第32話 女の友情

 美華が作ってくれたケーキを頂き、皆で会話を楽しんでいた...はずだった。


 小春さん「美華ちゃん!私が亮さんとご飯食べに行ったの妬いちゃったでしょ?」

そんなことをニヤニヤとしながら言い、美華の頬をツンツンとする彼女。


 美華「いーえっ!妬いてません!私、その時唯愛んちにお泊りしに行ってたもん!ねー!唯愛!」


 唯愛「そおだよねー!すっごく楽しかったもんねー!」


 小春さん「あらっ!私達も楽しかったもんねー!ねー!亮さん!」


 "ちょ...ちょっと小春さん!さっき謝ってたあの感じはどこ行った?"

気づけばどっちが楽しかったを競う戦いになってしまっていた。


 亮「はーい!ストップー!今こうして皆で仲良く食べれてるんだから今を楽しもうよ!」

すると隣にいた美華が言う。


 美華「あー!ごまかしたー!」


 亮「ごまかすもなにも、昨日は昨日!そして今日は今日!」

わけわからないことを言って残りのアイスコーヒーを飲み干した。


 亮「ごちそうさまっ!皆は今から片付け?」

そう。すでに俺が喫茶店に来たときには、もう閉店間近だった。


 唯愛「うん!そおですよっ!今日は私と小春さんが遅番だったから二人で今から店閉めるのっ!」

するとお皿やコップを洗っていた小春さんが俺達二人に声をかける。


 小春さん「美華ちゃんは、もう終わりだしせっかくだから亮さん送って帰ってあげなよっ!」

先程の言ってる事と真逆の事を言う彼女。

本当に彼女の考えている事は全く読めない。

凄くいい人なのは間違いないから、そこはもう一度改めて伝えておこう。


 その彼女の言葉に俺よりもビックリしていたのは美華だった。


 美華「えっ?でも...わっ私は唯愛が終わるまで待つつもりだもんっ!」

そりゃあそうだ。

ついさっきまで小春さんとどっちが楽しかったか競ってたはずなのに。

そして...

最後に唯愛が口にする。


 唯愛「美華〜!ありがと〜。でも今日忙しかったし、片付け少しかかりそうだから先に帰っててっ!もし今日も泊まりに行けそうなら連絡するからさっ!」

彼女の言葉に背中を押された美華は、彼女と一緒に帰れない事に少し寂しそうな顔をしていたが、俺が送る事を認めた。


 美華「唯愛...待ってるからねっ!ほらっ!亮さん行くよっ!」

そお言って自分のカバンを持ち、彼女は先に喫茶店を出ていった。

それにつられ、俺も後を追っていく事にする。


 喫茶店のドアを開け、唯愛ちゃんと小春さんの方へ振り返り、軽く会釈をした。


 その時の二人の表情は、


 俺に対して"頑張ってねっ!"と応援している、優しい二人の姿だった。


 "二人ともっ!俺の為にありがとなっ!"

そう思い、俺は少し前を歩いていた彼女の方へ向かい一緒に帰ることになる。

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