吸血鬼とは

彼女は丁寧に、そしてわかりやすく端折りながら説明してくれた




曰く、吸血鬼とは


 人の血を吸い、怪力無双で、特殊な能力をもち、なかなか死なず、人類ではあるが人ではなく、空想の生き物ではない


 吸血鬼を吸血鬼たらしめる臓器、血臓けつぞうが心臓の隣に存在するらしい


血臓から吸血鬼独特のエネルギーが生産され全身に送られ吸血鬼としての特性が発揮されるらしい


使い切れば人間以下の能力しかないそうだ、本当に限界まで使うと生命維持すら出来ないか弱い生物だとか




 人間を吸血する行為が食事であり、人間の血液を使い血臓がエネルギーを生産する


ちなみに人間を吸血中にこちらからも血を流し込むと吸血鬼になるそうだ




 正直に言うとまだ信じ切れていない、ありがちな設定だとも感じ、生返事をしてしまった




「ありがちな設定だと思ったでしょ?逆なの、人間が私達の事をよく知っていて伝承されているのよ」






 なるほど、吸血鬼が昔からいるなら口伝で伝わったり物語にして後世に危険や対策を伝えるなどはよくある話だ。


だが分からないことがひとつだけある、なぜ"俺"が吸血鬼になったのか。理由が見つからない、というか思い出せない




「そうね、実は…」




 申し訳無さそうな顔で話し始めた瞬間、満月のきれいな夜が突然、火柱によって赤く染まった




「ごめん!途中だけど移動しよ!急いで!」




そう言って彼女は私の手を引いた




「何が来るんですか!!今の音は!?一体何が起こってるんですか!!」




「今はとにかく付いてきて!後でちゃんと説明するから!」




 遠くから数人の、こっちだ!!や、逃げるな!等の怒号が聞こえてくる


間違いなく堅気の人間では無いだろう、そもそも現代日本で爆弾??火炎放射器??で武装している時点でどう考えても正気じゃない。




 階段を降りていると下に筋骨隆々の男性がいた


いたぞ!!そう叫びながらこちらに手のひらを向けてきたと同時にゴゥッ!という音と共にこちらに火炎放射が飛んでくる!




 エアクラが頭を抑えてくれたおかげでしゃがめたから紙一重で避けれたが当たれば確実に大火傷は免れない




冷や汗を拭う暇もなく次が来る!


「後ろに思いっきり飛んで!」




 たしかに階段を降り始めてまだ2段目くらいなので飛び退けば廊下に行ける、逃げる場所が増える


なるほど、などと思いながら足に力を目一杯込め飛び退く


ミシィっと音と共に飛ぶ、通路に出たが、出たのは良いが地面が離れていく一方だ!飛びすぎだ!!


通路の窓ガラスを割りながら外に飛び出てしまった






「あ。忘れてた。」




 そうポカーンとした顔で言ったエアクラさんの声だけがやたら耳に残った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る