第10話:デートは土曜日に。

楽しい時間は夏風のように通り過ぎて行く。

そろそろ彼女との楽しい時間が終わろうとしていた。


「家まで送るから」


と言う僕の言葉に彼女は首を横に振った。

待ち合わせをした妙正寺の前で降ろしてくれたらいいと・・・

僕は彼女の家に行くことが、そんなにマズいことなのかって思った。


気になる・・・そのことだけが僕の心にひっかった。


妙正寺の場所は、夜でも街灯が明るいし、とくに女性が一人で歩いていても

危険がある場所ではないから彼女に逆らわず、僕は素直に車を止めた。


彼女が車から降りる前に次のデートの約束をもらった。

これは、外せないから。


「来週の土曜日、予定あります?」


「いいえ、ありません」


「よかったら来週も会ってくれます?」


「はい、喜んで」


彼女は心なしか嬉しそうだった。

僕の思い過ごしじゃなくてね・・・。


「それから、それまでに、また連絡します?」


「はい、分かりました」


彼女の答えは、もちろんイエスだ。

あんなに盛り上がったんだから断る理由なんてないよな。


「今日はありがとうございました、めちゃ楽しかったです」

「おやすみなさい」


「おやすみ、またね」


僕は彼女に笑顔で答えた。

小さくお辞儀をして彼女は後ろを振り向きながら、またうちわをパタパタ

しながら くちパクで、「おやすみなさい」って言って消えていった。


彼女が去ったあと、僕はしばらく放心状態だった。

騒ぎすぎたせいだろう。

今は静寂の中で、今日あった出来事を回想してみる。


思い出せば、おもわず顔がほころんでしまう・・・嬉しくて・・・。

まだ火照りから冷めない悠人の頬を夏の夜風が優しく撫でていった。


それからの僕と凛のデートは土曜日に決まった。

さすがに彼女が高校生で未成年でもあったし家族とのことも踏まえて、

土・日、二日続けてのデートは控えた。


約束の土曜日は朝から会った。

そして悠人は初めて事務服以外の私服の彼女を見た。

初デートは浴衣だったからね。


彼女の私服姿は僕が想像してたのとはちょっと違った。

めちゃ「ぶりぶり」でもないとは思ったけど、 それなりに「ぶりっ子」

なのかも・・・と思っていた。

もしロリ系だったらどうしようと思ったけど・・・


(そういうファッションもアリだとは思うけど個人的にはちょっと苦手かな)


でも彼女はきっちり真逆だった。

彼女は白のブラウスに黒のタイトスカート、ヒールの高いサンダル、

色は白・・・シュッとしてる。


襟を立てたら、まるでスナックのカウンターにでもいそうな出で立ちだった。

でも、それはそれで、彼女の名前の通り凛々しくてカッコ可愛いかった。


シュッとした佇まいに持ってきて顔が可愛いから、そのギャップがまたいい。

女性のブラウスはヤバいのです、おまけにタイトスカートって・・・ね。

まじヤバイよね。

どストライクだよなって僕は思った。


つづく。


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