第3話:意を決して。

そしてある日の昼休み。

僕は意を決して成瀬さんが勤める車屋さんに電話した。


彼女のスマホの番号も家の連絡先が知らない以上、彼女がいる会社に

電話するしかなかった。


昼の休憩時間・・・もうドキドキが止まらない・・・深呼吸して・・・

プルルル・・・プルルル・・・・この音でさらに緊張する。


カチャッ


「はい、お世話になります、◯◯商会です」


彼女の声だ。

もう何度も聞いた記憶の底に焼き付けた成瀬さんの声・・・。

彼女が出てくれてラッキー。

でも、悠人はパニクって最初、何から切り出したらいいのか戸惑っていた。


「もしもし、◯◯商会です」


「あ、こちらこそいつもお世話になってます」

「あの・・・僕ですけど・・・誰か分かります?」


「はい、分かりますよ、藍原さんでしょ?」


彼女は明るいハキハキした声で答えた。


「あ、はい、藍原です、こんにちは」

「覚えててくれたんですね」


「はい、覚えてますよ」


僕は彼女が自分のことをちゃんとが覚えててくれたことが嬉しかった。


「社長呼びましょうか?」


待て待て待て・・・


「いやいや、僕は君に用事があるんです・・・」


「私?」


「そう、君」


「あの、いきなりで、あれなんですけど・・」


(ふ〜〜〜もう心臓が爆発しそうだ・・・神様)


「ぶしつけことをお聞きしますけど、成瀬さんって、今、お付き合いしてる

男性の方っていたりします?」


「・・・いいえ、いませんけど」


(おおおお〜〜〜、クリア・・・よし!! )


「ま、まじですか?、本当に?・・・あ〜よかった」

「もし、お付き合いとかしてる人がいたらどうしようかと思って」


「どうしてですか?」


僕は額の汗を手で拭った。


「いると困るんです・・・って言うか、もしいたらこの先がないから・・・」

「もし、君にカレがいたら、僕はまじで恥ずかしいことしてるわけで・・・」


僕がしどろもどろになってることに受話器の向こうで彼女がくすくす笑った。


「すいません、緊張してて・・・」


僕が「もし、お付き合いとかしてる人がいたらどうしようかと思って」 と

言ったら 彼女は「どうしてですか?」 と聞き返した。


でも僕が彼女に彼氏の存在を確かめた意味には、次に僕が何を言おうと

してるのか、もう彼女には分かっただろう。


電話の向こうの男は自分に告白しようとしてるかデートにでも誘おうとしてる

に違いないって・・・ 勘の鋭い子なら分かるよ、男の下心なんて。


つづく。

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