第7話 魔法科

オリアーナさんとの今後の話し合いを終えて次の日も学校を終えてからティアの姿でオリアーナさんのもとへ向かった。もちろんフードを深くかぶり周りに騒ぎが起きないように。というのも学事の契約について話を詰める必要があったからだ。

そしてその契約の内容としては公演を行うのは2週に一回もしくは3週に一回でいいとのこと。あまり頻繁にやりすぎると珍しくなくなり価値が下がるんだとか。

そして報酬についてなのだがこれが本当にびっくりした。

一回の公演につき金貨にして120枚。それに上乗せしてチケットの売れ高の一割分、貴族や商会からの援助の5割がティアの手元に入ってくる契約だった。

チケットの売上や援助についてはどのくらいになるのかわからないが金貨120枚の価値くらいはわかる。一人暮らし程ならば一生遊んで暮らせるくらいの金額だ。

さすがにもらいすぎなのでは?とオリアーナさんに聞いてみたのだが、


「ギルディアーナはその三倍は少なくとももらってるさね。まぁ汚い金も入れての話だがね」


歌姫ってすごいなぁ。

ていうか僕(ティア)がなれたなら僕より歌がうまかった母さんならとんでもないことになっていたのではなかろうか?そんなことも考えた。


大きな契約内容としてはそんなところで細かいところの説明を受けて帰宅。着替えなどについては帰りは結界を使い着替えなどを行ったのだが、行きについてはノアで結界類魔法は使えないので仕方なくまた女子トイレに向かうことになった。

前回のように誰かに見られるわけにもいかないので魔力探知にて周りに誰もいないことを確認した。どうして前回もこうしなかったのだろうか完全に忘れてた。

そうして僕(ティア)は正式にオリアーナ歌団と契約を結んだ。


そしてその翌日、最近の目まぐるしい日々に落ち着きを見せゆったりと学校生活を送っていた。

今日までの授業時間といえば正直言って授業らしいものは一切なくカリキュラムの説明やこの学園についてのことばかりでオリエンテーション的だった。

しかし今日から全員必修の魔法科が始まる。

僕とティア、それにパナメラで待ち合わせして学校に登校していたのだがそこに水を差すやつが現れる。


「おい、パナメラ! どうしてそんな貴族でもない庶民と一緒にいるんだ!」

「そうだそうだ!」

「貴族として恥ずかしくないのか!」


「またお前らか…」


「ノルド―君…」


そう、この三人組の中心人物であるノルドー・ゴルリアン。パナメラと同じ侯爵家の人間でクラスは第四階梯にいる。僕たちがパナメラと一緒にいるようになっていたのはつい最近のことなのだがやたらパナメラや僕たちに絡んでくる。

一応この学園内では貴族特権を振りかざしたりするのは禁止されているのでパナメラもあまり強く出れず友人として窘めるくらいしかできていなかった。そしていくら貴族特権を使うことが禁止とはいえそれは学院内での話であり外へ一歩出れば貴族である。このノルドーも下手に侯爵家の人間であるため他の者たちも大きく出られない。ちなみにパナメラとノルドー自体はたいして面識はなく子供のころのパーティーであいさつしたことがあるくらいだそう。


「どうしてそんなにも庶民を毛嫌いするわけ?」


一緒にいたアリルも苛立たし気にノルドーに問う。


「そんなの決まっているだろう、貴族とは字の如く貴い族なのだよ」


自慢げに答えるさまはそのことを全く疑っていないようだった。


「そしてその貴族である私やパナメラがどこの生まれかもわからん奴と一緒にいるなどありえんだろう?」


この言葉に取り巻きの二人も賛同するような言葉を投げかける。

聞いたアリルはというとくだらないとでも言いたげな表情で会話を閉じた。


「特にそこのお前」


ノルドーが見ているのはもちろん僕のことで


「なぜおまえのような見るからに庶民のような奴が私より上の第五階梯クラスにいるというのだ」


さきほどのアリルの表情をほうふつとさせるような顔で見下してくる。

僕のいる第五階梯クラスは平民は二人しかいない。そして僕はそのどちらでもない。皆に知られていないだけで籍の上では僕も貴族だからだ。しかもノルドーよりも高い爵位である名誉公爵。この事実を知っているのはこの学院の中でも担任と学院長それと専門分野を担当する先生のみだ。生徒も入れればアリルとパナメラも入るのだが。


「しょうがないでしょあんたがノアよりも魔力検査で低いと判断されたんだから」


僕を馬鹿にされたのがよほど気に入らなかったのだろうか少々険しい表情でノルドーを煽る。


「ふんどうせ下らん小細工でもして検査の結果をごまかしたのだろう。いかにも下賤な人間が考えそうなことだ」


ノルドーはこう言っているが正直言ってこの学校で小細工をするのはかなり無理がある。一応試験管たちも一流と呼ばれる人たちばかりだしなによりごまかしたところでそれを学校にいる間隠し通せるとは思えない。そのくらいにこの学校のレベルは高い。


「とはいえ幸いなことにこの後すぐに魔法科の授業がある。お前の化けの皮をはがすいい機会になるだろう」


最後にもう一度僕の方を見てにらみつけ立ち去っていく。

本当に厄介な人だなあ。いっそのこと本当のことを言ってビビらせてやってもいいけどそれはあまり解決にはなってないような気がする。彼の差別的な態度は何も僕たちにだけではない。同じ第四階梯のクラスの平民にも同じような態度をとっているらしい。なので僕が貴族であることを打ち明けたところで他の人に対する態度が変わらないのであれば僕たちはいいかもしれないが他の人たちはそうはいかないだろう。


「すみません、私がいるばかりに…」


たしかにパナメラと一緒にいるときによく絡んですることが多い。本人もそれを気にして謝ってくれているのだろうがこればかりはパナメラは悪くない。気にするなと声をかけて思案にふける。


「どうしたものか…」


歩きながらノルドーの対応について考えているとパナメラがまだ晴れない表情で教えてくれた。


「簡単なことでしょうがあんたが次の魔法授業の時間で見せつけてやればいいのよ!」


これしかないでしょうと言わんばかりの表情になっている。


「あいつはあんたが平民で魔法も対して使えない卑怯者だと思っているんでしょ、だったらその魔法で直接戦わなくとも見せつけてやればいいだけよ」


まぁそれは確かにそうなんだけど


「僕、第十階梯までの魔法しか使えないんだけど…」


「はぁ…大丈夫よどうせあのアルノーとかいうやつは使えてもせいぜい第四階梯よ」


え?マジで?


「全くティアの時に言っていた通り感覚から感性までほんとに違うのね…」


アリルの独り言ちりが空気に溶けながらも学校へと到着していよいよ問題の魔法科の訓練の時間となった。



***



「ではこれより魔法科訓練を始める!」


魔法科を担当してくれるという青髪軍曹のようなスタイルの女性が腹から声を出している。


「今日から魔法科の第四、第五階梯を担当することになったミーシャだよろしく頼む」


魔法用訓練場に集められた第四階梯生徒⒕名と第五階梯生徒12名を見渡しながら自己紹介をする。


「今日から君たちには魔力を身体能力に応用する身体強化魔法から魔法を発現させることによる攻撃魔法を磨いてもらう!早速だが二人一組になって模擬的な試合を行ってもらうので二人組を作れ!」


本当に早速だが生徒たちは友達同士で二人組を作り始め僕もアリルと組もうかと思っていたところ何となく嫌な予感がしていたがちゃんと当たった。


「おいそこのお前、私と組め」


助けを求めようかとアリルの方を見るとしっかりとパナメラと腕を組んでいた。

ちくしょう。


「私がせっかく相手してやろうというのだ光栄に思え」


続けて尊大な態度で言ってくる。


「はぁ、わかったよ」


どんな結果になるかと本人自体は心配していたがこれを見ていたアリルやパナメラ、それに魔法検査にてノアの力を知っているものが見れば結果はわかりきっていることなのだがそんなことはつゆ知らずノアはとぼとぼ歩き訓練場の対面式練習台へと足を向けた。






















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