名もなき集落
「おはよう、エアクラさん。」
あの後テントをはり朝日をともに見ながらエアクラさんと寝た。
夕日をと共に起きる生活も少しずつ慣れてきたものだ。
エアクラさんがテントの片付けをしてくれている間に血力の修行をする。
実は寝るときなど少しずつ練習している、成果が出ているのか簡単に操れるようになっていた
腕に血力を込め小石を投げる。軽く投げつけただけだが木にめり込む威力だ。
「マナト君、だいぶ上手くなったね。そろころ羽の練習していこうか」
エアクラは枝葉を爪で切りながら歩いている。
「そうすれば移動も早くなるし早めに覚えたいな。」
「マナト君、焦りは禁物だよ!今でも異例なくらい早いのに…それに時間は別にいくらでもあるんだしゆっくりで良いよ。人間の時の癖かな?」
確かに漠然と早くしなければと焦っていたが意味はなかった。
楽しいからやっているのもあるが。
それから2日くらいかけて大雑把な力は把握できたし、羽も出せるようになった。
夜の森は飛んでも人間には見えないから練習には良いとの事で飛行練習をしているがなかなかうまく飛べない、何度も墜落しているが吸血鬼の体は頑丈なようで怪我はしていない。
「そういえばこれから行く場所はどんなところなの?」
「いろんな血族が集まって暮らしている場所よ、村ってほどじゃないし名前も特になかったはず…
戦いが嫌、隠居したいとかで自然と集まった集落だから本当に平和な場所よ
血液は定期的に献血の名目で下に降りてるみたいね、力仕事とかお手伝いしてる代わりに献血してもらうって人間にも好評だった気がするわね……まぁ昔の話だけどみんな吸血鬼で長寿だし変わってないと思うわ」
まぁ派手に人間を襲って吸血しているとならもっとニュースとかになっているはずだし、献血とか多いのはそういった理由なのか。意外と共存できているんだな。
「エアクラさん、俺も飛べるようになったしここからは飛んでいかない?
まだ不安定だけど落ちても別に怪我しないし練習たくさんしたいし」
エアクラさんは悩んでいたが小声でまぁ怪我しないしいいかぁと呟き荷物は全て持ってくれた。
変なバランスで練習して悪い癖を付けたくないとのことだった。お世話になってばかりで申し訳ないと伝えたら気にしないで!との事だった。
空は遮るものもなく一直線に飛べるためグングンと進んでいけた。たまに気が少なく開けた場所を見つけるたびに休憩や野営し進んでいく。
慣れて空中で1回転できるようになったのは集落が遠くに見えてきた頃だった。
黒い点がこちらに近づいて来るのが見えた、エアクラさんは器用にも荷物を持ちながら両手を上げて降参のポーズをしている。
剣を片手に持った吸血鬼だと気付き俺も真似をする
「こんばんは、いい夜ね。敵意はないわ、入れてくれると助かるのだけど。」
エアクラが会釈をする。
「…………あぁ、エアクラさんか、変わってないないですね。」
「あなたもね。彼はマナト君、眷属よ」
紹介されたのでお辞儀をする
「マナトです、吸血鬼になったばかりなので右も左も分からず、ご迷惑をおかけしたら申し訳ありません。」
「これはご丁寧に、私はアスラです。この村の警備隊長をしています。隊長といっても人数は5人しかいないんですけどね」
笑いながら握手をした。黒髪短髪の男の人だが人当たりは優しく安心した。
アスラの案内で村に降り立つ。エアクラはカバンを開けお土産と言って何本かお酒を渡していた。
見渡すが50人は以内程度の小さな村落といった感じだ。建物はログハウス、畑もありスローライフを送るのには良い環境だろう。だがそれとなく緊張感が漂っている。よそ者が珍しいのだろうか
「助かります。最近じゃなかなか手に入らなくて困っていましたので」
「ピリついているわね、なにかあったの?」
どうやら"神聖騎士団"なる連中の目撃情報があるらしい。すぐにどうこうなるわけじゃなさそうとのことだ。
エアクラさんとアスラさんの話は思ったより長くなりそうなので周囲を見渡すと子供がいた。10歳程度の男女だ。こちらを伺うようにチラチラ見てくるので笑顔で手を振るとこちらに駆け寄ってきた。
「こんばんわー!お兄ちゃん外からきたの!?」
「こんばんわー!お兄さんどこから来たの!?」
「東京……っても分からないか、そうだよ、外から来たんだよ。」
しばらく質問攻めにあっているとエアクラさんが戻ってきた、空き家を借りれるそうだ。
「お兄さん何しにきたのー??」
女の子がそう聞いてくる
確かに何をしに来たんだろうか…?核心をついた質問に考え込みそうになってしまった。
遊びに来たんだよ、と伝えると次は男の子が
「じゃお兄ちゃん僕達と遊ぼうよ!」
と誘ってくる。遠くでアスラさんが首を振るのが見えるので断った。
「君たちごめんね?マナト君は私と遊ぶ約束しちゃたからまた今度、ね?」
そう言ってエアクラさんが腕を組んでくる。助けてくれるのはありがたいが腕まで組む必要があったのか…?照れるのでやめてほしい。
…………いや、ワザとだ。横目で見るとニヤニヤしていた。遊ぶどころか遊ばれている。
子どもたちは、じゃあしょうがないねーばいばーい!と元気よく腕を振り回し走り去ってしまった。
「じゃあマナト君はアスラ君と稽古をしましょうか!教えるのが私だけだと偏っちゃうでしょ?
じゃ、行ってらっしゃい!お風呂ためておくからね!」
さながら修行編…か
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