第33話:え?結納ですか?

そして凛は19歳になった。

僕と凛の間にも、これと言って大きなトラブルもなく平穏無事な毎日だった。

と言っておこう。

我慢できる程度のトラブルはどのカップルにだってあるもの。


でも一番変わったのは、凛だった。

あんなに、わがままで、気まぐれで、天邪鬼だったのに・・・。

紆余曲折繰り返しながら会社や社会にもまれながら少しづつ成長していたんだね。

凛はいつしか成長した女になっていた。


なんの責任もない女子高生だった女の子は大人になるにつれて

自覚し、しっかりした女性になっていったんだ。


変わらないのは僕の凛を愛する気持ちと相変わらずのマンションでの

エッチの数・・・・減らないんだなこれが。

きっと凛の両親が僕らの関係を完全に許していたら同棲していただろう。

でも、結婚もしてない男女が同棲なんて許してくれそうにない厳格な父親だから

それは無理な話かな。


さて、凛もめでたく19歳になったことだし、

僕は仕事が休みの日、お父さんがいらっしゃる時、あらためて彼女の家を訪ねた。


ご両親そろって僕を出迎えてくれた。

僕は、またまたお行儀よく振る舞った。

母親には家族構成とか勤め先とか、すでに伝えてあった。


お父さんも普通の人、でも右目に眼帯をしていた。

聞くところによるとお父さんの病気は「骨肉腫」の一種らしい。

今でも定期的に病院に通ってるそうだ。


今回も結婚とかそういう話題は一切話題にでなかった。

僕は凛のご両親にめいっぱいの愛想を振りまくだけでよかった。

急いてはことを仕損じる・・・果報は寝て待て、ん〜前もなんか

そんなことを思った気がする。

デジャヴか?

人事を尽くして天命を待つ・・・人事なんかつくしてないけど。


やっぱり閉口したのは、またまたコーヒー牛乳のようなコーヒーが出てきたこと。

またかよって思った。

凛がコーヒーを入れてくれればよかったのに・・・。

僕はコーヒーはブラックしか飲まないからな。


その日は、凛とはデートお預けで、僕はご両親と凛に挨拶して帰った。


また今回も凛の母親が言ってたそうだ。


「優しそうで、よさそうな人ね」

「それに男前じゃないって言ってたらしい」


それからしばらくして、凛から電話がかかってきた。

それは思ってもみない知らせだった。


「結納しろって、お父さんが・・・」


(ん?・・・何言ってるのかな?)


いきなり言うから・・・


つまりは


「結婚を許すから、先にきちんと結納を交わしなさい」


そう、すずの父親が言ってるらしい。

これはきっと母親の後押しが効いてるんだと僕は思った。


これはまた青天の霹靂。


父親にはいずれ、ちゃんと凛をくださいって、ご挨拶に伺わねばと思っていたし、

結婚は、凛が20歳になってからって、その腹つもりでいた。

彼女が20歳になったら、成瀬家に凛を拐いに行こうって思ってた・・・。


でも相手は恋人のおやじ・・・一筋縄ではいかないと覚悟はしていた。

でも凛の家が、父親がいいって言うなら、こっちは何も申しません。


結納だろうがなんだろうが謹んでやらせていただきます。

でもな〜今時、結納なんてやってる家あるのかな?と思いつつ・・・

なんでもいいんだ・・・凛と一緒になれさえしたら・・・。


その年の10月初旬、いい日を選んで僕は僕の両親を連れて結納のご挨拶に

凛の家に行った。

その日の朝はとくに寒くて、まだ10月にも関わらず今にも雪が降りそうな

くらいの天気だった。


つづく。





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