第24話 当たり前じゃない時間
美華「わ~っ!見てこの魚っ!可愛い~!」
水族館がオープンして約1時間が立った頃に俺たちは中に入っていた。
水族館に来たのも何年ぶりだろう。
以前の元カノはインドア派だったから、あまりこういう所には来なかった。
”いやいや...今こうして可愛い美華ちゃんと遊んでいる中、他の女の事を考えてどうする。”
俺は一瞬気が緩んだ自分に今一度、喝を入れた。
亮「後もう少ししたらイルカショー始まるけど、見に行く?」
美華「うんっ!行こ行こー!」
無邪気に、健気に楽しんでくれている美華。
そんな笑顔見せられるだけで、こっちまでつられて笑顔になってしまう。
こんなに元気いっぱいな彼女でも、辛い過去があるとは...
いや。そんな過去があるからこそ俺みたいな、ごく平凡な人間に比べて一日一日..いや、今この瞬間の出来事を一生懸命過ごしているのだろう。
そんな事を思いながら、イルカショーの近くにあったお店でクレープを買い、向かった。
そして席に座る俺と彼女。
美華「亮さんのクレープ美味しそう!」
亮「さっき悩んでたもんなっ!これは俺が全て頂くぜっ!」
美華「私にもちょうだいよ~!」
亮「うそうそっ!あげるよっ!はいっ!」
まだ口につけていない、端っこの部分を彼女に渡した。
美華「えっ?こっちめっちゃ美味しくない?後悔だわ~!」
亮「美華ちゃんのも、美味しそうやん!クレープはなんでも美味しいよ!そんなに食べる機会なんてないからさ!」
男はそう。クレープなんて1年に一回。いやっ3年に一回食べるか食べないかくらいだ。
最近甘党男子も流行っているから、10代20代の人は普通に人気店に並んでいるのをたまに見かけるが、いい歳した独身30後半のおっさんが一人で並ぶことなんてまぁない。
美華「そしたら、私のお店でもクレープ作ってあげよっか?」
”発明したっ!”と言わんばかりの顔でこっちを見て訴えかけてくる彼女。
亮「うん!もし作れるならお願いしたいかなっ!ありがとな!」
美華「初めは裏メニューとして、亮さんだけに作るようにするよっ!練習台になってもらうからねっ!」
亮「だったら美味しくなかったら正直に言っていいんだな!」
美華「う~ん!そしたらその時のクレープ代のお題は指摘された分、値段高くするねっ!」
亮「おいおいっ!逆だろっ!普通!」
美華「私が傷ついた代!」
こうして過ごす時間が本当に幸せだった。
ただこうして彼女を楽しく話をしているだけで、仕事の疲れやストレスが一気に吹っ飛ぶ。
”美華が作ったクレープ、指摘するとこなんかねーよ!”
そう思いながら、この当たり前じゃない貴重な時間を二人で共有し、イルカショーを楽しんだ。
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