逃走

俺、エアクラ、カイトの三人で逃走している


ローディとの戦闘で目立ちすぎたのでもっと敵が集まってくるかと思ったが全然来ない


カイトによると「あんな戦闘あったら巻き込まれないように避難するっすよ、普通」とのことだ


それにローディが撤退命令を出したのではないかとも言っていた


ボス、みたいな感じなのか




「ここまでくれば飛んでも大丈夫そうね、カイト君は飛べるよね?」




「もちろんっス!あ、兄貴は俺が協力しましょうか?」




じゃあ行きましょうか!とエアクラにお姫様抱っこをされた!


人生初のお姫様抱っこはする側じゃなくてされる側。しかも女の子にだったのだ………




急に足をすくわれ瞬間で飛び立つエアクラ


急激なGがかかり驚く間もなく廃ビルがグングンと遠ざかっていく






「うわぁぁぉ!!怖い怖い怖い怖い!!無理!本当に無理!!」






 ジェットコースターなんて比にならない速度で上がっていく


安全バーの存在がどんなに心強いか思い知らされる


なにせ今この状況を支えているのはエアクラの細い腕2本だけなのだ




ある程度上空まで飛んだエアクラが止まった


カイトが慌てて追いついてくる




「落ち着いたかな?ゆっくりと周りを見て、下は見ないようにね。」




 途中から目を閉じてしまっていたがゆっくりと開ける


なるほど、これを見せるために止まってくれたのか


廃ビル群の先、繁華街があるのだろう。キラキラと灯りが明滅している都市がそこにはあった


高層ビル群もあり都会的である、東京郊外なのだろう。


 行き交う光の点は車だろうか、絶えず血管のように動いている。ガラス越しではなく、飛行機のような騒音や立つ地面もない、まさに浮遊している状態は想像を絶する体験だった。


繁華街が下にあるのに音は羽ばたく音だけ、街の喧騒も聞こえず上空というのは想像よりも静かなものであった。




「夜風が気持ちいいでしょ、そのうち自分で飛べるようになるから一緒にお散歩しようね」




頷きつつ下の人から見られないか不安になったが、都市部の空は狭く見上げる人も少ないのかと納得した。




「じゃあ行きましょうか!ゆっくり飛ぶから楽しんでね。」




鼻歌交じりに空中遊泳を再開したのだった、都市部に接近しているがどこに向かっているのだろうか




「私の家に一度行きましょうか。汚れちゃったしお風呂に入りたい!」




「本拠地っすか!?良いんですか!?」




「本拠地なんて立派なものじゃないよ、本当にただの私のお家


さ、もうそこだよ。」




 徐々に高度を下げていき高層マンションの最上階ベランダに着陸した。時間は長くなかったが地面が恋しい。空も良かったが地面は安心する。


ただいまー、どうぞ上がって!と言いながら窓ガラスを開けるエアクラ。鍵はかかってないようだが確かにこんなところから入れるのは吸血鬼だけだろうし窓ガラス程度では防犯として意味を成さないのだろう。




「はぇ〜、めちゃくちゃ広いッスねぇ。今からだけど夜景もキレイだし」




「いや、さっきまで空を飛んでたじゃん」


違いないっすねとお互い笑いあった




「説明長くなっちゃうから適当に座っていいからね〜」


頷くと台所からなにかゴソゴソと聞こえる。






「二人とも赤ワインは飲める?」


 エアクラがそう言いグラスとボトルを持ってきた


俺とカイトは頷きグラスに赤ワインが注がれる


色は違うはずなのに何故か血液を思い出し、喉がなる








「じゃあゆうき君、説明するね」


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