第27話 第一回全ラブホビーチバレー大会ラブホ杯①
「第一回全ラブホビーチバレー大会ラブホ杯ー!どんどんどんどんぱふぱふ!」
とある日の夜。
フロントで電話番をしているミーアとラブホ警備兵のレイさん以外の。
水着を着用した全従業員が新たな階層に作られたビーチに集まっていた。
アイトは赤色のハーフパンツタイプ。
ヒショは青のビキニにパレオを巻いていて。
エマは緑色のワンピースを着用している。
因みにオーガズは全員白褌。
ワンポは尻尾にビキニを結んでいる。
夜なので巨大なナイター照明が焚かれ。
海岸は昼の様に明るい。
階層全域が海岸と海だけしかないこの場所は。
先日アイトが海水浴をする為に作り出した場所である。
いや、何気軽に階層作ってるのよ本当に。
休息宿ラブホテルはダンジョンである。
ダンジョンはダンジョンマスターのアイトが、多少の制限のもとで割と好き勝手出来る素敵な場所である。
割と好き勝手は出来るが階層を増設するとなるとそれなりのダンジョン力を消費するのだ。
近頃はラブホテルの営業が好調でダンジョン力を順調に稼げてはいる。
なのでダンジョン力に余裕はある。
だからと言って階層作るか?海水浴したいだけで。と言う話だ。
ま、まあ増設した階層を有効利用する為に従業員の結束を高めるイベントを開催するのは評価に値するだろう。
単純にアイトが皆で集まってビーチバレーをしたいだけだったとしても。
そんな訳で第一回全ラブホビーチバレー大会ラブホ杯スタートです!
「わーわー言うとりますが。わたくし、プレイング司会進行と実況解説と監督と審判と癒し要員と救命係とその他諸々を務めますアイトと申します。よろしくお願いします。ありがとうございます。ありがとうございます」
特にわーわー言っておらず、ややザワザワしている中でアイトの独演会がスタートし。
「解説のアイトさん。楽しみな大会が始まりましたね」
「そうですね。ラブホテルには優れたビーチバレーボーラーが数多く在席していますから。その中でNo.1のバディを決定する大会には全ラブホからの注目が集まっています。一体どのバディが栄光のラブホ杯を載冠するのか!カミングスーン!」
完全に一人二役で実況解説を回すつもりの様で。
解説アイトの熱の籠ったコメントが入り。
「あ、そっすね」
実況アイトはその熱にそこはかとなくドン引きしたのであった。
「えーっと、あ、司会進行のアイトです。それでは早速組み分けと対戦相手を決めるクジ引きに移りたいと思います。組み分けはこれで決めるぜ!引けぇぇぇええい!」
ちょっとアイトのテンションが高くてついていけないが。
司会進行アイトが取り出したのは番号の書かれたピンポン玉が入ったブラックボックスである。
ブラックボックスとは入口部分を暗黒にして中に何が入っているか目視出来ない様にした不正防止用の抽選箱である。
見た目は赤白の縞々に漢字で抽選箱と書いてあるシンプルな物なのだが、手を突っ込む部分だけ暗黒空間になっていて恐い。
普通なら警戒を示す場面だが、ラブホテルの従業員達は構わずサクサクとピンポン玉を引いて行った。
①、②、③と番号の掛かれたピンポン玉は同じ番号が二つずつ入っていて、同じ番号を引いた者同士でペアを組む。
対戦相手も同時に決定されて、①はトーナメント表の一番左。
②は左から二番目、③は左から三番目といった具合にトーナメント表が埋まっていき。
集まった従業員の人数が奇数だったのでウルトラヴァイオレットオーガの不参加が決まった。
頭を抱えて悔しがるウルトラヴァイオレットオーガだったが。
「怪我人が出た場合にはウルトラヴァイオレットに替わって貰う。お前はうちの秘密兵器だ!」
ギャグ漫画なら秘密のままで終わりそうな熱い台詞で監督アイトが鼓舞し。
「うおぉぉぉおお!」
ウルトラヴァイオレットオーガは気合いの雄叫びを上げて『え、何こいつ。何でこんなにテンション上がっちゃってんの?』とアイトを盛大に引かせたのであった。
「どうやら試合が始まる様です。第一試合から屈指の好カードが組まれました。解説のアイトさん。まさか優勝候補同士が一回戦からぶつかってしまうとは。予想外でしたね」
「そうですね。しかし、お互いに消耗していない状態ですから最高の試合が見られるのではないでしょうか。アイト選手とヒショ選手はどちらも素晴らしい選手ですから、どんな試合になるのか楽しみですよ」
ソロで実況解説から選手までやって忙しくないのだろうか?
ヘッドセットマイクに切り替えた審判アイトのコイントスで先攻後攻の選択権がヒショペアに与えられた。
「先行にします。マスター。良い試合をしましょう」
ヒショが先行を取って選手同士と審判の握手を済ませ。
「ピィィィイイ!プレイボーーーール!」
第一回戦アイト&ラセットブラウンオーガVSヒショ&タンジェリンオレンジオーガの試合が開始された。
まずはヒショのサーブから。
ヒショはスイカ柄のビーチボールを天高く投げ上げ。
砂浜を強く蹴って十数mもジャンプすると。
上空から叩き下ろす様にして強烈なスパイクサーブを打ち下ろし。
パァァァン!
ダンジョン内の装飾として超強度を誇る筈のビーチボールが霧散した。
破裂とか粉々では無く、霧散である。
「やっぱりヒショのパワーだとビーチボールじゃ足りないか。今のサーブはノーカンにしてビーチバレー用のボールにするか。ほら。こっち使ってくれ」
アイトがビーチバレーボールを作ってヒショに手渡す。
「面目ないです」
ヒショは申し訳なさそうに受け取って自分のコートへと戻った。
ジャンプの距離が出過ぎてアイトの目の前に着地していたのだ。
エンドラインまで下がったヒショは。
今度こそとビーチバレーボールを天高く投げ上げて高々と跳躍し。
上空から叩き下ろす様にして力一杯のスパイクサーブをアイトペアのコートへと叩き込み。
バァァァン!
やっぱりこっちも霧散した。
その後ビーチバレーボールよりも内気圧の高い普通のバレーボールでも試したが失敗に終わり。
「止むを得ん。ボウリング玉でいくか」
アイトから14ポンドのボウリング玉を受け取り。
ヒショはボウリング玉を天高く投げ上げる。
加速度的にグングンと速度を上げるボウリング玉。
タイミングを合わせてヒショは砂浜を蹴り跳躍する。
上空十数mで最高到達点へと達し、一瞬だけ動きを止めるボウリング玉。
ヒショの右腕が鞭の様にしなり。
グーでボウリング玉を殴り下ろした。
上空から殴り下ろされたボウリング玉は。
猛烈なスピードで一直線に相手コートのエンドラインギリギリを襲う。
これは決まった。
誰もがそう思ったが刹那。
「わっはっは!甘い!甘いぞヒショ!その程度の攻撃で堅牢のアイトと呼ばれた俺を出し抜けると思ったか!」
アイトはヒショのスパイクに反応してレシーブの構えで待ち受ける。
上空を飛んでいるヒショと目が合い。
お互いにニヤリと笑って。
アイトは腰を落とし、両腕でボウリング玉の勢いを殺し。
グキッ!
「ぎゃぁぁぁぁぁああ!」
アイト君は腕を負傷してウルトラヴァイオレットオーガ君と選手交代したでやんす。
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