醜聞夜半彼我境界読本
槇灯
第1話 よもつひらさか
超えてしまった線の向こう。
戻るためには後ろに下がればいいはずなのに。
一切合切どうして心が言うこと聞かない夜のくに
ここが私の黄泉平坂
爪立て壁を引っ搔くように 割って捨てたい濡れ鏡
覗く醜女が見えないように 切り捨て御免な裏小路
慎ましやかの顔が爛れて 所有格まみれ
別途で罰跋(バツバツ)
言葉にできない 括弧、不許可の意
這い出てまろんだシットのシック
突き放せば 余計な結句
用意、始めと自己弁論に三千里
ずるずるずると血音が滴る
布団を頭まで被って、生あたたかい
息の係る後ろ首
よその御宅の草木が丸円(マルマル)
君を想って毟りとる 我が世何処と毟りとる
くだってくだらん さいのはて
ガス栓捻り 腐臭をまやかし
次々我欲のかざぐるま
ひとの心のままならならぬ
嘆く言の葉 根の国に
打ち捨て 打ち捨て 黄泉平坂
振り返りみた真影の廊に 醜さ己の姿見た
逃げて追われてあくがれて
焦がれ請われてこの道往きて
どちらも同じ蛇の尾を踏んで踏まれて穴の上
ようやく身の程を知る
内に潜むが黄泉平坂
ただあなたの眼差す自分がせめて綺麗なままであればいい、なんて気持ちが邪魔をして。
ずっと踵を返せない。
醜聞夜半彼我境界読本 槇灯 @makitou_fuko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。醜聞夜半彼我境界読本の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます