第30話 不思議な修羅場

 会社の外に出ると辺りは暗くなっていた。

街を歩く仕事帰りの人達も皆、疲れた表情で歩いているのがわかるほど。


そんな中、そんな一日の終わりに差し掛かっている雰囲気に逆境し、朝の通勤ラッシュのように、喫茶店に向かって全速力で走っている俺。


 "せっかく美華が俺に作ってくれたんだ!(詳しく言うと唯愛にだが)あんな笑顔の写真来たら、行くしかないだろっ!"

全身から湧き出てくる汗になんか気にも止めず、自身が思う最短ルートで辿り着いた。


 "カランッカランッ!"

喫茶店のドアを開けると、まだそこには美華を始め、唯愛ちゃん、小春さんが片付けを初めていた。


 唯愛ちゃん「あっ!亮さん!」


 小春さん「仕事お疲れ様っ!忙しかったんじゃない?」

二人が同時にしゃべりその返答を俺がする。


 亮「はぁ...はぁ...いや...はぁ...はぁ...とりあえず水くれっ!」

何も言葉にならなかった。

すると一番奥にいた美華が少し顔色を変えてこっちにくる。


 美華「もう来ないかと思った!」

頬をめい一杯膨らまし、俺を見てきた彼女。

その少し怒った表情も可愛い。

きちんと彼女と皆に謝り俺は与えられた水を一気飲みし、席に着いた。


 亮「めっちゃ仕事忙しくてさぁ~!!なんとか無事終わらせたけど...ライン開く間がないくらいに大変だったんだよ~!」


 唯愛「お母さんも言ってましたもん!今凄く忙しいって!」


 美華「社会人は忙しいからねっ!はいっ!コーヒーどうぞっ!」

そう言って彼女は俺の前にボンッと強い音を立てコーヒーを置き、後ろの調理場の方へ下がっていった。


 唯愛「亮さん、いつも美華にはすぐライン返してくれてたから、ちょっと寂しかったのかもっ!仕事中、度々スマホ確認してたから!」

そう思ってくれるのは嬉しい事ではあるが、さすがにさっきのコーヒーの置き方はキツかった。

唯愛の言ってる事に反応して調理場の方からチラチラと俺の顔色を伺っている彼女。


でも思う。

以前までは全く俺みたいに興味なんかなかった。

何があっても彼女は唯愛しか眼中になかったのだ。

それから考えてみればあのデートがキッカケでかなり前進した方だと思う。


まだ好きとかにはこれっぽちもなっていないと思うから、まだまだだが...。

 

 すると小春さんが俺にある事を言った事で、さらに状況が悪化した。


 小春さん「でも昨日二人で食べた所の居酒屋さん!すごーく美味しかったねっ!特に焼き鳥がっ!」

その彼女の言った言葉で、一気に冷や汗がどっと出た俺。


 ”おいおい...小春さん!今このタイミングで言うかなぁ~!”

心の中で今出来る俺の最大限の力を込めて彼女を責め立てた。

実際心の中ではそんな事を思っていたが、いざとなると言葉に出せない俺。

しどろもどろしている所、しびれを切らしたか、調理場から美華が俺の所へやってきた。


 美華「もうケーキあげないっ!」

そお言い放ち、彼女は喫茶店の外へと出ていった。


なんというこの状況。長年隠していた浮気がバレた彼氏の状況のような空気だった。


 ”って俺...まず...誰とも付き合ってねーしよー!"

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