第25話  巨大水槽と地球

 美華「めっちゃ髪濡れた~っ!」

そお言って自分の髪を頑張って整える彼女。


 イルカショーを満喫した俺達。

幸い二人とも直前で合羽を購入した為、全身が濡れる事はなかったが、思った以上にイルカの飛び込む勢いが強く、真ん中の列にいた俺達にも水が降りかかった。


 亮「思った以上に濡れたなっ!大丈夫か?」

濡れてる髪を心配する俺。


 美華「うん!これで大丈夫っ!でも水族館に来たって感じで楽しかったねっ!」

そお言いながら俺に満面の笑みをしてきた。

ほっと落ち着く俺。


たまにいる。

せっかくのデートなのに髪が濡れてしまい、一気に機嫌が悪くなる女性。

気持ちが分からなくもないが、最後の最後まで、口一つ聞いてくれないぐらいに機嫌が悪くなるとこっちまで気まずくなる。


 その辺、彼女は素直に楽しんでくれたみたいで安心した。


そして俺たちは、水族館の中にあるレストランで、軽くご飯を食べその後、この水族館のメインでもある巨大水槽を見に行くことにした。


 巨大水槽の中には、数えきれない程の魚の数。

そして同じ魚ではあるが、種類が全く違う魚達が同じ水槽の中で優雅に泳いでいた。


 亮「めっちゃ綺麗だな!これは感動するわ!」

彼女の方をチラッと見ると、他のどこにも目がいかないくらいにジッと巨大水槽の中で泳ぐ魚を見ていた。


 亮「後ろの椅子に座ろうか!」

そう言って俺たちは椅子に座る。

約10分間、二人とも何も会話をせずただただ眺めていた。


 すると...

 美華「ねえ亮さん...」

あの楽しそうだった雰囲気とは打って変わって寂しげな雰囲気で話を始めた彼女。


 美華「このお魚さん達って、ずっとここで暮らしてるんだよね...」


 亮「そうだな~...」


 美華「喧嘩とかしないのかなぁ?」


 亮「喧嘩するだろうな...」


 美華「だよね...でも喧嘩しても、ずっとこの水槽の中にいるから安心だよね。仲直りだってすぐにできるし」


 亮「だな~ここだとすぐ見つけれるし、相手の表情もすぐわかるからな...」


 美華「そおだね...会いたくても会えないのは辛いよね...」


 亮「でもさっ、広さが違うだけで、俺たちも地球って一つの囲いで生きてるんだからさっ!この巨大水槽に比べては時間かかるかもだけど、自分が会いたいって気持ちがあれば必ず会えるよっ!」


 美華「でもこの水槽に比べたら規模が違いすぎるでしょ?」


 亮「あははっ!そおだなっ!だから仲間を増やしていくんじゃないか?先が見えないとしても、支え合う仲間がいれば、頑張れるし楽しめるだろ?」


 美華「うん...そおだね...」


 亮「だから...美華ちゃんの心の準備ができるまで俺は待ってるよ。いつでも俺に頼っていいからな!」


 美華「え?...あっありがとう...亮さん...」

少し驚いた表情をした彼女。


 ”これでいい!”

彼女は俺に、自分の家族の事など何も言ってこなかったが、少しでも俺に頼ろうとしてくれていた事はわかった。


 ”それだけで充分!後は彼女次第!”

その後、違う話にうまくすり替えた俺。

そして他の園内をいつものように楽しく周り、残りの楽しい時間を過ごした。

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