今後


夕日が眩しく目が覚めた。真っ白なベットに寝かされている。


時計を確認するともう17時を回っている、疲れていたのだろう。


喉が渇いたのでリビングへ向かおう。






「マナト君おはよう!ご飯できるから座って待っててねー」


エプロン姿のエアクラが調理しながら振り返る




今更だが冷静に周りを見渡すと生活感はあまり無い。最低限必要なものと趣味なのだろうか、ワインセラーがあるくらいだ。あとは昨日カイトにも渡していた血液パックのダンボールくらいだろうか。




「マナト君ごめーん。飲み物用意してもらっていいー?冷蔵庫に入ってるから。開けていいよー」




 ご飯を作ってもらってただ待っているだけでは少し居心地が悪かった、断る理由もないので準備しに台所へ行き冷蔵庫を開ける。ペットボトルのお茶を取る




「グラスは下の棚に入ってるからね」




グラス類は潤沢にあった。一般的なソフトドリンクのグラスを持っていく。




グラスを置くと台所には出来たであろう料理が並んでいることに気付く




「料理、持っていきましょうか?」




「ありがとうねー、お願い!




料理を持っていく


「そういえば敬語じゃなくて良いよ。もう家族なわけだしね」


聞き捨てならない言葉が聞こえた、もしかして昨日の夜過ちを……?




「あぁ、そっか。眷属って子供的な意味が強いの。だから血族とか言ったりするんだよ?」




なるほど、一族的な意味になるのか。




「分かったよ、エアクラさん。でも慣れないからたまに敬語になっちゃうかもしれないけど許してほしい」




 ゆっくり慣れていこうねーと言いながらエアクラさんは笑っていた。さんもいらないと言われたが流石に気が引けると返したら不満そうであった。


 机の上には和食が並んでいた。味噌汁に漬物に鯖の味噌煮。ご飯は雑穀米だ。シンプルだが手間のかかるものが並んでいる。食欲をそそられる、好きなメニューだ。




「私がいいって言ってるのにー……、さぁ食べちゃいましょうか!」




 当然と言ったようにとっくりとおちょこを机に置きながらそういった、お酒好きなのだろうか。




「和食に合うものを用意したんだけど…飲む?」




などとお伺いを立ててくるが確信犯だろう。もう目の前におちょこが置かれ注ぎながらそう言ってくるのだから。




「頂きます……エアクラさんお酒好きなんだね」




とっくりを預かりエアクラさんのおちょこに注ぐ




「日本酒は普段あんま飲まないけどねー…………ん、久しぶりに飲んだけど美味しいね!」




「「いただきます!」」




家庭的な味で美味しい。




「これからどうしようね、マナト君が良ければ少し旅行でもしない?


吸血鬼のこともっと知ってほしいの。実は集落が各地にあるんだよね」




 確かに知らないことが多すぎる、俺も一人じゃ何をしていいか正直分からないので途方に暮れていたところだった。


 人生において大きな選択になる気がする。が、実際の所今の俺は住所不定、無職、記憶喪失だ。何もできない。エアクラさんもいい人だし断る理由がなにもないのだった。


なにせ交通費すら良くて片道分しかないのだ……




「とりあえずは北海道に行こうか!広いし人間も適度にいる割に未開の土地が多いから練習にはちょうどいいし!飛べるようになるまで落っこちちゃうと人間にバレちゃうしねー


あ、飛行機代は私が出すよ!」




申し訳無くなってくる、完全にヒモ男だ。




「いいんですか…?絶対に返しますんですいません…」




敬語になってるよ!!と言いながら食器を片付け始めるエアクラさん。慌てて手伝い始める。




「ゆっくりしててもいいのに、じゃあ早速明日から行きましょう


この後はお腹が落ち着いたら買い物行こ!デートだね!」




 エアクラさんはワクワクしながら鼻歌交じりに洗い物をしている。手伝うと言ったが断られてしまい「煙草でも吸ってゆっくりしてなさい!」と言われてしまったのでベランダに行った




 椅子と灰皿が用意されていた。昨日はなかったように思う。


エアクラさんは吸わないだろうからわざわざ用意してくれたのか。本当に気が利くというかなんというか…


苦笑混じりの笑みを浮かべながら煙草に火をつけた、もう日は沈んで真っ暗になっていた。






「どうすっかなぁーこれから。どうなるんだろうな」




煙と共につぶやきが夜に消えていった

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