第35話:マリッジブルー。

さて僕と凛の結婚は、子供の日の五月五日に決まった。


日取りが決まると、棒たちは結婚式の準備で忙しくなって、マンションで

ゆっくりってわけにもいかなくなった。


凛は身の回りの忙しさもあってか、近頃、少しナーバスになることが多くなった。

ため息ばかりついている。

あんなに明るかった、凛から徐々に笑顔が消えていった。


嬉しいことを目の前にして、凛は何を悩むことなんかあるんだろうって

僕は不思議に思った。


僕らには明るい未来しか待っていないはずなのに、ようやくここまでたどり

着いたっていうのに・・・

凛はどうしたんだろう?。


これはもしかして、結婚前の女性が陥る人もいるって言うマリッジブルーって

やつなんじゃないかと僕は思った。

その言葉は聞いたことはあったけど、どんな状態になるのか何が原因でそうなるのか

僕ははっきりとは知らなかった。

だから、調べてみた。


幸せになりたいって言う反面、潜在的に、幸せになること恐れてしまう。

もし幸せになっても、その後不幸になるかもしれないんじゃって考えてしまう。

さまざまな不安をかかえてしまって自分を維持するのが難しくなってしまう。

ってことらしい。

それに加えて環境の変化による不安だったり・・・。

ご両親との別れもあるだろうし。


凛はきっと今、マリッジブルーなんだ。


19才と言う年齢的にもまだ未熟なところはたしかにある。

休みの日も仕事終わりもウェデングホールとの行き来も含めて、ばたばたと、

めまぐるしく起こった身の回りの変化に、凛の心はついていけなくなった

んだろう。


不安と言う迷宮で彷徨ってる天使を救い出さねば。

もう夫婦になったと同じなんだから、凛の悩み事は、ふたりで解決して

いかなきゃね。


僕は、子供を諭すように、優しく、ゆっくりと、凛と話すようにした。


「僕に不満とかあったりする?」

「僕って、凛にとって頼りないかな?」


「うう〜ん、悠人のせいじゃないから」


凛は首を横に降って答えた。


「じゃ〜なにか不安なことでもあるの?」


「ん〜よく分かんない」

「でも、なんとなく、淋しいって言うか・・・ん〜」


またため息をついた。


いろんな感情が重なって自分でもその答えを出せずにいるようだった。


「想像してみて?ふたりが結婚をして、仲良く過ごしているって未来を・・・

考えてみて」


「楽しい毎日が待ってるんだよ、不幸なことなんか絶対おこらないし

もし、万が一そんなことになりそうになったら僕が、全力で凛を守るから

命にかえて、凛を守るからね」


あ〜あ、僕のほうがマリッジブルーになりそうだよ。


僕は決して無理をせず、凛に接した。

凛に今必要なのは本来の前向きなオーラを取り戻すことだ。


時には、凛の思うままにまかせながら、結婚式の準備を進めつつ、僕は凛を

見守っていった。

そして出来るだけ明るい話を・・・彼女が笑えるような話をした。


何事も時間が解決してくれるって言うけど、そのとおりだった。

あんなに落ち込んでた、凛の顔から少しづつ笑顔が見られるようになった。


結局、凛のマリッジブルーも二週間くらいで解消された。

いつもの明るくて無邪気な彼女に戻っていた。

ほうっておいても、時が来れば自然に治ったのかしれない。


このことも含めて、何事も過ぎ去ってみれば、辛かったことも、悩んだことも、

そうたいしたことじゃなかったように思える。


僕の天使の笑顔がよみがっていた。


この経験も、いつかそんなことあったねって笑える日が来るんだろうな。


つづく。


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