第32話:手紙。

凛は卒業記念のサプライズを喜んでくれた。

例によってくす玉。


「またくす玉?」


「やっぱ、これがないと盛り上がらないだろ?」


たしかに芸がないって思った。


だから次は100本のバラの花束でも渡そうかな。

で高級ホテルでイタリアンディナーとか。


でも今回は凛がヒモを引っ張ったらみごとにくす玉が割れた。

中から「卒業おめでとう」って小さな垂れ幕が、細かく切った紙吹雪と

一緒降りてきた。

めちゃ漫画的。


またくす玉?って言った凛だったけど、くす玉がみごとに割れた時は

手を叩いて喜んでくれた。


こういう細工物は何度も続かないから、そのうち誕生日とか、お祝いごと

のサプライズはプレゼントだけになっていく。


その後、ふたりで雪崩れ込むのはいつものマンション。

当然のようにマンションでラブラブした。

それも卒業記念イベントの一環。


制服を脱がすって、なんだかいけないことをしてるようだった。

とうとう高校生活ともおさらばだね。


マンションで楽しく過ごしたあと、僕は凛を家まで送って行った。


すると凛が車から降りる時、


「これ、読んで」


って手紙を渡された。


「悠人、今日までありがとう」


そう言って凛は僕にキスして帰って行った。

僕は凛から渡された手紙を、家に帰ってからちょっとどきどきしながら読んだ。


まさか「今までありがとう、彼氏が出来たから、今日でさよなら」・・・

とかって書いてるんじゃないよな?

100%それはない・・・と自信を持っていたけど100%なんてことないからね。

男女の中と世の中は。


内容はこうだった。


【凛からの手紙】


大好きな悠人へ。


私は今日、めてたく卒業できました。


悠人、本当にありがとう。


今まで、わがままばっか言ってごめんなさい。


困らせてばっかでごめんなさい。


私が落ち込んでる時は、いつも悠人がそばにいて見守ってくれたね。


悲しい出来事も悠人がいたから乗り越えて来れたんだよ。


感謝してもしきれない。


私のために一生懸命な悠人を見てると嬉しくて涙が出るよ。


だから悠人と出会えて本当によかったって心から思ってます。


私には悠人しかいないし悠人が一番大切な人。


きっと悠人と私の出会いは奇跡だって思う。


でも悠人のことを思うと、時々不安になるの。


いつか悠人が私の前からいなくなるんじゃないかって。


恋するって切ないことなんだって悠人を愛してはじめて知ったよ。


それが人を愛することだって。


悠人は私にとって、なくてはならない人だから、


私も悠人に必要って思われるように、これからも頑張るからね。


ありきたりなことしか悠人に伝えられないけど、


どんなことがあっても、私は悠人を愛してるからね・・・。


もし地球が終わっても宇宙が爆発しても私は悠人を愛し続けます。


だから、これからもずっとずっとずっとずっと仲良しでいようね。


凛だけの悠人へ。


悠人だけの凛より。



君を好きになって、愛してよかった・・・凛。


つづく。

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