その後



「結局全てを救えたわけでしょ?マナト君は正しかったよ」




 エアクラさんはそう言ってくれる。実際今考えてもこれ以上の結論はでない。






 ゾリデさんはそれでも同胞を傷つけるのは何とも言えないといった感じであったが結局それ以上の案が出てこず何も言えずにいた。




 分からないのだ、全てがうまくいきこれ以上の結論は出てこない。ではこれ以上は無いのではないか。




-これだから吸血鬼はよくないのだ-




そう言う声が聞こえた気がするが、無視した。










────────




目が覚めると寺院の治療所に寝ていました。




「んん、………ここは……?」




 バタバタしているとゾリデ様がお水を持って来て落ち着くようにと仰りました。




「落ち着いたら話してくれんか?」




 えーっと、たしか花畑で待ってて襲われて、マナト様が助けてくれて……


マナト様が戦ってくれたから安心しちゃって…




「そうだ!マナト様は大丈夫ですか!?私人質に取られちゃって!!」




「お、落ち着け。全員無事だ!」




 人質に取られたあとは覚えていません。


ふっ…と意識が落ちてしまい気がついたらここにいました。








 ゾリデ様がその後何があったか話してくれました。


お腹に……貫通ですか………?


 慌てて見ると特に問題はありません、ドッキリと言われたら信じてしまうほど綺麗に塞がっていますし…




「服を汚してしまってすいません……?」




「………お主は本当に…」








───────────────






 その後一人で部屋に戻った。


 キレイに清掃の行き届いた様子が見受けられる。枕元には空の花瓶がおいてあり水も入っていない。


花瓶以外はいつもと変わらない部屋だ。




「俺、間違ってたかなぁ……」




-いや、選択は間違っていなかったと思いますよ


……ですが分かっていても出来ない人のほうが多いのでしょう-




戸惑いもせず実行出来た。それ以外に無いと分かっていたからだ。


最終的にはスンが安全ならいいと思っていた。




「判断が遅れたらその分危なくなるじゃん?迷ってる暇はないと思ってさ」




-でしょうね、正直驚きました。親しい人の腹を必要と分かってても貫けるとは…


場所を間違えたりすれば即死です。それに私も協力するとは言いましたがリスクもありました-




「それは…確かに。まだお前のことも良くわかってないしな」






-ええ、貴方が歴戦の戦士だというなら理解できます。


やるしかなく賭けるしかない。間違っていません-




ただ、と間を起き喋りだす




-貴方の場合は違う。恐らく大事なタガが元々ないのでしょう-






 否定は……出来なかった。否定できるだけの材料がないのだ






「記憶がないからなぁ、言い返せないわ」




 苦笑いながらそう返した。




-どうやら常識は記憶喪失になっても欠落するものじゃないようですよ?元々イカれてるんですよ、貴方は-






 はぁ、イカれててその理由も分からないとか完全に狂人じゃないか


 神がいるなら言ってやりたい、サボるなと








-狂吸血鬼、スンには謝りにいかないのですか?ほら、そういうところですよ-




やっべぇ、抜けてた!気を使えるヤツ、いや武器だな!






-はぁ…-


そう言いながらカシャンと刃が折りたたまれた














「失礼しまーす……スン!起きたのか!?」


スンはお腹を擦りながら布団に座っていた




「マナト様、その説はご迷惑を…」




「ごめん!お腹思いっきり刺しちゃった!跡になってない!?」




 女性を傷物にしてしまったら事だ




「あはは……これでも吸血鬼ですから!!


……とは言っても第八ですけどね…」






 ぺらっと服をめくり細く白いお腹を見せてきた。


 照れてしまい目線を反らす




「私なんかで照れてるんですか?」


笑いながらお腹をしまった。




「あれ、マナト様。耳が切れてますよ?」




触ると確かに端が少し切れている……小傷にしては治りが悪いな…?普段ならすぐに治るはずだが…






ガラッと扉が開く音がしたので振り返ってみるとそこには白衣の女性がいた




「あ、カシュさん。お疲れ様です。」




「お疲れ様。スンちゃん、体悪いところない?お腹もう大丈夫?」




「ありがとうございました。おかげでもう元気です!そろそろ仕事に戻らないと…」




カシュさんがそばに来て、立ち上がろうとするスンの肩を抑えた




「大丈夫!ゾリデ様が今日は一日養生してるようにって言ってたから!諦めて私に甘やかせなさい!」






 カシュさんは面倒みのいい人なのだ。いや、良すぎるのだ。


 この寺院では基本的に怪我をするとここの医務室に来る。大怪我でなければカシュさんが治療をするのだがとにかく甘やかすのだ。




 俺はゾリデさんとの戦闘でしか怪我をしなかったし、すぐにゾリデさんが治してくれた。吸血鬼はすぐに自然治癒が始まるが【慈悲】の血族能力で治したほうが傷も残らず早いのだ。




 なので俺はカシュさんのお世話になったことはない。が「恥ずかしいくらい甘やかされる。それが段々慣れてくるのが怖い。駄目人間になりそう」と男女問わず口を揃えてみんなそう言うのだ。




「あれ?マナト君耳切れてない?」




「そうなんですよ、なんかここだけ治り遅くて」




「吸血鬼の血で攻撃された?自分以外の血があると治り遅くなっちゃうんだよねー」




………あ、多分血の茨みたいのに巻き付かれてたわ。その時棘で切ったかなぁ?




「え!?そんな無茶したの!?」


「マナト様…申し訳ありません……」




「スン、大丈夫だよ、本当に大したことなかったんだ!」


 耳の他は何処も怪我してないはずだ。人間でも大したことない傷だよとスンに説明しているとガチャガチャと色々な機械を持ってきたカシュさんが後ろでワタワタしている。




「マナト君!全身検査だよ!!血圧と脈と……あとは成分検査も……」






 カシュさんは見た目は犬系女子で可愛らしく甲斐甲斐しく面倒を見てくれるならいいじゃん!男の夢じゃん!


 と言っていた俺も皆が遠い目をして肩を叩いてきた意味を思い知らされるとはまだ知らなかったのだ…

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