第17話 無線
ザリ...ザリガリ...ガガ...ピウ...
「....アキだ...コバヤ…ワ...シアキ...
シノノ...るか..」
「まだ遠いみたい」
「小早川教授で確定ですね」
遮蔽物らしい遮蔽物がないのでかなり遠くの電波が届いているようだ。
核物理学の権威だったか。破滅以前は何かの大きな施設を小型化するのに執心してた。
メメントモリの作り方を聞くと、じゃあ訓練すれば理想の物体をなんでも作れるじゃないかとひどく興奮して、自分の身体から炭でできた球や棒を延々出し続けていた。
「呼びかけ続けるということは何か見て欲しいんでしょうね」
「よっぽどだね」
PZの擬態機能を応用して、情動情報の入った菓子を作ることはできている。だけど、メメントモリが、ガワの元になった菓子の味や食感を再現できていたためしがない。毎度まずい物食わされて、トラウマを思い出したショックで生き返ってるようなものだ。
菓子でその程度なら、より複雑な物体ならなおのこと酷いものだろう。昔、3Dプリンターが登場した時にこれでなんでも作れると大騒ぎになったという喧騒の再演だ。小早川はその頃に大喜びした若造だったんではないか。
受信から3日ほど歩き続けて、ようやく人影が見えてきた。
以前の彼は敦賀の廃墟を根城にしていたはずだが、この砂漠は以前なら岐阜付近の山中ではないだろうか。私たちが東北地方へ向かったのに合わせて移動したのか。
「発明品らしい物は持ってないね」
「なんか変じゃない?」
他に誰が見ているわけでもない。
私たちはもう人間じゃないからどんな格好をしてても気にならないはずだ。
なのになぜだろう。
知り合いの老人がパンツ一丁で笑ってる光景の不愉快さは何に起因するのか、老人の格好よりもその方が私には不思議だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます