決着


「墜ちて」


 エアクラが指を下に振ると刃が棒に沿って落ちてきた、ギロチンだ!








 ローディは飛翔力を維持できなくなり落ちた。翼は空中で吸血され尽くしたのかチリになっていく。


右肩、切れた翼の断面からメラメラと炎が出ていたがすぐに収まり治っていた。流石に翼は治せなかったのか傷口が塞がっただけだったが。






「血力を吸う血族か、思ったよりも遥かに厄介だな」




「ローディ君短期決戦タイプでしょ?相性が悪かったね。」




「いや、純粋に力が及んでいない。手心を加えているのが私でも分かる、存外優しいのだな、王よ」




「そうよ?私は皆に優しいの」




「はっ、吸血鬼が良く言ったものだな。では甘えさせて頂こう」




 ローディはそう言い立ちながら右腕を引き力を溜め始めた。


その姿はまるで金剛力士像の様であり離れている俺ですら肌がチリチリと強大な力を感じる


ローディの後ろの炎の輪が半分ほどになっていた。バチバチと唸りながら更に減っていく。


エネルギーの残量を示しているのだろうか。




「兄貴、ヤバイっす、逃げましょう。洒落にならないっすよこれ!!


ローディ様は【暴虐】の中でもめちゃくちゃ武闘派なんです!


エアクラさんが戦ってるからイメージつかないかも知んないすけどヤバイ強い人なんです!そんな人の全力の一撃なんてどうなるか!!!


ミサイルが落ちてくるって言われたほうがまだ怖くないっす!」




「カイト君の言っていることが正しいよ。でも私の後ろに入るときは残念ながら不正解ね」






バヂン


ローディの炎の輪が燃え尽きた、常に発されていた熱波が消え去りあたりが暗くなる


ローディは唸りながら拳を突き出す




「行くぞ!王よ!」






      "凝結"「焼失」






「そうそう、凝結っていうのはね?血族の貴族以上がみんな使える能力の事!」






 太陽と見まごうほどの火球が迫ってくる中エアクラはこちらを向き説明してくれる


いや、後ろを見てくれ!標識なんて触れる前に液体になってるんだぞ!?


逆光になっていてエアクラさんの表情は分からないが怪しく赤く光る眼は笑っていたように見えた。






「ここまで付き合ってくれたローディ君にはご褒美!個人のスキルの"最終進化"を見せてあげる!」






前に向き直り右腕を高く上げた。ローディと違いエネルギーの集まり方が地面から這い上がるかのようなヌルリと生暖かい空気のように感じた。






「みんな、よく見ておくように」


右腕を思い切り振り下ろした






      "存在証明"「「 屠殺 」」






 突然目の前が真っ暗になったような錯覚に陥る、エアクラの後ろ姿すら朧気に見える


太陽のような大きさの火球が小さくなっていく


エアクラがゆっくりと一歩、また一歩とゆっくりと近づいていく。誰も動けないでいる。ローディも逃げることすらできず顔が青ざめている


火球は徐々に小さくなり飴玉程度の大きさになっている。


エアクラは、火球に向かい、妖しく微笑んだ




「いただきま〜す!」




 パクっといった擬音が合いそうな気軽さで、間延びした声でそう言い火球を一飲みした


あまりの存在感に視線がエアクラを捉え離さない。生存本能が目を離してはいけないと警鐘を鳴らす。






「うん、濃厚で美味しいね!ごちそうさま。」




 エアクラはパンケーキを頬張った女子高生のような顔で微笑む


冷や汗が遅れながらどっと流れ落ちる。


エアクラは満足したのか牙のチラつく唇をペロッと舌で舐めている。


あまりの恐怖で汗をかくことすら刺激してしまうのではないかと思ってしまうほどだ。


エアクラはよく見ておくようにとの事だったが何が起きたか全く理解できない。






それは対峙していたローディも同じだったようだ。


あれだけあった筋肉は痩せ過ぎなほどガリガリになり肌の色も普通になっている。


膝から崩れ落ち恐怖の表情を顔に浮かべている。






「……………ごめんなさい、やり過ぎちゃったね。大丈夫だよ、安心してね?殺すつもりは一切ないのよ…」




エアクラは寂しげな表情を浮かべている




「挑んだのは俺だ、覚悟はできている…」




「教育に協力してくれたしいいのよ。見逃してあげる。


……ブレンシュによろしくね。」






「我が王を知っていたのか……承った、感謝する」






エアクラは懐かしむような顔をしている




「じゃ!逃走の続きをしようか!」




膝の力が抜け座り込んでいた俺に手を伸ばしてくるエアクラ


圧倒的な力を前にして恐怖はある、だが妖しい笑顔や無邪気な表情に何故か魅了されていたのも事実だ


手を握るのが照れくさくなり自分で立ち上がった、エアクラは察したのかふふっと幼い笑顔で微笑んでいて、頬が熱くなった

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