第26話 カメラ越しに合う目

 水族館を満喫した二人。


彼女が切ない顔をしたのも、あの巨大水槽のみで、その後は終始笑顔を絶やさなかった。

恐らく弱い姿を見せないよう、自然と昔からそうなってしまったんだろう。


 美華「ペンギン可愛い~!ねえ亮さん!一緒にペンギンと一緒に写真撮ろっ!」

そう言ってスマホを後ろポケットから取り出してきた彼女。


 亮「うん!撮ろうかっ!」

ペンギンをバックに俺たちは隣り合わせになり、スマホの二人が並んで移っている画面を見る。

そのスマホの画面を見ると、彼女もカメラ目線だから当然の事だが、画面越しに目が合ってしまう。

その表情が眩しすぎて、一瞬だけ目をそらした瞬間に、シャッター音が鳴った。


 美華「あっ!亮さん!目線そらしてる~!」


 亮「ごめんごめんっ!もう一回撮るか?」

すると彼女は言った。


 美華「ううん!これがいいっ!亮さん、私と話すとき目線すぐそらすからさっ!亮さんらしいしこれでOKッ!」

不意に言って来る彼女の発言。


 ”昔もいたな...こんな人...私の事絶対好きだよね亮さん。とかニヤニヤし俺の顔を覗き込みながらそんな事を普通に言って来る子...”

ここまでとは言わないが、こうしたちょっとした発言に、つい男心が揺さぶられてしまう俺がいた。


 そして園内全てを周り終え満喫した俺と彼女は、車に乗り水族館を後にした。


 亮「帰る方向で行くけど、お腹空かない?どっか途中でご飯食べて帰るか?」


 美華「うん!お腹空いた~!そしたら、行くときに通ったあのドライブインに行こっ!」

水族館に向かってる途中にあったドライブインの事である。

あそこのトンカツ定食は久しぶりに俺も食べたかった。


 亮「よし!んじゃあ向かいましょー!」


 美華「おーっ!」

こうして俺たちは車を走らせて約30分。お目当ての場所に到着したのだ。


そして料理が運ばれてくるや否や、二人は”いただきます”をする。


 美華「ん~っ!このトンカツ美味しい~!ここ私、ハマるかもっ!」


 亮「美味しいだろ~!昔っからあるんだけど穴場スポットだからなっ!」


 美華「そおなんだ~!あっ!唯愛に写真撮って送ればよかったぁ~...お昼に食べたクレープとペンギンで撮った写真は送ったのに~...」


 亮「また唯愛ちゃんと来たらいいよ!それまでの楽しみにしときな!」


 美華「うん!そうする!でもその時は亮さん運転よろしく~!それに小春さんもっ!あっでも小春さんもだと店回せなくなっちゃうか...」


 亮「皆で休み取れたら一番いいんだけどなっ!」

そんな会話を楽しんでいた俺達。


だが...


もうすでに帰ってしまったが、向こうから美華の事をチラチラと見てくる一人の女性がいた事に俺は気づいていた。

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