窓から朝日が差し込む、吸血鬼だからと朝日に焼ける事はないが顔に直射日光が当たると目が覚めてしまう。


 起き上がろうとすると左腕に重さを感じ目をやるとエアクラさんが腕枕で寝ている。




 心地よい重さだ。昨晩のことを思い出すとニヤけてしまうがそんな顔を見られたら、またからかわれるので急いで顔を整える。


 


 暇になってしまった、頭を退かして起きることは出来るがこんなにも気持ちよさそうに寝ているのだ。起こすのは気が引ける。




 暇つぶしに頭を撫でると「んんぅ、」と小さく唸りながら猫のように頭を擦りつけてくる。……起きてるんじゃないか…?




 そんな朝の幸せなひと時をしばらく堪能しているとエアクラさんが起きる。




「んんぅ……ん……マナト君おはよ〜、、」




 まだ眠いのか寝ぼけ眼で抱きついてくる。全身で絡みつくかのように抱きついてくるため色々と……




「ん………。ん?あれ?」




 目が覚めてきたのか顔を開けてこちらをハッキリとした眼差しで見つめてくる。




「……マナト君、元気だね?昨日あんなにしたのに……?」




朝だからね!しょうがないの!!






「若さだねー。でも夜まで我慢してねー?」




笑いながらキスしてくる




「いや、別に生理現象だから!そういうつもりはなかったよ!?」




 でも、今晩も泊まっていっていいのか……




 ベッドから立ち上がりながら「ホントかなー?」なんて笑いながら洋服を着始めた。




「さ、ご飯にしましょ!」




──────






 人間も多い街なので血以外を食料も多く手に入ったとの事で久しぶりにエアクラさんの手料理だ。調理している間は座って待っててくれと言われたが暇なのでコーヒーを入れている。




 暖炉の火をつけお湯を沸かす。コポコポ…とコーヒーのいい香りが部屋に広がる。カーテンを締め切っていたので開けると外から喧騒が聞こえる。




「エアクラさん、なんか外が騒がしいから聞いてくる。ここ最近きな臭いから心配でさ、すぐ戻ってくるよ」




「はーい、気をつけてねー」




 作ってもらっているので出来たてを食べたい。すぐに戻ろう。そう決意して外に出る。道で数人が話し合っていた。






「あ、おはようございます。なんか皆さん慌ててるみたいですけどどうかしましたか?」






「旅の方、おはようございます。どうやら本日早朝に吸血鬼の方々が騎士団支部に襲撃かけたらしくて……噂になってた暴虐の方々みたいですが…」






「あぁ、ここに住まわれてる方々では無く、ですよね?それなら距離もあるし関係ないのでは?」






「私達もそう思ってたんですけどね…どうやら散り散りに走って居るみたいでこっちにも来るんじゃないかって…」


「ここは騎士団にバレてないからなんとかなってるがバレたら俺達諸共死罪になっちまう!」


「アイツら吸血鬼をかばったとかいってお構いなしだからな」






 騎士団は吸血鬼から買い物しただけで処断してくる連中だ。共生してるとか関係なしに襲撃してくるだろう




「なるほど…一人でもこっち来たらマズそうですね…情報ありがとうございました」




 不味いな…先に吸血鬼に合流してこちらに来ないようにする事ならできるがバレると守るほどの力はない。それに来た連中を倒したとてバレたら何度でも襲撃してくるだろう。






「ただいまー。待たしちゃってごめん」




エプロン姿のエアクラさんが机に料理を並べ始めたタイミングのようだ。




「ちょうど出来たよー!食べちゃお!どうだった?」




食事に手を付けながら淡々と状況だけを説明する。




「それでさ、この後どこ行くとか急ぎじゃなきゃ見張ってこっちにくる吸血鬼を別の方向に誘導しよっかなって思って」






「相変わらず優しいね。でも危ないよ。貴族の義務ノブレスオブリージュだっけ?良いことだけど…正直まだマナト君には積極的に戦ってほしくないんだ。


……いなくなっちゃうかもしれないのは寂しいよ。」






 寂しそうな顔をしたエアクラさんがそういう。眷属も初めてだと言っていた。知り合いは多くても孤独な時間が長かったのだろうか、俺も一人にはしたく無いし一緒にいたい。




 ヴィラジュには世話になったがエアクラさんと天秤にはかけるまでもない。相手が悪いのだ。




「そっか…そうだよね。分かった、それなら」






 それなら早く移動しよっか。そう言いかけたがエアクラさんが渋い顔をして遠くの空を見つめているのに気づく。




「マナト君、ごめん。前言撤回するね。行こう。」






何があったのだ。この数秒で心変わりするような何かがあったのだろう。食べ終わった食器を少し忙しく片付けはじめた。




「………エアクラさん、何があったか聞いていい?」






「…………ごめんね、私だけで行ってくるよ。」




はぁ、とため息をつきながら返す




「一緒に居るって言ったでしょ?危険なのかも知れないけど自分の身を守りながら逃げるくらいならもう出来るよ?」




「それに、逃げる方向を変えるように伝えるだけでしょ?………何があったかだけでも教えてくれないと勝手についていっちゃうよ、俺だってエアクラさんと別れるのは寂しいし…」






 恥ずかしいが今はそれどころじゃない。勘だけど付いていくべきだと思ったのだ。




「…わかったわ、今こっちに向かってきてるのはブレンシュ。【暴虐】の血族の王、真相よ。私の姉妹みたいな物かな」




困った笑顔を浮かべながら説明を続ける。




「いつかは合わせたいなって思ってたけど…いっつもタイミングが悪いのよ」




 懐かしむような顔をして遠くの空を見つめている。




「姉妹って言っても実際に血が繋がってる訳じゃないわ、吸血鬼になったのが同じって事」




血族としての血のつながり以外にもそういった物がある…のか?




「さ!行くなら急ぎましょ!ブレンシュが本気で移動してるならあっという間にここに来ちゃうよ!」






 全然関係ないがエアクラさんは自分のこと思いだしたり、過去の友人と会ったときは大人っぽい、というかお姉さんっぽい口調になるなーなんて考えていたが切り替え着替えて鎌を取りに行ってから出発した。




 途中トゥド・センザに「昨晩はお楽しみですか、いい身分ですね」とからかわれたが無視してやった。






「さぁ!一気に行くからついてきてね!1人にしないって言ってくれたもんね!」




 翼を広げすごい速度でエアクラさんは飛ぶ。跳躍の際に地面が抉れている勢いだ。




「ちょ!手加減してよ!」




血力を翼に全力で送り追いかける。俺でも下手したら飛行機より早いのに…


………上には上がいる。自信なくすなぁ…

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