「概念として外から悪意のある物を通さない!か、勝つのは難しいかも知れないが絶対負けることもないのだぁ!数々の戦場でぇ!生き残り報告を上げて昇進してきたぁ!
ふふふ…ははは!真祖の情報にもう一人の女ぁ!昇進だぁ!」
もともとのデザイン出なければヒビが入っているような気が…?とはいえ相当小さな亀裂だ、
「エアクラ、任せてもいいか?試したが時間がかかる。面倒でな」
「………そうね、時間かけるのも面倒くさくなりそう、分かったわ」
「……無駄よ無駄!来たまえ!どんな技を披露してくれるのかな!!」
「…あぁ、情報持って帰りたいのね。いいわよ、受け止めれたら追わないであげるわ」
「エ、エアクラさん!それは…」
それはマズイ、真祖が二人いると知られれば確実に創作の手は広がるだろう。エアクラさんが強いのは承知しているが先程の太陽の様な一撃を防ぎ切った相手だ。何があるか分からないのだ…
「少年、下がっていろ。そして安心するが良い、アイツが仕留め損なった所を私は見たことがない」
「はぁ……美味しくなさそうだけど…」
""存在証明""「「屠殺」」
「…………?何も起きない……、で、は……ない…」
ズル。
粘着質な音と共に相手の体が前後の方向、縦2つにズレていく。
左右に引き裂くわけではなく前後だ。死んだ本人も気付いてない。周囲を覆うバリア?もズレるように綺麗に一刀両断だ。
エアクラさんが手を前に出すと敵の断面から血が。バリアは崩れ落ち粒子が。それぞれ吸い込まれるように手の上に混ざりあい球形になった。飴玉くらいのサイズだろうか。
「じゃ、いただきます」
球形のナニかをエアクラさんは飲み込む、噛み砕く訳ではなく丸呑みだ。
ローディ戦の時に一度見た技だ。あの時と違い何か分かるかと思った、が何も見えなかった。何が起こったかすら不明だ。
「エアクラ、鈍ってはいないようだな……
………所でそこの少年は…?」
「ん?あ!そうそう!紹介するね!私の眷属、マナト君!」
「おぉ!ついにエアクラにも眷属が出来たか!!それはめでたいな!よし!宴を開こうではないか!」
「宴は落ち着いたらね!あなた今色々忙しいんでしょ?なにしてるのよ」
ブレンシュさんは状況教えてくれた。
側近の一人を捕らえられていたそうだ。体は消滅しているそうだが血晶を取り戻す為に襲撃をしたところ想像より敵の抵抗が激しく、侵入して盗み出した所で散り散りに逃げ、撹乱しているとのことだ。
「あら、無事取り戻せたのね。彼、優秀そうだったから残念だと思ってたから良かった。」
ブレンシュさんは誇るかのように胸から血晶を取り出す。拳より二周りほど小さい角柱状、赤いが芯は深い黒色をしている。
過去に見たどの血晶よりも大きい。寺院で遭遇した野盗から出てきたのは小指の爪ほど。一番大きくても半分程度であった。色も鮮やかな赤のみだった。
血族や血の濃さで変わるのだろうか?
「……って事。だから真っ直ぐ逃げるのは避けてほしいのよ。」
考えている間にエアクラさんがあらかた説明してくれたようだ。
「うむ、承知した、まっすぐ戻りたいが無意味に戦乱を招くようなことは避けよう」
頷くとこちらに近づいてくる。
「…………少年、どこかで会ったことは無かったか?」
………思い出そうとするが記憶にない。ここまで目立つ人は出会った事があれば忘れることは出来なそうだが…
「……すいません、多分ないかと思います。吸血鬼になる前なら分かりませんが…」
更に近寄ってくるがエアクラさんが間に割って入ってくる。
「ちょっと!ブレンシュ!ナンパしないで!」
「ほぉ…なるほど、なるほどなぁ」
ブレンシュさんはニヤニヤしながら離れていく。
「うむ。うむうむ、いいではないか、念願の眷属であるからな。そういった事もあろうよ」
ブレンシュさんは堪らえようとしているが笑いが漏れ出ている。
「くっくっ……うむ、あいわかった!では急ぐのでな!また会おう!そのときは宴を開こうではないか!ではな!」
胸に血晶をしまい飛び去って行く。
「じゃ、私達も帰ろっか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます