第34話 再来

 女性「すっすみません...」

その女性は俺にしか聞こえないぐらいの小さい声で、ハンドルを握り後ろを向いた。


 すると...


 美華「お姉ちゃん...?」

彼女の声が、この静かな住宅地の中で響き渡る。

美華の声を聞いたその女性は、歩き出そうとしていたが立ち止まった。


 そして...


 「美華...」

彼女がその言葉を発した途端、美華は彼女の所へ駆け寄る。


 美華「お姉ちゃんっ!お姉ちゃんだよね...?」

涙が零れ始めた彼女。小さい身体でめい一杯ぎゅっと...。

ずっと離さず抱きしめていた。


 姉「やっと会えたねっ...美華っ!」

思わず彼女も涙が溢れる。


 お互い、ずっと探していたのだろう。何十年ぶりの再会だろうか。

小さい頃に両親が離婚をし、そこから疎遠になっていた二人。


 再会したこの気持ち全てが俺なんかにわかるわけではないが、二人の姿を見て思いがこみ上げ、思わず涙がでてくる俺。


 ”でもなぜだろう...どうして、一体お姉さん急に現れたのか。ここ何十年一回も再会したことないのに...しかも髪色まで変えてしまって...確か美華ちゃんと同じ、金髪って聞いてたから...”

俺は思わず聞いた。


 亮「お姉さん。ずっと美華ちゃんを探してたんですか?」


 お姉さん「...はい。探してたというより、探せなかったとゆうか...」


 亮「それはどういう事ですか?」

その言葉を聞きしばらく何も言わず黙りこくる彼女。

なにか言いたそうだが、言いづらそうな雰囲気が伝わってくる。

そこで俺は言った。


 亮「二人ともがよかったらでいいんだけど、家に来て話しませんか?」

美華の顔を見ると、小さくうなずいていた。

そしてお姉さんを見ると、しばらくして彼女もうなずいた。


 亮「よし!行こう!」

夜遅くなっていたが、今しか話を聞けるチャンスがないと思った俺は、二人を連れ俺の家までいった。



 亮「ごめんなー!少し散らかってるけど...好きなとこに座っててなー!」

一人暮らしで独身男の部屋に急に女性二人を招き入れるなんて考えてもいなかったから、全く掃除もしていなかった。

そして、二人に買い置きしていた缶コーヒーを渡し、話が始まる。


 亮「それで?お姉さん。探せなかったってどういう事かな?」


 お姉さん「実は...私達の両親は私達が小学校の頃に離婚しました。それで私は母の方へ行くことになり、美華は父の所へ...」


 亮「うん。そこまでは知ってるよ!」

その言葉に驚いた表情を見せる美華。

気づけば俺の隣に座っていた彼女。実の姉であれ、こんなにも長い期間離れていた。育ち盛りの時に...。

そりゃあ姉という面影は残っているからすぐわかっただろうが、昔と今では全然顔も大人だし、違う。

不安にもなるはずだ。

美華の表情を見たら本当よくわかる。さっきから大人しく聞こうと一生懸命耳を傾けているが、震えているのが分かる。


それが分かってからか、俺はいつの間にか彼女の手を握っていた。

 

 ”今出来る精一杯がこれだけど、一緒に乗り切ろう!”

その気持ちが彼女にも伝わったか、手をぎゅっと、握り返してくれた。


そして、お姉さんが話を始める。


 お姉さん「そして...美華が中学校の頃に、母が交通事故でなくなったと聞いたと思いますが...本当は最近まで生きていたのです...」

 

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