人ではないナニか
「Happy Birthday、新しい世界へ、夜の世界にようこそ!」
!?
意味がわからない!そもそも俺の誕生日は今日ではない!
「いや!私の誕生日は……………誕生日……」
誕生日はいつだったか
そんな簡単なことが思い出せない
…………いやいや、寝起きといえそんな簡単なことが思い出せない?
確かに25超えたあたりからたまに年齢は27?28?どっちだったっけ?となることはあったが
今は28歳、それは間違いない
で、だ。誕生日はいつだったか。
春?夏?秋?冬?
………それすら思い出せない
頭でも強く打ったのか?記憶障害、もしくはパニックか?
「そうだよね、混乱するよね?思い出せないのもしょうがない事だよ」
少女が申し訳なさそうに言い、俺の前まで移動ししゃがみ込み顔を覗き込んでくる。
目が合う、幼さが残るが綺麗な顔立ち、暗い緑の瞳、化粧ではない綺麗な長いまつげ、真っ赤な唇
パニックになっているのについつい魅入ってしまう
………しゃがみこんだ際に膝上丈のスカートについつい目が行ってしまったのはしょうがない…
「ふふっ、少し落ち着いたかな、まだ混乱してると思うし説明はもうちょっと後にしようか?」
「…………ありがとうございます、もう一本だけ煙草を吸ってからでいいですか?」
いいよ、と答え隣に移動してくるエアクラさん
馴染みがない人が隣に来たら一瞬身構える
察したのだろう、少し離れたところにちょうど腰くらいの瓦礫がありそこに腰を掛けた
少し高かったのかちょっとジャンプして座った、揺れる若草色のツインテールを眺めながら珍しい髪色だなぁ、根本までキレイに染まっているし美容に気をかけているのかな?等と考えていたときに気づいた
不思議な事に無言が気まずくない。むしろ安心感すら覚える
この場においてはいい事だが見ず知らずの女の子といて気まずくないのだ、昔にあったことがあるのか…?
灰が落ち、タバコも吸い終わったタイミングで口を開いた
「おまたせしてすみません。だいぶ落ち着きました
ところで状況が飲み込めないのですが…」
申し訳そうに彼女は口を開き説明してくれた
まず驚いたのは彼女が吸血鬼であり俺も吸血鬼になったそうだ
ふざけているとしか思えない
それで今思い出せないのは吸血鬼に生まれ変わった弊害なのだそうだ!
簡単に説明すると肉体が変化する際に脳の記憶分野に齟齬が起き一部記憶が消失する事が多いとのこと、むしろ残っている吸血鬼のほうが少ないから安心してほしいと困り顔で笑っていた
「まぁそうよね、信じられないよね
これで信じてくれるかな?」
そう言って彼女は袖をまくった
そこには何もない、きれいな白い肌があるだけだ
てっきりリスカ跡でも見せてくるのかと思った、なんて内心で笑おうとした次の瞬間
「何やってんだアンタ!!」
ガシュっという音とともに包丁で自らの腕を切り落としたのだ!
リスカなんてもんじゃない!間違いなく出血多量で死ぬ!
血が大量に流れ……
「流れて………ない……?
うっ………腕が動いて……」
切り離した腕が蠢いている
「いてて、ビックリしたでしょ!どう?これで人間じゃないって信じてくれた?」
腕を拾い、断面をつけながらそう言う
イタズラが成功した子供のような無邪気な笑顔を見せながら腕を見せてくる、何もなかったかのようにキレイな肌に戻っている
これで選択肢は2つになった、これが夢か彼女の言っていることを信じるか、だ
……あぁ、俺と頭がおかしくなったって選択肢もあるか
「ごめんって!落ち着いたら説明するね」
そう言ってペットボトルのお茶を差し出してくる
お茶の味はもう分からなかった
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