第17話:大人の男。

僕は凛のスマホに残ってる着歴に電話した。

呼び出し音のあと、男の声がした。


「もしもし〜」


「藍原ってもんだが・・・」


「はあ?・・・かけ間違いじゃないの?」


「あんた成瀬 凛って知ってるよな」


「・・・・」

「お前、誰だ・・・・なに言ってる?」


「知ってるだろ?」

「あいつのスマホに、お前の着歴残ってるもんな」

「俺はそっからおまえにかけてるんだよ」


「おまえ、あの女のなんなんだ?」


「凛は俺の女だ」

「いいか・・・凛には二度と構うな」


「そんなこと知るか・・・」


「凛に付きまとわないって誓え」


「そんなの俺の勝手だろ」


「付きまとうようならこっちにも考えがあるんだぞ」

「俺のダチにヤバいのもいるし、叔父は警察官やってるからな」


「おまえが凛に手出しするようなことがあったら、すぐに出張ってもらう

ことになるぞ」

「分かったか?・・・分かったら二度と凛には手を出さないって誓え」


「クソッタレが・・・わ〜ったよ・・俺も面倒はごめんだからな」

「他に女いるし、女子高生のしょんべんたれになんか手は出さねえよ」


「誓うな、手を出さないって」 」


「だから、そう言ってるだろうが・・・手なんか出さねえよ」

「死ね!!」


そう言ってそいつはスマホを切った。

僕とそいつの会話を聞いていた凛は唖然としていた。


「たぶん、もう大丈夫と思うよ」

「ん?なに?・・・凛、なに鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してるの?」


「悠人・・・別人みたい・・・」


「ああ・・・さっきの?・・・あれはただハッタリ効かせただけだよ・・・

本当の僕じゃないからね」

「悠長に優しく、お願いなんかしてたらラチがあかないだろ?」


「それにしたって・・・」

「ちょっとびっくりしちゃった」


「あのね、これでも伊達に歳だけ食ってるわけじゃないんだからね」

「実際、友人にヤバい人もいるし、親戚のおじさんは警察官だし」

「ウソ言ってないからね」


「え〜ヤバい人って?」


「個人的にじゃなくて仕事関係でってことだよ」

「お客さんにその手の人がいるって話し・・・心配ないから」


「もし、さっきのやつがまだ凛にちょっかい出してくるようなら

親戚のおじさんに連絡するから・・・ヤバい人に頼むよりはいいからね 」


「あのさ・・・僕を怖い人みたいに思わないでよ」

「根は優しいおじさんなんだからね」

「凛にとって僕は、優しいちょっと歳食った王子様なんだから」


「なにそれ、歳食った王子様って・・・しょぼくない?」


「いいから・・・おいで・・・」


そう言われて凛は助手席から僕のほうに体をよせた。


「なにがあっても離さないからね」


僕は優しく凛を抱きしめた。


「イヤなことは忘れて、なにか美味いものでも食べに行こう」


そう言うと僕は車を出した。


凛は悠人の違う一面を見た気がした・・・これが大人の男性なんだ。

でも悠人は頼れる人なんだってことも凛は思った。


じっさい僕の心臓はバクバクだったんだけどね。


つづく。

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