気持ち
「え!?自分が吸血鬼だって忘れてた!?」
「すいません………今までしたことが無いもので……」
「今までどうしてたんですか…?」
今までの吸血……グラスに入ってるものか、敵から手を通して吸うか、殺したあとに死体から瓶に移してか…
そういえばちゃんと人間から飲んだことがない……?え?吸血鬼っていえばやっぱり首から直で飲むイメージがあるけどしたことない。
流石に敵や死体から吸ってた☆なんて言いにくいのでグラスからだけですと無難に返答しておく。
「あ!そうだったんですね!私は人間だから分からないんですけど異性の血を首から飲むのが一番美味しいみたいですよ!」
へー、やっぱり吸血鬼伝説には割と意味のある描写が多いんだな。
なんて感心していると「じゃあお姉さんが教えてあげるね!」と意気込んでいた。
「……て言っても私もこの村から出たことないから作法とか分からないんだけどね?」
軽く笑いながら立ち上がった。部屋を歩きながらカーテンを締めていく。
テーブルの上の果物にいま気付いたようだ。大きめだし気づかなかったのは彼女も緊張していたのだろう。
「あれ、マナトさん果物食べるんですね?吸血鬼の方も人間の食事するんですねー。」
「良かったら食べてください。私一人じゃ食べ切れそうもないですし。」
「ありがとうございます。じゃこの赤いの貰っちゃいますね」
そう言い彼女が選択したのは真緑な桃みたいな果物だ。鮮やかな緑。初めて見る。…俺もなんか食べるか
「すいません、えーっと……」
「マルスよ」
「それじゃ、マルスさん。私にも一つ何か果物を貰っていいですか?」
「はーい!」
入ってきたとき全然喋り方が違う。打ち解けれたのだろうか、よかった。
なんでもいい?と聞かれなんでもいいと答えると袋を投げてきた。
中には赤く小さい木の実が入っていた。見た目はグミの実に似ているが真っ赤だ。
小さいので2つ同時に口に投げ入れる。見た目は派手だが味は繊細な甘酸っぱさだ。悪く言えば味が薄い。
ただ、鼻に抜ける花のような香りはとても強く美味しい。
マルスさんは緑の果実齧りながらなんか不思議な味がするわね…?と首を傾げていた。
「そっちのはどんな味です?」
「うーーん、ジューシーなんだけど後味がなんかスパイシー?ケミカル?な味がするわね。悪くは無いんだけど……なんか身体に良さそうな味!」
カーテンを次々締めていき部屋は薄暗くなっていた。
「さてと!マナトさんにとってはやっとメインデッシュですね!
私恥ずかしいから暗くしちゃったけどいいですか…?」
マルスさんの横顔を暖炉の火が照らす。
パサ、と服が落ちる音がしたと思ったら上を完全に脱いでいた。上半身裸なのだ。
雰囲気も合わさってドキドキする…
マルスさんは金色のロングヘアーを片側に寄せ背を向ける。
首筋を晒し挑発的にどうぞ?と誘ってくるのだ。
"悪い"意味でドキドキするが男であれば止められない。肩をつかむとビクッとマルスさんが震える。
「……怖いならやめときましょうか…?別に吸血鬼は1ヶ月くらい食べなくても…」
「んぅ、………ごめんなさいね、さっきから…ふぅ……なんか熱くって……んんぅ…」
暖炉に照らされた顔が妙に赤い。目も潤んでいる。
ああ、襲ってしまいたい。男という生き物は独りよがりな生き物だがこれは彼女も待っているのではないだろうか。
「怖かったりはしない?大丈夫?」
「もう…焦らして…肩に触れられてるだけでも…んんぅ!…女に言わせないでよ……」
いたずらに肩を撫でると艶っぽい声が漏れてくる
「私もう駄目なの……別の意味でも……ふぅ…食べてほしいのぉ…お願いぃ…」
ゾクッとした。吸血鬼としての本能か男としての本能か。マルスさんの首筋が魅力的でしょうがない。目が離せない。
食べようとした時にいたずらっぽく微笑むエアクラさんの表情が脳裏をよぎる
別に付き合っているわけでも無ければ操を立たているわけではない、好き…なのかもわからない
まぁ男だし?エアクラさん美少女だし。下心が一切ないわけじゃない。当然の話だ。
だけどこの状況でエアクラさんのこと思い出すのは……
「ごめん!!!」
走って出てしまった
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