第二章 剣士試験編

Part1

 ノネの元で修行を始め、早くも四年の月日が流れた。


 アスタとフェイは何度も挫折を味わったが、修行を続け、一般剣士と同等の力を掴み取った。


 「九十八……九十……九」


 アスタは今、ノネとの勝負で敗北し、罰である腕立て伏せ百回を行なっていた。


 「ひゃ……く!」


 ノネとの勝負の前にも、基礎や応用と修行があり、疲れをどっと感じ、倒れ込むアスタ。


 「はぁ……はぁ」


 「お疲れアスタ。 今日もやられちゃったね」


 フェイも自身の修行を終え、アスタの元に歩み寄る。


 「今日こそ勝てると思ってたんだけどなぁ」


 「今日はどうして負けちゃったの?」


 アスタとフェイは、ノネとの勝負で負けた場合、何故負けたのかを自分達で考えるようにと、二度目の勝負の時から教わっていた。


 「今日は……あれかな、ノネが俺から見て右に動いたから、木剣に力を込めつつ、勢いをつけたいから身体を左回りに動かしたんだよ」


 「うん。 その後は?」


 「止められないようにって事しか考えてなくて、木剣降ったら普通にかわされて」


 「あぁ……力を込める時間が少し長かったのかな」


 「やっぱそうだよなぁ」


 負けた理由を考えている二人。


 ノネがこの行為を取り入れようとした理由は明白で、負けた後に、何も考えない人間にいかに成長が訪れないか、ノネ自身がこれまで見てきた為だった。


 「今日の敗因を、次の勝負に活かすんだぞアスタ」


 「そりゃあそうするけど、てか今日のって」


 「僕達、この四年間で一回もノネさんに勝ててないからね」


 「しかも魔物との実戦の後にボコボコされるし、成長はしてるはずなのに、落ち込むわぁ」


 「ノネさん、自分の弱さを自覚する大切さは分かっているんですけど、どうして最後にノネさんとの勝負なんですか?」


 「フェイまでどうした? そんなの簡単だよ。 調子に乗らないためだ」


 「この四年間ボコボコにされているのにですか?」


 「そりゃあ実力差がある訳だしな」


 「うわぁ~」


 「そんな声出すなアスタ。 実力差は確かにある。 でもアスタとフェイは、一度だって負けるつもりできてないだろ?」


 「そりゃあノネに勝ちたいし、普通じゃん」


 「僕も勝つつもりで挑んでますけど」


 「それで良いんだよ」


 「また意味分からない事?」


 「そんな事はない、アスタもフェイも理屈は分かっていると思うぞ? 実力差がある相手と四年間もボコボコにされながらも挑み続けるその挑戦心と勝ちたいと言う欲求。 これって凄い事なんだぞ!」


 「四年間ボコボコにされてるからこそ、尚ノネに勝ちたいだけだよ俺は」


 「正にそれだよアスタ。 これは普通の剣士には無い、特別な資質だ。 私がアスタとフェイに特に感じて欲しかった事は、自分の力を理解した上で、自分にできる事をする。 もう一つは、決して考えることを止めないこの二つにある」


 「ボコボコにされた後に言われてもなぁ」


 「でもアスタ、今ノネさんが言った事、僕達がずっとやってきた事じゃない?」


 「そうだけど、そうなんだけど」


 「まぁそう言うと思って、アスタとフェイには、ある試験に出てもらう」


 「ある試験? フェイはともかく、俺は勉強とか苦手なんだけど」


 「その試験じゃない。 アスタとフェイに受けてもらうのは、剣士試験だ」


 「剣士試験って、剣士の資格を得る為の試験ですか?」


 「その通りだフェイ。 二人はもう実力もあるし、年齢的にも受けられるからな」


 「それってどんな感じなの?」


 「その名の通り、剣士の資格を得る、もしくはカラー昇格を目指して行なう試験だ」


 「カラー昇格?」


 「詳しい事はまた後で説明する。 この試験で自分達にできる事を覚えて来い、それが次の修行だ」


 「剣士試験か、それっていつなんだ?」


 「一ヶ月後だ」


 「一ヶ月、時間があるような無いような」


 「でもアスタ、それだけあれば色々考えられるよ」


 「だな。 その期間もノネとの勝負は」


 「この期間においては、私はあまり干渉しない。 試験の事や必要な事は教えるが、私との勝負は無しで、アスタとフェイだけで考えるんだ」


 「なるほど、やってやろうぜフェイ!」


 「うん、やっちゃおアスタ!」


 試験開催までの残り一ヶ月、ノネはホントに最小限の干渉のみで、アスタとフェイで考え、できる限りの修行を行なった。


 そして時は過ぎ、剣士試験の日が訪れた。

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蒼天の英雄 Another 雨宮結城 @amamiyayuuki0523

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