ヴィラジョ
更に数日がたちようやくヴィラジョについた。
例のごとくエアクラさんには知り合いがいるようだ。この人全世界に知り合いいるのな?
俺は暇なのでそこら辺のお店を見て回る。
大昔に廃村となったところを流れ着いた吸血鬼や人が利用して暮らしているとのことだけあり本当に古めかしい。
建物もそうだが生活様式が何百年か戻っている。電気は無く窯や暖炉に薪が投下されている。故に木こりといった職業もまだ残っているらしい。
レンガ造りの町中を観光しながら歩いているとタイムスリップしたような気持ちになる。映画の世界のようだ。
「よぉ兄ちゃん!どっから来たのかい!よけりゃ見てかないか」
エプロンを着たおっさんが声をかけてくる。果物屋の店主だろう。
「こんにちは。せっかく声をかけてもらって申し訳ないけどお金持ってないんですよ、すいません。」
そもそも通貨もよくわかっていない。現地のお金なのかここ独自の通貨制度があるのか…
「いいよいいよ!その代わりと言っちゃなんだけどさ、外の話聞かせてくれよ!ここらは人里まで行ける距離じゃなくて暇でよぉ!」
それなら…と話し込んでしまった。店主は目を輝かせながら話を聞いてくれてこちらも楽しくなってしまった。必要以上に喋りすぎてしまったくらいだ。
「おっちゃん聞き上手だね、吸血鬼なって短いから生い立ち全部喋っちゃったよ」
「いやいや、楽しかったよ!…………兄ちゃん、ココだけの話って訳じゃないんだけどよ」
声を落として、周囲警戒するように店主は話し出す
「今、この村はピリピリしてんだろ?…いや、平和そうに見えるけどこれでもしてるんだよ」
「兄ちゃんもさっき騎士団によく遭遇したって言ってたじゃねぇか?あれどうやら【暴虐】の連中がここらの騎士団支部襲撃するって噂のせいみたいでな。」
暴虐の血族が?襲撃ってどんなレベルなんだ?
「そりゃもう戦争よ!ここらっても遠いけどよ、ここの騎士団支部はでけぇ!数千人は常に居るからな!」
国と国との戦い程ではないが大きな戦ではある…
「それにキッカケになっちまう、吸血鬼を弾劾したくてたまらねぇ連中だからな、他の支部も吸血鬼の集落を襲撃するだろうな」
そうなれば全世界に戦いの火は広がる、世界大戦クラスだ。
「考えたくはないがお互い追い詰められれば俺ら人間を巻き込むだろうな」
吸血鬼は増やすためや食事のために人間を襲う、騎士団は何かしらの名目で徴兵する…か。
考えすぎだと一笑は出来ない…
「だけど矛盾しないか?それだと…
「マナト君お待たせー!部屋借りたよー!」
「あ、エアクラさん。ありがとう!」
小走りしながらエアクラさんが向かってくる。それを見た店主がニヤニヤしながら
「お!この人が兄ちゃんが可愛い可愛いってベタ惚れしてる彼女、いや嫁だったか!?」
「お、おい!おっちゃん!!あることないこと適当言うなって!!」
確かに可愛いといった記憶はあるが!本人の前で言うかな普通!それに嫁とか彼女とか言ってないし!
エアクラさんをちらっとバレないように見ると顔を赤くして両手を頬に当てからかうようにニヤニヤしている。可愛い。余計に顔が熱くなる!!
可愛いと思ってしまった。末期だなぁ……
「わりぃわりぃ、ほれ。ここの森で取れる果物だ!吸血鬼の兄ちゃんたちには必要ないかもしれないが味は分かるんだろ??持ってけ持ってけ!」
ガハハと豪快な笑い声を上げながら果物のはいったカゴを渡してくれる。後でカゴは返せよ?と言いながら小声で
「赤い小さな実があるだろ?精力つくって噂だからな」とか抜かしやがった!
親指を立てサムアップしているしている店主を無視しエアクラさんの元に行く
「私のこと可愛いって思ってくれてるんだね?もっと直接言ってくれてもバチは当たらないよ??」
ニヤニヤしながら腰に手を当てて"しな"をつくるエアクラさん。確実にからかってきてる。
「はいはい!いきますよ!!」
否定はできなかったので勢いで誤魔化す……誤魔化せてないが誤魔化す。
彼女に敬語ー?とか戯言が聞こえたが無視する。
「ほら、エアクラさん!宿どっち!」
「あー、私のことが大好きなマナト君には残念なお知らせだけど今回は別々になっちゃうんだよねー」
珍しく別々らしい。今まで吸血鬼なってから一緒にいるときは当然の様に同じ場所に泊まってきた。……殆どが野営だが
驚き返答に詰まっていると
「あれ?本当に残念だった?」
嬉しそうな驚いたような声色でエアクラさんが続ける
「私も一室でいいって言ったんだけどね。ここの風習的に結婚してない男女が同じなのはちょっと……って言われちゃって。建物余ってるから別々の建物使ってほしいんだって」
建物は使わないと老朽化が進むと言うしそういう意味もあるのかもしれないな。
「マナト君のお願いなら今からでも言ってくるよ?外の人間なら風習関係ないって言えば多分だけど大丈夫だろうし」
「いや、申し訳ないよ。そういえば今まで一緒だったから違和感あるけど普通は別々だもんね」
んーー、そっかぁ。としぶしぶと納得していた。
「そういえばどう?本当に自然と人間と吸血鬼が共存してるでしょ?」
「文明はかなり遅れてるけどこう見ると進んでも幸せかわからなくなるね。正直憧れるし、スローライフってやつ」
田舎ぐらしのスローライフ、それはそれで大変な事も多いだろうが吸血鬼は力仕事、人間は細かい仕事と分業出来ていてそれぞれやることが自然とある。
現代のように必要ないものを無理にでも付加価値をつけて売り込むよりはよっぽど健全だと感じてしまうのは感性の問題か。
「老後は田舎でもいいかもねー、吸血鬼に老後なんてないんだけどね!」
笑いながら老後の話をする。エアクラさんの年齢を聞きたくなる気持ちはぐっと堪える
「マナト君の家はそっちだよ、これ鍵ね。私は向こうの角だから何かあったら来てね!」
茶色いレンガの家を指差しエアクラさんの家はこっちだと教えてくれ別れる
「久しぶりに一人だしゆっくり風呂でも入るかぁ……そういえば臭くないよな?俺」
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