第11話:ファーストキス。
そんな訳で、今のところ危なげのないふたりです。
もう何度目かのデートで、お互い下の名前で呼び合っていた。
悠人・・・
凛・・・・
ってふうに。
その日もラブラブデートの帰り、彼女の家の門限に間に合うように、
あわてず急いで凛を送っていく途中、僕は急にトイレに行きたくなった。
ドラマならそんな色気のないシーンはカットなんだろうが
これはドラマじゃないから編集はできないんだな。
(漏れそう~・・・凛の家までは絶対もたないよな。
まさか、その辺で立ちションってわけにもいかないし・・・)
うまい具合に、僕はこの先に公園があるってことを思い出した。
公園に行けば確実に公衆トイレがある。
そして迷わず駐車場に車を止めた。
その公園には昼間に来たことはあるが、夜に来るのは初めてだった。
花見の時くらいしか来ない公園。
花見も最近は来てないけど・・・。
こんな夜の公園に来るのはホームレスかエロいことするカップルくらいだ。
街灯も少ない、薄暗い公園だった。
切れかけた街灯がチカチカしている。
僕は凛をこんな場所に、車の中にひとり置いていくのは心配だった。
でも、もう他を探す余裕はない。
「すぐだから、待ってて、ごめんね」
凛は、「うん」ってうなずいた。
僕は凛一人残して男子トイレにかけこんだ。
(かっこ悪る〜)
でも、出物腫れ物ところ嫌わずって言うじゃないか。
しかたがないよ。
用を済ませて出来てきたら、ホッとして、なんだか気が抜けた。
止めた車まで戻ると、凛はちゃんとそこにいた。
何度も言うけど、ドラマじゃないんだから、事件など起きないからね。
でも、ここにいるのは、いい気持ちがしないので早く退散したかった。
そう思って車を出そうと思った時、ふっと何かに押されるように僕は
急に凛とキスがしたくなった。
でも僕は、彼女にしていい?って聞きもしないでいきなり凛の唇を奪おうとした。
そしたら凛が驚いて、僕のほほにビンタを食らわした。
凛はビンタを食らわした後で
「あ、ごめん」
って僕に謝った。
僕が唖然としていたら凛が言った。
「急に来るから・・・」
「あは、そうだよね・・・ごめん、魔が差した・・・」
「リセットするからさ・・・だからキスしていい?」
「ね、いいよね」」
って僕は改めて凛に聞いた。
凛は小さく「 うん」ってうなずいた。
こんな薄暗い公園、誰か見てるかもしれないのに、早く退散するに限るに・・・。
それが僕と凛の初めてのキスだった。
ファーストキス・・・重なった時間が止まっていた。
キスの後、シラけるのが嫌だった僕は、凛を優しく抱きしめた。
女性の体ってこんなに柔らかくて優しかったんだって改めて思い出した。
僕は「愛してるよ 」とは言えず 「好きだよ」って言っていた。
つづく。
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