第33話 沈黙の始まり

 亮「今日はありがとなっ!めちゃくちゃ美味しかった!」


 美華「あのケーキはあくまでも唯愛の為に作ったやつだから!美味しくできて当たり前なのっ!」

明らかに言ってる事と表情がチグハグになっている美華。

そういう素直じゃないところがまた男心をくすぐられてしまう。


 亮「仮に俺の為に作ってくれたらどうなんだろうなっ!」

俺はニヤリとしながら彼女に聞いてみた。


 美華「そんなん、私が作るんだから美味しいに決まってるじゃない!」


 "よし!言おう!"


 亮「だから今日のケーキは無茶苦茶美味しかったんだよ!美華ちゃんが作ったんだから!」

顔を赤らめ、静かに俺から目線をそらし下を向く彼女。


 美華「も...もう...」

俺は元々そんなにSなキャラではない。

だが美華の時だけ時たまその心が発動してしまうのだ。

この表情が余りにも可愛すぎてである。


 辺りは真っ暗な住宅地。二人の沈黙の時間が続いた。

何故か急に俺の胸の鼓動が早くなる。

そう思えば思う程、先程から俺の左腕に、たまに当たる彼女の二の腕が気になってしまっていた。


 そして思えば、彼女を見つめていた。


 それに気づき、彼女もゆっくりと俺の顔を見上げる。


 見つめあっていた時間は秒数にすると約8秒。




 恋に落ちた...




 と思った。




 「ガシャンッ!」


自転車が倒れる音が後ろから聞こえ、俺達は振り返る。


一人の女性。


倒れていた自転車を持ち上げようとしていた。


手伝おうと思い、そこに駆け寄る俺。


 亮「大丈夫ですか?俺やりますよ!」

そう言って、自転車を起こした俺。


 そしてハンドルを持ち、その女性に渡す。

すると...


そこで初めてその女性の顔を見たが、その女性は...

以前ドライブインにいた黒髪の彼女だったのだ。

 

 

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