17才。

猫野 尻尾

第1話:出会い。

季節は8月。

それは蝉の鳴き声がやたらうっとしい暑い夏に始まった。


僕の名前は藍原 悠人あいはら ゆうと

某看板屋さんに勤めるプロの職人。

年齢は35才。


仕事はトラックや箱バンのボディーに店名や社名のシールを貼る

仕事をしていた。

ほとんど出先の個人の車屋さんやメーカーでの作業が主だった。


その日も僕は、個人の車屋さんへ社名のシール貼りを頼まれて朝からでかけた。

その車屋さんの社長さんとは、10年来のお得意さんでタメ口で話せるくらい

親しくしてもらっていた。


仕事は慣れた作業だったので、すぐ終わるはすだったが加工用のカッターを

忘れてることに気がついた僕は、会社に取りに帰ろうかと思った。


でも、もしかしたら事務所へ行けば、カッターの一個や二個くらいある

だろうと思って、そのまま事務所を除いた。


そしたら


「いらっしゃいませ」


って明るい声がして、一人の女の子がこちらを見ていて軽くお辞儀をした。


一瞬、えっ?って僕は思った。


(ん?誰・・・あ〜新しい事務員さん?)


「あの、すいません、カッターあったら貸していただけませんか?」


そう言うと事務員さんは机からカッターを出して僕に渡してくれた。


「それでよろしいですか?」


「はい、ありがとうございます」

「じゃ〜ちょっとお借ります」


僕は事務所から出て、もう一度、若い事務員さんのことを思い出した。

気になったからだ・・・それほど僕には彼女が印象的だった。


その子の顔には、まだあどけなさが残っていて化粧っ気もなく・・・

髪は今時にしては珍しく黒髪のロングをポニーテールにしていた。

社会に出てまださほど日にちも経ってないのかと思った。

初々しい感じの子だ。


たしか7月にはいなかったし、一週間前までにもいなかった。


やっぱり今年、学校を卒業して入社した事務員さん?って思った。

でも季節は夏・・・入社するなら春過ぎだよなって僕は思った。

でも、まだ仕事が残っていたので、そこまでは深くは考えなかった。


作業が無事、終わったて僕は事務所にカッターを返しに言った。

また彼女に会えるかと、少し胸が弾んだ。


でも、あいにく彼女は事務所にいなかった。


(カッターありがとう、助かりました)


そうメモに書き残してカッターと一緒に彼女の机の上に置いてきた。


もう一度会いたかった・・・可愛くて感じのいい子だと思ったから・・・。

もしかして、一目惚れ?・・・淡い恋心か・・・。


(でも僕と彼女とじゃ歳が離れすぎてるだろうからな・・・)


そう思って僕は苦笑いした。

でも彼女の胸にかかっていた名札は見逃さなかった。


彼女の名前は「成瀬 凛なるせ りん


それが彼女の名前。


まさか、この先、その子が、その事務員さんが僕の彼女になるなんて

その時、思いもしなかった。


つづく。

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