第二章 エピローグ
「やあやあタスケ君、良く来てくれた。感謝する」
「いえいえ。アイト様の呼び出しでしたらこのタスケ。どんな時だって駆け付ける所存ですよ」
ここはラブホテルがあるダンジョンの応接室。
ダンジョンマスターのアイトとダンジョンのフロアボスであるヒショ。
そしてアイトに呼び出されたタスケがソファーに座って話し合いを始める様子だ。
アイトはいつもの眠そうな顔ではなく、いつになく引き締まった表情を浮かべている。
どうやらこれから重要な事を話すつもりらしい。
「タスケ君よ。我が休息宿ラブホテルは遂に国のトップであるイレタッテ君からも存在を認められて国からの営業認可が下りた訳だが、これは間違いないね?」
「そうですね。国王陛下が酔っぱらっている隙に書類への捺印は済ませていた様ですし、宰相であるレスリー様も認める所ですので間違いは無いかと」
何やら微妙な言い回しはあったものの、アイトの言っている言葉は真実であるらしい。
ラブホテルを営業しているエライマン領だけでなく、国からも営業を認められた事実は大きい。
これでランドソープ王国において休息宿ラブホテルは。
果てはアイトのダンジョンは、最早安泰と言ってしまっても過言では無いだろう。
だって国王イレタッテがラブホテルを囲む形で街を作って、そこを王都にするだなんて言い出したのだから。
1秒と掛からずに却下されてしまったが。
「そうだな。俺はこの国でやるべき事はひとまずやり尽したと思っている。故に俺は新しい展開をキボンヌしている!新しい展開をキボンヌだ!」
タスケはキボンヌが何なのか理解していないが「なるほど」と言って頷いた。
アイトと上手く接するには、自分もある程度テキトーになるのが重要なのだ。
どうせそこまで大した事は言っていないので。
「そういう訳だから今度は国外に飛び出してみようと思っているぞ!」
アイトの言葉はタスケに衝撃を与えた。
その理由は。
「つまりは国外にダンジョン転移をなさるおつもりですか?」
思い出されるのはヤーサンの街から一瞬にしてエライマンへと移って来たダンジョン転移という名のスーパープレー。
アイトがその気になれば、ダンジョンであるピンクの塔ごと他国に移るのは容易であるが。
それはランドソープ王国で人脈を築き、国王御用達の商家にまで手が届きそうなテーラ商会にとっては好ましい話ではない。
その実績の大部分がアイト及びラブホテルとの取引による所なので、移ると言われればタスケも着いて行くのは考えるまでもなく明白なのだが。
妻のバルバラも絶対に着いて行くと言うだろうし。
「いや?ダンジョン転移はしないぞ?」
アイトの言葉に肩を撫で下ろすタスケ。
これでランドソープ国内においてのテーラ商会の地位は盤石だろう。
どこかの馬鹿野郎が愛娘のメリッサと考えなしに関係を持ってメリッサの腹には新しい命が宿っているのだ。
どこかの馬鹿野郎が父親である事には猛烈に不満があるが、生まれてくる子供には罪はない。
どこかの馬鹿野郎を引き離してタスケがおじいちゃん件お父さんとなる秘策すらも視野に入れているので、将来的には孫に継がせるつもりのテーラ商会の地盤が固まるのはこの上なく好ましい。
しかしダンジョン転移をしないとなるとどんな展開を考えているのだろうか?
自分に話が来ると言う事は、つまりそう言う事かと理解してタスケはアイトに問い掛ける。
「つまりは私共の商会を使って他国にもラブホテルの影響力が広がる様にしたいと。そう言う事ですね?」
タスケは大きな確信を持ってアイトの目を見やり。
「いや?今回タスケ君にして貰う事は何もないぞ?」
一瞬にして否定されて少しばかり恥ずかしい思いをしたのであった。
アイトの考えを汲むのには絶対の自信を持っていたのだが、考えてみれば常識離れした力を持つアイトを完璧に理解する事など不可能だと考えを改めたタスケは即座に気持ちを整理してもう一度問い掛ける。
「それでは一体何をなさるおつもりですか?」
タスケの率直な問い掛けにアイトは椅子にふんぞり返って足を組み。
「我が休息宿ラブホテルは獣人の国サカリーバに2号店をオープンする!獣人の客を相手にラブホテルを営業するなんて絶対に面白いだろう!難易度ハードに挑戦だぜ!」
そう言って顔の横に裏ピースを作ったアイト。
ヒショも隣で裏ピースをしている。
どちらも右手を左頬の横に持って行っての裏ピースである。
「それはどの様な方法で?」
タスケの疑問は尤もである。
休息宿ラブホテルはダンジョンである。
そして同じダンジョンマスターが複数のダンジョンでダンジョンマスターを兼務する事例など聞いた事が無い。
きっとタスケには想像も付かない方法で新たなるダンジョンを生み出すのだと思われたのだが。
「塔の地下をサカリーバまで細ーく伸ばして地上に塔を作る」
え?そんな事出来るの?と驚愕に値する内容の上、冗談で言っている可能性もあるのだが。
アイトの表情を見る限り、どうやら冗談ではなさそうだ。
そんな事が実際に可能なのであれば、確かに遠方にラブホテルを作り上げる事も可能だろうとタスケは納得し。
「わかりました。でしたら是非、私共の商会にも協力させて下さい。丁度良い人材がおりますので、必ずお役に立ちましょう」
一瞬で考えを纏めてアイトに協力を申し出た。
タスケは今とっても悪い顔をしているのだが、それに本人は気付いていない。
「ほう。それは心強いな。では準備が出来次第サカリーバに向かって貰うという事で」
「ええ。指示を与えて発たせますので、ラブホテル2号店を作る予定地を打ち合わせ出来ましたら幸いです。あちらへの連絡方法として内線を使わせていただく事は可能でしょうか?」
「問題ないぜ!ふっふっふ。タスケ君よ。俺は獣人を総べる王となるぞ!」
「でしたらテーラ商会はサカリーバで一番の商会となりましょう!」
「わっはっは!酒を飲むぞ!天下取りの前祝いだ!」
アイトは本当に獣人を総べるのか。
それとも獣人を相手にスベるのか。
後者の方が圧倒的に確立は高そうだが、それは現時点ではわからない。
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これにて第2章が完結となります。
生みの苦しみを嫌と言う程に味わった2章でした。
12月末から1月は他の作品に力を入れようと考えていますので、更新ペースを週1話とさせて頂きます。
アルファポリスにて新作小説を3本投稿しますので、興味がある方は近況ノートをチェックして頂ければ幸いです。
1月1日からの公開に先駆けて、カクヨムでは明日より新作小説の一部を公開したいと考えています。
よろしければ是非ご覧下さいませ。
第2章を最後までお読み頂きありがとうございます。
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