第28話 あれ?小春さん?
小春さん「亮さーん!」
人混みの中から手を高くあげながら大きく手を振る彼女。
"こりゃまた。そこら辺の男達が皆小春さん見てるな。そら、あれだけ綺麗だったたら目が合わないかなって思って見ちゃうよな"
他の男には一切の目もくれず、こんな平凡な俺の所へ一直線に向かってきた。
小春さん「ごめーん!待たせちゃって!」
亮「俺もつい5分前に来たから全然大丈夫!」
こういう時、少し格好つけてしまう俺がいた事は誰にも言わないでおこう。
"実は30分ぐらい待った"
亮「仕事忙しかった?」
小春さん「唯愛ちゃんと美華ちゃんに後は任せてきたんだけどねー。今週思った以上にお客さんが多くて材料の発注に時間かかっちゃってさ!さてっ!お店予約してるから行きましょー!」
さすが、大人の女性。
すでにお店の予約までしてくれて、全く無駄がないしスムーズだ。
ここまでされたら、男としての立場もなくなるが、ここは甘えた方が正解。
そして二人が待ち合わせたところから歩いて10分。繁華街の中にある、路地裏のおしゃれな居酒屋さんに到着した。
席に座るやいなや、すぐにビールを注文し乾杯をする。
小春さん「亮さん!今日も仕事お疲れ様!」
そお言って彼女はグラスに入っていたビールを一気に飲む。
亮「すげー飲みっぷりだな」
小春「やっぱ仕事後のビールは最高だからねっ!」
その後も俺達は何気ない会話で盛り上がり、飲み始めて1時間後。
俺は聞いた。
亮「今日はどうして急に誘ってくれたんだ?」
少しほろ酔いになったか、顔が火照っている彼女がこう答える。
小春さん「理由がないと誘ったらダメなの?」
その言葉を聞き俺は焦った。
亮「いやっいやぁー!別にいいんだけどさっ!美華ちゃんの事とかで、何か情報わかったのかなぁと思って...」
小春さん「そおね〜!特に情報はコレと言って無いかな!ってか、美華ちゃんとどおだったの?話聞かせてよ!」
彼女はなんの為に俺をわざわざ次の日に呼んだのか全く分からなかったが、お店が閉店するまで、俺が美華とデートをして、楽しかった事や、思い出に残った事などの話を彼女はただひたすら嬉しいそうに聞いてくれていた。
こんなに気が休める時間というのも本当に久しぶりと思えるくらいに。
そしてお店の閉店と同時に満喫した俺と小春さんはお店の外に出る事にする。
小春さん「あ〜!今日もたくさん飲めたし楽しかったぁ!いい惚気話も聞けたし!」
彼女が誘った理由が最後まで分からなかった俺。
しいて言うなら、ただ誰かと飲みたかっただけだろうと思っていた。
亮「もしまた仕事に疲れたり飲みたいって思ったら、いつでも誘っていいですからね」
俺も今日は地獄みたいな仕事日和だったら助かった。
こういう時に一緒に飲んでくれる人がいるとありがたい。そんな事を思っていると...
小春さん「あんまりそんな事を言うと、私すぐ亮さんに甘えちゃうから、もうやめとくよ...だから次は唯愛ちゃんと美華ちゃんも誘おうねっ!」
俺はその言葉を聞き、一瞬だが時が止まった。
彼女が初めて自分の弱みを見せたこのギャップ。
"小春さん...?えっ...?俺の事?"
そんな事を思いながら悶々と家に帰り、もちろんこの日だけだが、美華と小春さんの二人が俺の頭の中で戦っていた事は誰にも言わないでほしい。
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