王国に捧げる鎮魂歌 ~巫戦士ラシュリと飛竜乗りのソーの物語~
滝野れお
第一章 出会い
序 語り部はかく語りき
「────おまえさんたちも聞いたことくらいはあるじゃろう? 五十年前、この大陸では、大きな戦があったんじゃ」
竜導師ギルドの長老、白髭のシシルは、教壇に置かれた椅子に座って、ゆっくりと語り始めた。
固唾を呑んで彼を見つめているのは、まだ十代半ばの若き訓練生たちだ。
「戦と言っても、人と人とが剣を交える戦じゃぁない。
「あのっ、シシル様は、その戦に参加されたのですか?」
ひとりの少年が手を上げて質問をすると、シシルは声を上げて笑った。
「ハッハッハッ、あれを参加したと言って良いものかどうか……あの頃はわしもまだ若かった。おまえさん方と同じ訓練生だったのだからのぉ」
シシルは重く垂れた瞼を更に細めて、昔を懐かしむように笑った。
「あの戦が起こる少し前、この竜導師ギルドの本部は混乱しておった。戦の予兆を感じ取った上層部が、あちこちに探索の手を伸ばしていたのじゃ。
わしら訓練生には何も知らされてはおらなんだが、ある時、ひとりの女がこの竜導師ギルドにやって来た。
彼女は若く美しく、ギルド中の男どもが彼女を見に集まったほどじゃった。が、彼女は普通の娘ではなかった。北の国の神殿に仕える
彼女はきっと、運命に導かれてこの竜導師ギルドへやって来たのじゃろう。その彼女の探索の旅に、わしは、二つ年上の友人ソーと共に加わることになったのじゃ」
シシルはそう言って、講堂に集まった少年たちをぐるりと見回した。
「わしがこれから話すことは、世界中のどんな書物にも載っておらぬはずじゃ。
魔道を操る東のジュビア王国と、それに対抗した大陸各国の連合軍の戦い。
皆、よく聞いておくれ。五十年前に起きた、大陸戦争の、これが真実の物語なのだから────」
大陸の南。ベルテ共和国にある広大な砂漠。
東西南北どちらを見ても、薄茶色の砂漠しか目に入らない。そんな、人々の生活から隔絶された場所に建つ、砂漠と同じ色の円柱型の建物。
たくさんの竜導師とたくさんの
自らの経験が、未来を担う若者たちの糧となるよう、願いながら。
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