第2話:自分との葛藤。
ある日、僕は得意先の車屋さんで、成瀬 凛って子と出会ってから彼女の
ことが忘れられなくなっていた。
今のところ僕は、その車屋さんに週に1ないしは2回ほど仕事に通って
いたから成瀬さんとも世間話くらいするようになっていて
僕が仕事をしてると暑いでしょって飲み物出してくれたりした。
普通に笑って話して・・・。
その日も、暑かったので成瀬さんは僕にアイスを出してくれた。
そして彼女はこう言った。
「藍原さん・・・お元気で」
「はい?」
「夏休みが終わったら、私、ここ辞めますから・・・」
「夏休み?・・・辞めるって?」
「私、バイトですから・・・」
「バイト?」
「そうですよ・・・夏休み期間中のね」
「うそ、僕はまた成瀬さんは高校卒業して、どこかの会社に就職してて」
「なにかの事情で、この車屋さんに再就職したのかって思ってたんですけど」
「いや〜そう考えてたから、バイトなんて思いつきもしなかったです」
「それに高校生のバイトって普通、ファーストフードとか食べ物屋さんとかで
見かけるから・・・」
「想像力が豊かですね・・・私が高校生だって思わなかったんですか?」
「私、まだ17才ですよ、そんなに老けてます?」
「いや、そんなことはないけど・・・そう、まじで?、女子高生だったんだ」
「そうなんだ・・・」
「藍原さん・・・アイス早く食べないと溶けちゃいますよ」
なんと成瀬さんは、まだ女子高生だった。
彼女が女子高生なんだって・・・そう思った瞬間、ないなって思った。
どう考えても三十路を過ぎた男なんて、女子高生が相手にするわけない。
しかも相手は未成年だろ・・・まずいよな。
僕はめちゃ落ち込んだ。
せっかく可愛くていい子に巡り会えたって心躍らせていたのに・・・。
そう思いながらでも家に帰ってからも僕は彼女のことばかり考えていた。
(彼女は恋人とかいないんだろうか?)
彼女とはないよなって思ったくせに僕はそのことが気になった。
僕は昔、理容師になろうと理容美容専門学校に通っていたことがある。
17歳くらいの頃、イケメンだった僕はその頃はハンパなくモテた。
贅沢かもしれないけど、モテるってのもけっこう辛かったりする。
想っていない子から、告られたりするからだ。
断るほうも断られるほうも傷つく・・・嫌なもんだ。
友達のままでいたいのに、一度こじれると人間関係がぎくしゃくする。
僕は遊ぶってことができないタイプだから、女性なら誰でもいいってわけ
じゃなかった。
好きになった女性には一途だった。
しかも19才の時、僕は遠距離恋愛の末、大失恋して終わった。
そんなふうだから、しばらくの間女性からは遠ざかっていた。
それでも25才くらいまでは付き合った子もいたが自然消滅した恋もあるし、
フラれたのもある。
実を結んだ恋は、ひとつもない。
若かったということもある。
確かだったのは、どの子も僕にとって女神様ではなかったってことだろう。
でも成瀬さんとの出会いは、くすぶっていた僕の心に火をつけた。
ダメ元で思い切ってデートに誘ってみようか。
早めに気持ちを告白しないと誰かに彼女もっていかれるかもしれない。
行動に移さないときっと後悔するそう思った。
歳の差がなんだよ・・・。
生まれてくる世代が少しズレただけのこと。
芸能人なんか歳の差なんて関係ないじゃないか。
歳の差なんて珍しくもない。
そう言えば僕の祖父と祖母も13歳違いだった。
どっちにしても成瀬さんを逃したら、きっと後悔するって僕は思った。
もたもたしてると誰かに取られてしまう。
彼女が誰かのモノになるなんて考えただけで、絶望的になった。
何度も考えてしまうことは、あんなに可愛いんだからと、すでに彼女には
付き合ってる誰かがいるんじゃないか?ってこと。
そんなことも考えたくない。
もし告白したとしても、いい返事が返ってくるとは限らない。
彼女はモノじゃないんだし意思を持ってるんだから僕の気持ちを、誘いを
断ることだってできる。
好みのタイプだってあるだろうし・・・彼女にとって僕がタイプじゃない
可能性だってある・・・。
(ああ、心がざわめく・・・)
まだ付き合ってもないのに・・・夏の熱い夜、とりとめのない妄想に気持ちは
焦るばかりだった。
つづく。
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