次の集落へ


「とうちゃーく!!ようこそイタリアへ!」




 シゥハンジン寺院を出て唐突に飛行機に詰め込まれ空港から少し離れたところから空を飛んでいる。チケットなどはすべて手配してくれていたらしい。




「初めてイタリアに来た……気がする。え?待ってそういえば現地の言葉喋れないんだけど…?」






「あれ?マナト君気付いてなかったんだ?中国の時どうしてたっけ?」




…………あれ?たしかに??中国語喋れ……ないな。うん。出てこないもん。






「私達は種族的に人間とコミュニケーション取ることが前提の生き物だからね。実は直接喋るとどんな言葉でも分かるのよ」




機械とか通すと駄目だけどね、と続ける






「だから気をつけてなきゃいけないのがA国B国両方の人がいるときだねー、マナト君が喋って同時に伝わると色々おかしいからそれで吸血鬼だとバレて騎士団に狙われることもあるみたいだよ!




そういうときは現地語だけ喋ろうね。慣れれば切替できるからね!勉強頑張れ!」






いやぁ……毎日勉強ですかね…?




「エアクラさんはどの程度の言語喋れるの…?」




「んーー、多分現代の言葉ならほぼ喋れると思う。最近行ってないところはちょっと古めかしい言葉遣いになってるかも知れないけどね?」




「マジかぁ……凄いなぁ……」




「大丈夫大丈夫!私達には無限の時間があるし私が教えてあげるよ!」






 一つずつ教えてください…確実に言語がぐちゃぐちゃになる自信がある






「精進します…ところで今回はなんでイタリアなの?」






「ヴィラジョって村があってねー、人間と吸血鬼が完全に共生してる村なの。完全な共生関係のところは比較的少ないんだけどヴィラジョは平和で良い場所よ」






エアクラさんは懐かしむような目で遠くを見つめている。




「エアクラさんは昔…  ダンッ




 銃声!頭を狙った一撃だろうか。弾が頬を掠る


 下は森だ。大体の位置はわかるが正確な位置は分からない






 エアクラさんと銃声のした方角の間に入る。昔と違い守れるようになった、はずだ。エアクラさんに勝てるとは到底思えないけど…




「エアクラさん、どうする?とりあえず飛んで逃げる?」




 人間なら下は森だ。森を駆け抜けて飛ぶ俺達に追いつけるわけがない。


 吸血鬼なら飛んでくるだろうが場所がわかる、今よりはマシな状況になるはずだ。






「うーん。そうねぇ……やっちゃえ!」






 ウインクしながら語尾に☆星がつくようなテンションで仰る。一応人命がかかってるはずなんだけどね


 エアクラさんは少し離れたところに移動して「頑張れー!」と手を降っている。






「まぁ修業の成果みせるかぁ!…………飛行機代とか奢ってもらってるし……」






-そちらが本音ですね。情けない-




「お、起きたか?エアクラさんが待ってるしサクッと片付けるからな」




-はぁ、ま「バァン!




 トゥド・センザが喋っている途中にまた発砲音がする。トゥド・センザで防ぐと甲高い金属音が響く。






-……吸血鬼相手にただの鉛玉、ですか。私が喋っている最中に無礼ですね。-




トゥド・センザはため息まじりに敵の場所が特定出来ているか聞いてくるのでまだ分からないと伝えると




-はぁ…………遅かれ早かれ、でしょう………出来るだけ苦しまない殺す事を約束していただけるなら教えますよ-




 同意する




-……あちらですよ-




トゥド・センザがそう言うとなんとなく感覚で方向が分かるのだ。…こいつ持ってて精神汚染とかされないよな…?






 相手のいる方向に一直線に向う、落下の力も借りかなりの速度が出る。


 突然向かってきたので焦ったのか雑な射撃が飛んでくる、その殆どが当たりもしない射線だがマグレで当たるものも軽くいなす。




 ……そもそも当たってもどうということはないのだが、痛いものは痛い、当たらずに済むならそれが一番である。






「悪魔め!女神様の威光を思い知れ!」




 そう言いながら銃を乱射してくる




「待って待って!君一人?こんなところで何してるの!?」




 打ち尽くしたのかリロードしている。






「そうやって脅しても仲間の位置は言わないぞ!騙されないからな!」






「………………えーっと、仲間いるんだね…?」






 しまった!といった表情をしている……


 これが演技ならアカデミー賞を進呈したい。






「あっと、俺には争う気はないんだけど、駄目かな?」




……そもそもリロードもガチャガチャしているだけでなかなか出来ていない。


 よく見ると"男の子"と行った表現が一番しっくりくる容姿だ。吸血鬼では無さそうだし実際若いのだろう。








「もう!なにやってんのよ!」


「悪魔に誑かされてんじゃないだろうな!」


「ねぇ、逃げた方がいいんじゃないかなぁ……?この人強そうだよぉ……」






四方から少年少女達が集まってくる。奇襲もしないんだね…






「こんにちは、僕はマナトっていうんだ。君達はここでなにをしているのかな?」




 キャーキャー言いながら悪魔の誘惑だ!惑わされないようにしなきゃ!気をしっかりもて!


 などなど凄い言われようだ。気の強そうな単発の少年が切りかかってくる。




 大鎌「トゥド・センザ」で受けると誤って破壊してしまいそうだと思い、爪を伸ばし迎撃する。




「いやぁ…出来ればこ、っ!




 出来れば殺したくない。そう言いかけた最中、闇から槍による刺突が後頭部を襲う。咄嗟に首を捻り避ける。


 かなりギリギリになってしまい耳に傷ができる。




「貴方達!吸血鬼見つけたらすぐに知らせるように言ったじゃない!何してるの!!」




 シスター風の女性が槍を構えている。こちらの様子を見つつ生徒たち?から俺が離れるようにジリジリ位置取りしている。






 襲う気はない、と口を開こうとしたが刺突により喋れない。正確に血臓と頭部を狙ってくるので喋りにくい。


 シスター風の女性が子供たちを後ろにすると子供たちは騒ぎ始めた。






「先生!僕達ならやれます!」


「他のクラスの人は吸血鬼倒したって話よ!先生でも横取りさせないわ!」


「僕達が一番成績が良いのに!吸血鬼なんて楽勝だよ!」




  「だまらっしゃい!!」




 ピシャリ、といった表現が正しいと感じるほど見事な一喝であった。流石の生徒たちも黙ったようだ。




 さて、どうするか。戦えば余裕で勝てるだろう。だが必要を感じないのだ、話さえ聞いてくれれば丸く収まる気がするんだが…




「あのー……」






 問答無用!と言わんばかりの横薙ぎである。シスター風の衣装の女性にここまで無碍にされるとなるほど、悪魔になった気持ちだ。イラッとするのも仕方ないだろう。






 右足を前に出す。突然の攻勢に驚いたのか槍を突き出してくる。


 体を少しだけ捻り躱し、伸びきった両手の間に曲がった刃を差し込む。




 あとは簡単だ。刃を槍の柄に絡め上に振り上げるだけで呆気なく槍が上に吹き飛ぶ。




「ぇ、?」




 絶望、といった真っ青な表情で飛んでいく槍を見つめている。致命的だ。


 また反抗されても困る、少しだけ血を吸い脱力させようと鎌の先端を上に伸びきった腕に刺す。


 生徒たちも先生が負けるとは想像もしていなかったのか、黙り青ざめている。






「…おい、トゥド・センザ?……おい??」




-すまない、どうやら人間の血は吸えないようだ……?-




なんでお前が疑問形なんだよ!!




「はぁ……いいや。あの、話聞いてくれませんか?」

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